各界の第一線で躍動するプレイヤーたちは、こぞって資本となる己の肉体を磨き続ける。仕事も人生も謳歌するための、彼らの肉体論に迫る。
理想の身体になれるとは限らない。だからこそやりがいがある
誰にでも分岐点が訪れる。加齢とともにたるむ筋肉と膨らむ腹。仕方がないと諦めるか、それとも加齢と重力に抗(あらが)うか。電力小売り事業・インターネット回線・モバイルセールスの販売促進事業を展開するネクスト ワンの斉藤徹社長は迷わず後者を選んだ。
「20代の時は何もしなくても体型を維持できた。でも30歳を過ぎるとそうはいかない。鏡に映った自分の姿に、いわゆる“おじさん体型”を見たんです。徹底的に鍛え直さなければいけない、そう考えました」
20代の頃は、空いた時間にジムに週1〜2回通い、趣味でトレーニングをしていた。食べたいものを食べて、夜は毎日ビールを飲んで遅くまで起きている。今考えると、不摂生な生活を送っていた。それでも体型を維持できていたが、30代になると生活習慣が変わっていないのに体型は少しずつ崩れていく。
「ジムに通っていても限界以上に追いこめないことや正しいフォームもできないことに気づき、パーソナルトレーナーをつけるようになりました。ともに目標を共有し、日が経つにつれて身体が少しずつ変わってきたことでトレーニングにのめりこんで。ジム通いを継続する秘訣は、長く付き合えるパーソナルトレーナーを見つけること。予約を直前でキャンセルしたら、トレーナーとの約束を反故にしてしまう。相手のことを慮(おもんぱか)ると、ジム通いに責任感が生まれます」
週4〜5回のジム通いを始めて、もう2年。たるんでいた腹は引き締まり、身体全体が明らかに筋肉質になった。特に上腕二頭筋と三頭筋は、スポーツ選手と思えるほどのたくましさだ。そんな筋トレは仕事にもいい影響を与えているという。
「自己管理能力やスケジュール管理力が高まりました。ジムに行く時間を捻出するわけですから、時間の使い方がうまくなる。この仕事は明日でいいやと、先延ばしするようなことがなくなりましたね。頭の冴えも感じられるし、仕事で厳しい局面を迎えても日々のトレーニングでメンタルも鍛えられているので乗り越えられます」
食生活も大きく変わった。実のところ、斉藤氏は筋トレを始めた理由のひとつはお酒や食事を気にせず楽しむためだった。だが、筋トレに夢中になるにつれて、食事はどんどん健康志向になっていった。
「ごく自然に、身体にいいものは何だろうかと考える習慣がつきました。トレーニングをしていてもお酒を飲みすぎたり、食事がクリーンでないと身体が変わらないことに気づき、小麦や豚肉をやめて魚中心にしようとか、砂糖の代わりにハチミツを選ぼうとか。毎日のご飯も白米ではなく、玄米がメイン。本末転倒ですが好きだったお酒も量が減り、この2年間は食事とお酒も選ぶ質と量が変わりました」
ジム通い、クリーンな食事、ビジネスの向上。今はこの3つの要素がうまく循環している。
「トレーニングはキツイし、楽しくないですよ(笑)。仕事も同じですが、楽して前に進めないじゃないですか。だからこそ、やりがいがあるんです」