各界の第一線で躍動するプレイヤーたちは、こぞって資本となる己の肉体を磨き続ける。仕事も人生も謳歌するための、彼らの肉体論に迫る。
理想の自分になるための手段がストレッチだった
「どんな職業でも、筋肉があるかないかで、仕事は歴然と変わってきます。筋肉があれば、階段を上がる時だって余裕でいられ、その間も仕事のことを考えていられる。1日は24時間しかありませんから」
そう断言するのは、テレビ朝日系・朝の情報番組『羽鳥慎一モーニングショー』でお天気キャスターを務める俳優で気象予報士の片岡信和。お天気コーナー内10秒でオリジナルストレッチを紹介して1年、じわじわと話題になり、ストレッチ本も発売。さらなる人気を呼んでいる。
「番組に出演し始めたのは、最初の緊急事態宣言下の頃。お茶の間の空気を和らげたい、と始めました。一方で僕自身は、このストレッチを毎日10分行うことで、どこまで身体を削れるのか、実験を始めたんです」
1回10秒〜30秒の「動的ストレッチ」を組み合わせて合計10分。簡単そうに聞こえるが、実質はハードな筋トレに近く、初心者は2分と持たない。
「このストレッチを続けて1年で徐々に腹筋のキレ味が増してきました。人はすぐ答えを欲しがりますが、焦ってはダメ。毎日10秒だけ、など絶対続けられるペースで行い、最終的に10分にたどりつけたらいいんです」
すぐに答えを欲しがらず、努力を怠らない。それは片岡がずっと行ってきたことだ。大学時代にスポーツ科学を学び、俳優としてデビューしてからは、いつアクション系の仕事の依頼が来てもいいよう、トレーニングを継続した。
「僕は20代で俳優デビューしたのですが、10代から活躍されている方を見て、到底敵わないと感じた。だから10年後の目標を立てたんです。まずは、当時からやっていたピアノを10年続けること。そして40代を前にしても、いい身体でいること。10年後に理想の自分になっていることを設定して、同年代のライバルを気にせずに努力しようと」
そんななか、東日本大震災をきっかけに、気象予報士を目指すことに。世の中のために何かできることはないかと考えた時、気象予報士として自然災害の危険を「伝えること」は、俳優の仕事と近いと感じたからだ。
「『もっと遊んで芸の肥やしにしろ』と言われたこともありました。でも僕は、自分で決めたことを夢中でやることこそが肥やしになると思った。コツコツ勉強し、気象予報士になり、コツコツとストレッチをし、腹筋も割れた(笑)。人と比べず焦らず、毎日続ける。人生も、ストレッチも、結果はゆっくりとやってくるんです」
SHINWA KATAOKA
1985年東京都生まれ。2008年俳優デビュー。’20年から『羽鳥慎一モーニングショー』お天気コーナーを担当。