約1年の延期が決まった東京五輪。本連載「コロナ禍のアスリート」では、まだまだ先行きが見えないなかでメダルを目指すアスリートの思考や、大会開催に向けての舞台裏を追う。
今季初出場でいきなり17得点、5リバウンド、3アシストの活躍
1週間遅れで新シーズンのスタートを切った。NBAウィザーズの八村塁(22)が昨年12月31日に本拠地ワシントンで開催されたブルズ戦で今季初出場。25分13秒の出場で17得点、5リバウンド、3アシストをマークした。
続く1日のティンバーウルブズ戦では19分29秒の出場で、11得点4リバウンド、2アシストを記録してチームの今季初勝利に貢献。3日のネッツ戦では33分24秒の出場で、15得点、2リバウンド、3アシストの活躍で連勝をもたらした。
2ケタ得点を続け「チームメートがスペースをつくってくれるのでポストアップが楽になっている。(プロ2年目を迎え)試合に対する準備の仕方にも慣れてきた」と強調。出遅れを取り戻すに十分な存在感を示している。開幕前にアクシデントに見舞われた。目の炎症のため、昨年12月15日の練習を欠席。翌16日に病院で検査を受けた結果、流行性角結膜炎と診断され、チームから約3週間の離脱が発表された。
スコット・ブルックス監督(55)は「かなり重症。目がひどく充血している。目がかすんで見えることと、光に敏感になっているそうだ」と説明。「プレシーズンの離脱は若手にとって痛い。段階的に練習を再開してから完全復帰となるだろう」と見通しを示していた。
同23日の76ers(セブンティシクサーズ)との開幕戦から4試合を欠場し、その間のチームは全敗。八村はコートに立てない間、パワーフォワードの主力として責任を感じていた。当初の見通しより1週間近く早く戦列復帰。開幕5連敗からの巻き返しを期すチームに勢いをもたらした。
憧れのウエストブルックとプレー
好調の裏には、今季から加入したラッセル・ウエストブルック(32)の存在がある。2016-'17年にリーグMVPに輝いた10歳年上の司令塔は、八村にとって憧れの存在。「小さい頃から見ていた選手の1人。すごくリーダーシップを発揮してくれている。チームのレベルをグッと上げられる選手」と存在感の大きさを肌で感じ「彼はびっくりするくらい自信を持っているので、そこは学んでいきたい」と精神面の整え方などを吸収している。
プレー面の助言も受けており、八村は「ラス(ウエストブルック)から"ポストでボールを持ったら思い切っていけ"と言われているので、自信を持ってプレーできている。そこは大きい」と説明。ネッツ戦でファイナルMVP2回、得点王3回のケビン・デュラント(32)とマッチアップして堂々と渡り合うなど、昨季に比べてゴール下での巧みさ、力強さは確実に増している。
既に来季の契約延長も勝ち取っている。ウィザーズはプロ2年目の八村に対して'21-'22年シーズン契約の選択権を行使したことを昨年末に発表した。八村は'19年にドラフト1巡目(全体9位)指名で加入。1巡目指名選手は2年目までは無条件で契約が保証され、3、4年目はチームが契約を継続するかを判断する。
年俸は指名順位により新人標準額(ルーキースケール)が設定されており、全体9位の八村の場合は1年目が372万4300ドル(約3億8600万円)、2年目が391万700ドル(約4億500万円)、3年目が409万6800ドル(約4億2500万円)。この20%の増減幅が認められるため、3年目は最大で491万6160ドル(約5億1000万円)となる。
コロナ禍による中断で昨季の閉幕が後ろ倒しされたことで、今季開幕は約2ヵ月遅れ。その影響で各チームのレギュラーシーズン試合数は例年の82から72に減少した。今季終了後に控える東京五輪に弾みをつけるためにも、重要なシーズン。八村は「今季は絶対にプレーオフを逃したくない」とチームとして3年ぶり、自身初のプレーオフ進出を目標に掲げる。結膜炎で目がかすんでいたのがシニカルなジョークに思えるほど、八村のNBAキャリアの視界は良好だ。