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2020.11.30

漫画家・鳥飼 茜|リアルな描写で現実を映し出す作品を創り続ける

プロフェッショナルが追求する“最高峰の視点”とは。第2回は、リアルな描写で読者の心をえぐる話題作を続々と生み出している漫画家・鳥飼 茜さんに密着。研ぎ澄まされた“視点”に込められているのは、現代を生きる人々へのエールだった。
【第1回「江戸切子職人 三代秀石・堀口 徹」編はこちら】
【第3回「ミニチュア写真家・見立て作家 田中達也」編はこちら】

漫然とした不安を深く掘り下げて描く

現在『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載されている『サターンリターン』は、幅広い読者の胸をつく衝撃作だ。物語は自ら命を絶った親友の死の真相を追う小説家・理津子を中心に、“喪失”をテーマに進んでいく。実はこの漫画は、作者である鳥飼 茜さんが親しくしていた友人が自死で亡くなったことをきっかけに作られた物語だという。自分が描くべきことは、リアルな感情だと話す。

「いつも、こういうことで悩んでいる、落ち込んだことがある人は私の他にもいるだろうなというテーマを描いています。Twitterやテレビで世の中を眺めていると、例えば女性として生きるのに不条理が多いとか、ぼんやりとした共通項の悩みがみえてくる。そういう漫然とした共通項の不安をより深く考えて描くのが、自分にとっては人のためになることだと思っています。同じような人がいるんだということが何かの救いになるかもしれない。

サターンリターンは近い人をなくした話で、死んで亡くなったということではあるけど、“なくす”ということは誰かの死に限らず、もっと細かい喪失はいっぱいあるはず。好きな人にふられたとかもそうだと思います。なくすというのはとっても苦しいことだよね、というのを納得いくところまで考えて描こうというのが今回の動機です」

本作以外でも、鳥飼さんは、性についての理不尽さなど人が口にすることをためらうテーマをごまかさずに描く。そういったテーマを描くことに怖さはないのだろうか?

「怖いと思ったら描きどき。それが、私が描かないといけないこと。怖いけど言い出せないという状態の方が嫌。誰でも、怖いことを怖いと言えるんだと体現している時に、一番表現している実感があります。怖いですよ。もっと怖い気持ちにならなきゃなとも思います。(他の作品も含め)すべてが実体験の怖さかというとそうではなく、想像だけれど、近い気持ちをよせ集めて、解析している。怖さの正体に近づくのはしんどい作業であるけど、それをやらないと意味がない」

『サターンリターン』(小学館)1~4集発売中。『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中。

パソコンを使わない作画は、運動に似ている

小学生の時によく少女漫画の真似をしていた。学生時代にも漫画を描き続け、23歳でプロデビュー。昔も今も、鳥飼さんはアナログの手作業で漫画を描いている。いまはデジタルで作画する漫画家の方が多いが、「手で描く方が楽しい」と、仕事の理想ともいえる理由でアナログを続ける。

「塗った分だけ反映されて、手元に完成した立体が積み重なっていくようで楽しい。なんか、運動という感じ。絵を描くことは私にとって唯一の筋肉を使っている瞬間(笑)。何にも間に挟まず、手のちょっとした動きがそのまま絵となっていくのが好きです。自分の手元で、運動して、コントロールできるのが気持ちいい。単純なのがいいんです」

手作業から心の機微が見える表情が生まれ、読者は引き込まれていく。デジタルよりアナログの方が目への負担が少ないが、長時間におよぶ作業の合間にときおり目薬をさすと話す。目のケアはもちろんだが、もうひとつの理由もある。

「目が疲れた時には、目薬をさしています。目薬をさすとすっきりするので、気持ちの面も大きいですね」


きつい現実のあとも「人生に彩りはある」と漫画で表す

『サターンリターン』は怖さと面白さが入り混じる不思議な漫画だが、そこもまた鳥飼さんの真骨頂だ。本作には表現者としての姿勢も垣間みえる。

「漫画はどうしてもエンターテイメントだから、エンターテイメントとしてちゃんと成立していないといけない。大変なことではあるけど、腕の見せどころです。面白くないと読んでもらえないから。死というものに対して、一貫して深刻で怖いものと思わせる方が真摯かもしれないですよね。ずっと同じテンションで描くのもひとつのやり方。でも、例えば、その家族(自死遺族)はこれからも生活しなきゃいけなくて、楽しく感じる瞬間もきっとある。不幸な経験をした人が時に愉快に過ごすことを、まわりが勝手に不似合いのように捉えてしまうのはすごくダメ」

辛いことがあったあとも、何かを喪失したあとも、続く人生に定型パターンはない。

「多くの人にとって突然の不幸とは、永遠にマイノリティ側に落とされてしまうような感覚に近いと感じていて、それは怖いことだし不思議な決めつけだと思う。病気になったり性暴力にあったりということにしてもそう。いままで通りに生きちゃいけないことを期待されているみたいな、ずっと悩んでいなきゃいけないみたいな流れがすごく怖い。生きていれば誰だって理不尽な不幸や損傷に遭うし、子供を持つという幸せなことですら、周囲に助けを求めざるを得ない立場への転換、つまりマイノリティになる可能性を持っている。たとえそうなったとしても、そこから地続きの生活や人生があって、他人からはジャッジできない色彩があると描けたらいい。色んな側面があるということを感じてもらえればと思います」

大阪府生まれ。2004年にデビュー。現在、『週刊ビックコミックスピリッツ』(小学館)にて『サターンリターン』を連載中(コミックスは1〜4集発売中)。これまでの作品に『おんなのいえ』『先生の白い嘘』(講談社)『地獄のガールフレンド』(祥伝社)など多数。"18年には自身の日記をもとにしたエッセイ『漫画みたいな恋ください』(筑摩書房)を発表。同年、漫画家・浅野いにおと結婚。今年5月には、ロックバンド・くるりの最新アルバム収録曲『心のなかの悪魔』MVで使用されたネームを書き下ろすなど活動の幅を広げている。

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問い合わせ
参天製薬株式会社 お客様相談室 TEL:0120-127-023
(土・日・祝日を除く9:00~17:00)

TEXT=大石智子

PHOTOGRAPH=喜多孝幸

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