TRAVEL

2024.07.24

モナコで一番予約が取れない店、マルセル・ラヴァンの「ブルーベイ・マルセル・ラヴァン」に潜入

カジノやF1、豪華クルーザーのイメージから富裕層向けの観光立国の印象が強いモナコ。実は今、世界の最先端を行くサステナブルリゾートへと大きく変貌している。そんなモナコの魅力探るべく、編集部取材班が現地を訪れた。今回はモナコで一番予約が取れないレストラン「ブルーベイ・マルセル・ラヴァン」をご紹介。

「ブルーベイ・マルセル・ラヴァン」

独創的な器やインテリアがゲストを迎える

ホテルの目の前には真っ青な地中海の海と空が広がるロケーション。5つ星、4つ星ホテルが立ち並ぶ中で、もっともリゾート感が高いのがモンテカルロ・ソシエテ・デ・バンドメールの「モンテカルロ・ベイ・ホテル&リゾート」だ。

そのメインダイニングが大掛かりなリノベイトを終え、「ブルーベイ・マルセル・ラヴァン」として装いを新たにオープンした。

シェフはカリブ海に浮かぶフランス海外県であるマルティニーク出身のマルセル・ラヴァン氏。2005年から同レストランのシェフを務めており、2022年にはミシュラン2つ星を獲得している。

「ブルーベイ・マルセル・ラヴァン」
「ブルーベイ・マルセル・ラヴァン」のシェフ、マルセル・ラヴァン氏。

今回のリニューアルにあたり、ラヴァン氏は「僕の料理のインスピレーションは旅の中にあります。5大陸から木、火、土、水、そして金属という、地球を司る5つエレメントを新しいレストランのコンセプトにしました。それらの意識を料理に活かすと同時に、インテリアや器にも反映させています」と話す。

インテリアには木工細工や石(土)のテクスチャー、そして光と炎の戯れを表現したオブジェや使い込まれた金属を印象的に配置。また器も火山や砂漠といった5エレメンツを用いた素材やイメージでデザインしたものが登場するのが楽しい。

奇想天外な料理の原点

ラヴァン氏の料理はいい意味で奇想天外。マルティニークで培われた彼の料理の原点が随所にのぞくからだ。クレオール料理、またの名をフレンチカリビアンと呼ばれるマルティニークの代表料理といえば、スパイスをたっぷり纏わせてマリネした鶏肉を炭火で焼く「Poulet Madras」。バナナやヤシの葉、ハーブで燻製にしたりと、素材は素朴でありながらも、ターメリックを代表とするスパイス、そしてハーブなどの香りづけによる芳醇さが特徴である。

「僕の料理はある種の多様性を感じられると思う。生まれ育ったマルティニークの文化、料理のアイデンティティに加え、常にゲストを味覚で驚かせたいと思って料理を作っているからです」

地中海の素材に加え、ターメリック、クミン、コリアンダーなど、そしてそこかしこに見え隠れする、シェフ自身がマルティニークの素材やエッセンス。さらにモナコだからこそ得られる、アフリカ、フランス、イタリアの豊富な食材やスパイスを駆使した料理の数々。ブルーベイ・マルセル・ラヴァンではラヴァン氏の真骨頂とも言える料理が楽しめる「L’Agoulou de Marcel」(320€)コースをチョイスしてほしい。

持続可能なガストロミー”を実践

マルセル・ラヴァン氏を語るうえで欠かせないのが誰よりも一歩先をいく、サステナブルな取り組みだ。モナコのサステナブル宣言を聴き、いち早くホテルの敷地にレストラン専用のポタジェ(家庭菜園)を作ろうと手を挙げたのが彼。ポタジェでは有機栽培の野菜やハーブに加え、マルティニークから運んできた種を植え、手に入らなかった野菜も育てているそう。自身が毎日ポタジェを管理するのはもちろんのこと、総合的な管理はモナコ国内に持続可能な農業を行うシステムTerraeを主宰するジェシカ・スピーゲル氏に依頼している。

「私たちはすでに未来のモナコの料理とレストランのために行動しています。地球は過剰な消費と地球温暖化の影響を受けています。現場にいる私たちが日々“持続可能なガストロミー”を考え、実践することが大切です。チームにも廃棄物を極力なくすための方法を共有し、アップデートし、これからの可能性を最大限に生かすために全力を尽くしています」

夕方になると、ラヴァン氏が畑に長い時間座り込み、ポタジェの状態を見ながら、その日の料理に使う野菜やハーブを剪定する姿はホテルの風物詩となっている。

「ブルーベイ・マルセル・ラヴァン」
真剣な眼差しで食材を吟味するラヴァン氏。

そしてゲストは採りたての新鮮な野菜やハーブといった最高の素材を、わずか数時間後に口にしているのだ。なんと贅沢で素晴らしい取り組みだろう。

「僕の友人がモナコに来たときに案内するのは、レストランでも観光名所でもなく、実はこのポタジェなんだよ」

そう誇らしげに語るラヴァン氏は、その日最高の笑顔を見せた。

ブルーベイ・マルセル・ラヴァン/Blue Bay Marcel Ravin
住所: 40 Avenue Princesse Grace, 98 000 Monte-Carlo, Monaco
モンテカルロ ベイ・ホテル&リゾート内
Tel: +377-98-06-03-60
営業時間:19:30〜22:00
定休日:日曜、月曜、火曜(7月と8月は日曜と月曜)
料金:L’Agoulou de Marcel 320€,、Menu Solstice 195€、Inspirations Légumières & de nos Jardins 175€

TEXT=今井恵

PHOTOGRAPH=峯岸進治 COOPERATION=モナコ政府観光会議局

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