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2022.09.06

制度の変更とこれからの時代に必要なお金のスキル──アフターコロナのお金論

お金とは何か、投資とは何かを考える、連載「アフターコロナのお金論」とは……

money

お金の情報はシャワーのように

以前の連載でも取り上げた、岸田政権が掲げる「資産所得倍増プラン」が具体化に動き始めました。

金融庁は2022年8月25日、自民党財務金融部会で2023年度の税制改正に向けた要望案を正式に提示。少額投資非課税制度(NISA)を使って投資できる上限を引き上げ、投資期間の恒久化も要望し、「資産所得倍増プラン」の柱に位置づけました。抜本的な拡充をすることで、個人の貯蓄から投資をさらに促していく構えです。

それではお金のトレーニング。現在、日本には3つのNISAがありますが、その3つとはなんでしょう?

答えは、NISA、つみたてNISA、ジュニアNISAです。日本に住む20歳(2023年からは18歳)以上の成人が利用できるのがNISA、つみたてNISAです。そして20歳(2023年からは18歳)未満の未成年者が利用できるのがジュニアNISAです。

このうちNISAが2023年に終了するのに伴い、2024年に新NISAが創設され、2028年まで投資できるようになります。また、ジュニアNISAについては2023年で制度が終了します。

金融庁はNISAについて「簡素で分かりやすく、使い勝手のよい制度」にすることを2023年度の税制改正要望案に明記し、個人が少額投資非課税制度(NISA)を使って投資できる上限を引き上げる措置を盛り込みます。また、2028年などに期限を定める各制度の恒久化も求めます。このように非課税で投資できる枠と投資期間の拡大を財務省に求めました。

それでは今回税制改正要望案に盛り込まれる「投資上限の引き上げ措置」と「各制度の恒久化」とはどのような内容なのでしょうか。

そこでお金のトレーニングです。NISAの年間投資枠は120万円ですが、本家英国のISAの年間投資枠は何円でしょう? ちなみにNISAはイギリスのISAを参考にした税制優遇制度です。

答えは約320万円。日本のNISAの上限より約200万円も年間投資枠が多いのです。

まずは「投資上限の引き上げ措置」をみていきます。現状、つみたてNISAの年間投資枠は40万円で、非課税限度額は800万円(40万円×20年)です。同様に、NISAの年間投資枠は120万円で、非課税限度額は600万円(120万円×5年)です。

これを、本家英国のISA(アイサ、年間2万ポンド=約320万円)並みの水準に引き上げるべきという声は以前からあり、日本証券業協会が2022年7月に発表した提言でも同様の要望が盛り込まれました。

日本証券業協会の提言では、NISAの年間投資枠を120万円から240万円に、つみたてNISAを40万円から60万円に引き上げ、さらに2つの制度を併用可能とし、年間投資枠の合計を300万円とする案が示されています。

もちろんまだ引き上げについては決定したわけではありませんが、今後制度改正で投資上限が引き上げられれば、投資家にとっては資産形成の可能性が広がることになります。

続いて「各制度の恒久化」をみていきます。ここでいう「恒久化」には2つの観点が含まれています。ひとつは租税特別措置として時限的に導入されたNISAという制度自体を恒久化するというものです。NISAは長期の資産形成を後押しする制度として浸透しつつありますが、制度自体は「期間限定」のものとしてスタートしました。このため口座を開設する時期によっては、非課税枠に差が出てしまう可能性が指摘されてきました。

もうひとつは非課税期間の恒久化です。現状、NISAでは5年の非課税期間終了後に期間を延長するには、翌年の枠を使用し資産を移し替える「ロールオーバー」と呼ばれる手続きが必要になります。非課税期間自体を恒久化すれば、こうした煩雑な手続きをしなくても済むようになります。いずれの点にも共通しているのは、NISAをより分かりやすく、利便性の高いシンプルな制度に刷新するということです。

8月に出版した著書『未来のお金の稼ぎ方』でも情報収集の重要性について書きましたが、このような制度の新設、変更、終了などの情報を自分で得る習慣があることは資産形成の上でとても大切です。

使っている制度が変更になり、本当ならば手続きをするだけで損を避けられたのに、気付かなかったことで損をしてしまうケースがあります。知っているだけで得られるメリットなのにとてももったいないです。

お金のトレーニングスタジオ「ABCash」の生徒さんでも、今まで知らなかったり、知っているけどやっていなかった、ふるさと納税や格安SIMへの切り替えをすることで、コストメリットを得るケースは多々あります。ローンの組み方や保険の入り方など、知らないことで損をしてしまうケースもあるので注意が必要です。

情報には中立性(最後に「金融商品」の販売が行われないこと)が大事ですが、自分で情報収集ができれば、資産の分散を考えてNISAやiDeCoを活用して投資をチューニングしながら資産形成することもできますし、早いタイミングで投資をして長期間の資産運用を実現することで、複利の恩恵を最大限受けることも可能です。情報収集すること、資産を分散すること、長期投資で複利の恩恵を受けることは、どれも人生を豊かにするお金のスキルです。

また情報収集をするにあたり、お金のスキルとしてのキャッシュフローを見ることも大事です。「キャッシュフローとは、ある対象がお金を生み出すかどうか見るもの」ですが、情報収集がお金を生み出すケースは意外と多いものです。

例えば新聞や、有益な情報を提供しているビジネスニュースサイトなど。もちろん有益な情報を無料で集められればお金をかける必要はありませんが、「情報収集にお金をかけるなんて……」と思っていた方は、その情報源が将来プラスのキャッシュフローになりそうかを見極めて投資をしてみてもいいと思います。

この他にも、ジュニアNISA廃止に伴い、つみたてNISAの対象年齢を未成年者まで拡大する案や、つみたてNISAとの併用を前提とした「成長投資枠(仮称)」の新設も検討されています。現在のつみたてNISAは投資対象が一部の投資信託に限定されていますが、「成長投資枠(仮称)」は株式にも投資できるようになる可能性もあります。NISA制度だけを見ても、これだけの変更が実施されるかもしれないのです。

情報収集スキルは、お金のスキルを身につけるうえでとても大切なことです。まずはお金の情報をシャワーのように浴び続けることをおすすめします。1年後、きっと世界が違ってみえてくることでしょう。

連載「アフターコロナのお金論」とは……
お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。

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Takahiro Kodama
1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。著書に『未来のお金の稼ぎ方 お金が増えれば人生は変わる』がある。

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