35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第108回!
オリンピックの感動的なシーン、さてなんて言ってた?
さまざまな激闘があったオリンピックが終わりましたね。メダル獲得シーンはどれも感動的なものでした。なかでも、私が忘れられないのは陸上男子走り高跳び決勝、カタールのムタズエサ・バルシム選手と、イタリアのジャンマルコ・タンベリ選手の、同時金メダル獲得シーンです。
決勝では2m37cmをそれぞれ1度成功、2m39cmは3度ずつ失敗の、完全同点。ここで審判が「続けますか?」と二人に聞いた、あの場面です。
二人は審判と短く言葉をかわし、すぐに大喜び、抱き合いました。
とても感動的だった反面、私は少し考えました。
「もし、自分がアスリートで、あのような場面にでくわしたら、彼らのようにスムーズに感動できたであろうか」と。
まず、オリンピアンになるということは絶対に不可能なのですが、万万万万が一、そのようなことがあったと仮定して、とっさに大事な場面での英語を理解できたのであろうかと。
生放送で見ていた限りでは、二人や審判がなんと言っているのかは、アナウンサーの声にかき消されていたので、NHKの公式動画をじっくりとチェックして、なんと言っているか確認してみました。
審判:We can continue with jump off.(ジャンプオフを続けられますが。)
バルシム選手:Can we have two golds?(金メダル、僕らでふたつもらえませんか?)
審判:It’s possible, it’s depends on …… if you decide on …….(可能です。そうしましたら……)
バルシム選手:History.(歴史だ)
タンベリ選手:Olympic champion!(オリンピックチャンピオンだ!)
決勝時に限り決着するまで飛ぶ「ジャンプオフ」を断り、バルシム選手は“Can we have two golds?”と尋ねます。正直ここ、2回聞いて「ああ、“Can we have two golds?”か」と理解しました。つまりもしも、自分がアスリートとしてあの場にいたとしたら貧弱なリスニング能力ゆえ「は?」「なんと?」「sorry?」を繰り返し、このようにスムーズに感動を分かち合えなかったということです。
この両選手と審判は英語圏の方ではなさそうなので、当たり前に英語が入っているということです。各国のアクセントはあるかもしれませんが、公用語としての英語は、それぞれのアクセントがあることも前提で、みんな理解できるのです。どのような世の中でも、もっと世界に出て、学ばなければと思わされたオリンピックでした。
選手の動画から、選手村と英語を知る!
選手村の様子を選手たちがそれぞれSNSで発信しているのも、楽しく見ていました。なかでも、高飛び込みのイギリス代表で、金メダリスト、トーマス・デリー選手のYouTubeチャンネルは、食堂からランドリー、バスから見える東京の街並みなど、こまかく見せてくれてとても楽しんでいました。
そして、彼がいい景色を見るたびにいう言葉がありました。
Lovely Jubbly.
ラブリー・ジャブリー。
確かに、イギリスでよく聞いた言葉だなと思いました。「いいね」という時に「ラブリー」はよく言われますが、これも同じ意味です。選手村から見える海や、五輪のシンボルに対して「ラブリー・ジャブリー」と言っていました。
もともと1950年台にかけて、フローズンオレンジドリンクのキャッチコピーだった言葉のようで、それがいつの間にか一般に使われるようになったそうです。日本でいうと「セブンイレブンいい気分」みたいなものでしょうか。
他にも見ていると、とあるアメリカの選手がこう言っている動画がありました。
Every day, there is a new skid mark on the toilet. Who skid mark?
(毎日、トイレに新しいskid markがあるの。誰?)
選手村では数人で一部屋使っているようですから、トイレは共有です。しかしながらskid markってなんだろうと。
I didn’t poop today actually.
(今日、私、実は「大」してないから)
とこの質問に答えている選手がいました。Poopというのは、トイレでする大のことです。となると、skid markとは、トイレで流れなかった、う○ちのことのようです。
もともと、タイヤ跡のことをいう言葉だそうですが、それが派生して、スラングで拭き残しのPoopという意味になったそうです。
本当に、いろんなことを教えてくれたオリンピックでした。
選手や関係者の皆様には、いつかまた改めて東京を訪れていただき、ゆっくり観光してもらいたいなとつくづく思います。
Illustration=Norio