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2019.08.25

背中から学ぶスナック道 ~玉袋筋太郎のスナックミシュラン03 東京·中野『カプリコーン』

全日本スナック連盟の会長である玉袋筋太郎さん(以下玉ちゃん)がスナックを巡り、プロの目線で、ママやお店の評価を下す連載「スナックミシュラン」。日本列島津々浦々、スナックは全国に7万軒もあるというのに「興味はあるけど行ったことがない」なんて人も多いはず……。玉ちゃんが、ママのキャラ、お店の雰囲気、つまみ、歴史、時にはお客さんの質まで、深い愛情を持って★をつけてゆく。第1回の四谷三栄町『チロ』、第2回の荒木町『二枚貝』に続き、第3回は中野にある『カプリコーン』。

玉袋筋太郎のスナックミシュラン

安定銘柄で37年

今回は、中野にある「カプリコーン」さん。サブカルの街として有名だが、近年は大学のキャンパスができるなど都市開発が進み、観光客も訪れる街となっている。そんな中野で30年以上続く老舗スナックの扉をたたいてみた。

大ママ 玉ちゃんに久々に会えて嬉しいねえ。

玉ちゃん お、俺に色目使ったぞ(笑)

歩美ママ いぇーい!玉ちゃん、かんぱーい!

まずは、大ママ(右)、長女・歩美ママ(左)と乾杯。

まずは、大ママ(右)、長女・歩美ママ(左)と乾杯。

玉ちゃん いやぁ、この中野のこっち側(北口)の飲み屋街ってのはね、戦後の闇市的な空気が残ってるんだよね。この昭和新道はさ、飲んでても飲んでなくてもこの道を歩くだけで酔えるというかね、そういうのがあるよね。ま、俺はちゃんと酔っ払って、転んで顔ズル剥けの血だらけで帰ったんだけどね(笑)。大ママ、そんな中野で何年だっけ?

大ママ 今年で37年目よ。

玉ちゃん 37年!大ママですよ。その大ママ、お母さんの背中を見て育ったお嬢ちゃまがこの方、歩美ちゃんですよ。中野一、おバカなお姉ちゃんって呼んでんだけどね、全然こたえない感じが気持ちいいんですよ。

大ママ そ、だから続いてんのよ。

歩美ママ いや、だって中野から出たことないんだから。17歳のときから手伝ってるからね。当時は本当にバイトね、掃除したりして、もちろんお酒もタバコもなしでね。一時期なんか、バイトが高校生だらけだったもん、時給1,500円なんて他ではなかったからね。

大ママ え、私そんなに払ってた? 景気良かったんだわぁ……。

歩美ママ 世の中はバブルが弾けてたけど、ここは弾けてなかったもんね。

大ママ 警察の人とか、役所の人とか、公務員のお客さんが多かったからね。

玉ちゃん お、安定銘柄だね。

新宿のクラブでの修行から

玉ちゃん その安定のカプリコーンはどうやってできたかね。

大ママ それこそ、30年以上前だけどさ、雇われママとかやってたのよね。でも、私、接客が下手だったみたいなのよね。で、お客さんが1年でいいから修行してきた方がいいって、新宿のクラブを紹介してくれてね。

玉ちゃん え、そん時はもう離婚してたんでしょ?

大ママ 当たり前じゃない! そうでなきゃこんな商売やるわけないじゃない(笑)女は男が食べさせてくれるって教育されて育ったんだから。

玉ちゃん じゃ、やっぱり娘を食べさせるためにってことだよね。

大ママ そうよ、やっぱり当時手っ取り早く稼げるのは水商売だったからね。その新宿のクラブを紹介してくれたお客さんが、修行後に雇われママをやらせてくれるお店も紹介してくれて、そこから始めたのよね。

玉ちゃん そんなお母さんの苦労話を聞いてる時に、娘の歩美ちゃんが俺の水割りを作ってくれてるっていうね。

歩美ママ。

「小さな頃から大ママの背中を見て育った」という歩美ママ。

大ママ この娘はずっと見てきてるからね。それこそ、その時代だから偏見もあったわよね、水商売に対してね。だから、娘には水商売の親の娘だからって、人から後ろ指さされるようなことはするなと随分言ったわよね。

歩美ママ そうねー、私は人から後ろ指さされるようなことをしていないんだから、人から何を言われようと、お前は堂々と胸張ってろって言われたもんね。

玉ちゃん かぁー、かっこいいね。大ママの教育が最高だよ。母の背中ね。でも、今でも当時からのお客さんで大ママを求めて来るお客さんもいるんでしょ?

大ママ そうね、ありがたいことにね。「元気かい?」って顔出してくれるお客さんもいらっしゃるわね。あとは、もう息子みたいな人ばっかりよ。玉ちゃんも息子みたいなもんだから。

玉ちゃん そっか、息子世代ね。

なんて息子世代の話をしていると、その一人に某雑誌編集長Hさんがいることが発覚、そしてのHさんとゲーテ編集者が以前マッサージ店で隣だったという偶然もあり、「やっぱりスナックは繋がるねー」なんて話に。

悩める玉ちゃん

大ママ いや、本当あの子(Hさん)はいい子なのよ。

歩美ママ そう、私の1つ上だから47歳だから、ママ(由美子ママ)からしたらいい「子」よね(笑)

玉ちゃん またー、歩美ちゃんも遠慮なくサラッと年齢言うねー。

歩美ママ そりゃ言うよー、生きたもん勝ちなんだから。楽しいことも辛いこともあったしね(笑)

玉ちゃん 辛いことあるんだねー。

歩美ママ 玉ちゃんは? 体は元気なの?

玉ちゃん ダメ、体も精神的にも全然ダメ!

歩美ママ そっかぁ、そりゃいろいろあるよね。

玉ちゃん いや、ママね……。

なにやら悩みは深いようで…。

なにやら悩みは深いようで…。

(プライベートな悩みをママにガチ相談し始める玉ちゃん……)

歩美ママ あぁ、玉ちゃんが下手というかダメだったってことでしょ。

玉ちゃん そうだな、俺がダメだったんだな。もう大変よ。だから、スナックに来なきゃダメなんだよー。

歩美ママ そうだよー!(笑)ダメ、それダメって言ってあげるから!

玉ちゃん そう、「ダメ。ゼッタイ」って酒井法子じゃねーけどさ(笑) 大ママ、一言ちょうだいよ。

大ママ ちゃんとしなさい。(バッサリ)何事にも向き合って。

ママの背中

玉ちゃん だよね。ママも商売と向き合ってるんだもんね。

大ママ いや、まぁ私は向き合ってないんだけどね。

玉ちゃん 確かに!歩美ちゃん見てればわかるな。大ママの背中見て育ってるからね。向き合っていない感じが色濃く出てるわ(笑)

大ママ 昔から来るお客さんなんて、「ママは、客を客とも思っていない」って今でも言うのよ。なんか私、怒ってばかりいたみたいね(笑)

歩美ママ まぁ、それも受け止め方次第なんだよね。人によっては、「金払って飲みに来てんのに、なんで説教されんだよ」と言う人もいれば、「あぁ、ママに聞いてもらってよかった」って人もいるからね。

玉ちゃん ママのスタンスは誰に対しても絶対変わんないんだよね。

歩美ママ そう、変わんない。総理大臣だろうと、サラリーマンだろうと、誰にでも一緒だね。

玉ちゃん でも、タイプの男が来たら違うんじゃないの?

歩美ママ 確かにそれは見たことないから、わからないかも(笑)

ここで、遅れて大ママの次女、由夏ママが登場。大ママと喧嘩をし、3年間東京を離れ沖縄で生活。自分の店も持ってみたがうまくいかず、大ママ(母)の偉大さを改めて知り、いまは姉である歩美ママと店を盛り上げている。

次女の由夏ママ(左)登場。

次女の由夏ママ(左)登場。

編集部 歩美ママと同じように由夏ママも昔からお店を手伝っていたんですか?

由夏ママ 私は20歳くらいからかな。

大ママ この娘は、当時、店が好きじゃなかったのよ。

歩美ママ そうそう、私が無理やりやらせてたの。

由夏ママ なんでこんな酔っ払いの相手しなきゃならないのって思ってた。

編集部 でも、いま酔ってて一番テンション高いですけどね……。

由夏ママ そう、追いついちゃった(笑) でも、以前は昼の仕事をしてたんですよ。税理士事務所とか区役所とか……。

玉ちゃん かたっ!堅い仕事してたなー。

歩美ママ 介護もしてたよね。

由夏ママ そう、ホームヘルパーの仕事を10年くらいやってたんです。

玉ちゃん すごい、そりゃすごいね。

由夏ママ 私も離婚してるから、手に職を持たないといけないと思って。親の背中見てるから。

玉ちゃん やっぱ背中かー!歩美ちゃんも由夏ちゃんも大ママの背中見て育ったってことだな。うん、撮れ高十分。

 

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①TENSION
★★★
「とにかく明るいね。嫌なこと吹っ飛んじゃうよ。ボトル入ったらテンションMAXって、わかりやすすぎるだろw」
②TROIKA
★★
「大ママ、歩美ママ、由夏ママ、三人で切り盛りする。正にトロイカ体制だな」
③BACK
★★★
「やっぱ大ママの背中だね。弱ってる時なんかもたれかかりたくなるもんね」
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カプリコーン

カプリコーン
住所: 東京都中野区中野5-57-10
TEL: 03-3387-9750
営業時間: 19:00〜25:00
休み: 日曜・祝日

COMPOSITION=河合昇平(コレロ)

PHOTOGRAPH=吉田タカユキ

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