スポーツ選手はそれぞれの競技で戦い、ビジネスパーソンは仕事で勝負する。そんなビジネスアスリートとしての勝てる体は、単に筋トレやランニングのルーティンだけでは決して得られない。超時間のハードワークにタフなプレゼンや交渉ごと、緊急の問題解決に速さが問われる行動力など、求められるのは「ビジネス」スキルではありながら、瞬発力、持久力、スピードに反射神経といった肉体の持つ機能、それも多岐にわたる能力にほかならないからだ。【吉田輝幸の目指せ!ビジネスアスリート14】
睡眠時間が削られても疲れないカラダの作り方
こうした多角的な力を高めるために、必要なのは「6つの歯車」。
① コレクティブエクササイズ/体のクセや機能不全を改善して正しい使い方に導く
② レジスタンストレーニング/筋肉増加&筋力アップのための筋トレ
③ プライオメトリクス&ムーブメント/瞬発力を高めて瞬時にパワーを出せる体に
④ ESD/心肺機能を高め、少ない労力でラクに動ける効率性向上
⑤ リ・ジェネレーション/疲労回復のためのストレッチや筋膜リリース
⑥ ニュートリション/体づくりのための良質な食事
このうち、③「プライオメトリクス&ムーブメント」のメニューを重点的に紹介する。ジャンプなどの瞬間的なパワーを発揮させる動きによって、筋肉の瞬発力や弾性を高めるのが、プライオメトリクストレーニング。自分の筋肉の力だけでなく、地面からの反発(床反力)を使って動けるようにするものだ。スピードを競うようなスポーツのみならず、走る、歩く、跳ぶ、曲がる、止まるといった日常のさまざまな動作(ムーブメント)で効率よく機能的に動ける体づくりを目指す。
床反力など反作用の力を使うと、体の力はそれほど使わないでも大きな力を生み出せる。少ない力でパフォーマンスを上げられれば、体は疲れにくく、余計な部位に負荷をかけないで済むからケガや故障も起きにくい。さらに、ここで紹介するメニューはどれも、素早くジャンプを繰り返すだけ。数秒~10秒程度で終わるのも特長だ。
「多忙を極めるビジネスアスリートにとって、トレーニングにかける時間は短ければ短いほどいいはずです。『最短距離で最大効果をもたらす』のが私の信条」と吉田さん。今回行う「スプリットスクワット」も、目安は5秒と短時間。
「ただし全力で行うことが大事ですが、そもそも人間が全力で動ける時間は、6秒が限度と言われています。惰性でそれ以上行う必要もありません。短い時間で、全力とはいえ筋トレのように力を振り絞るものでもない。少ないパワーで、無駄なくラクに動けるようになるのだから、これからはプライオメトリクス&ムーブメントをトレーニングの必須メニューに加えてください。忙しくて睡眠時間が削られても疲れなくなった、階段の上り下りが軽快、活力が増したなど、多くのビジネスアスリートたちから、声が寄せられていますよ」
▼スプリットスクワット ※全速力で5秒(10回)程度
Teruyuki Yoshida
パフォーマンス、スペシャリスト。トレーナー歴25年で数多くのトップアスリート指導からヒントを得て最短で最大の効果を出せる「コアパフォーマンス®︎」を考案し、数多くのトップアスリートやアーティスト、ビジネスパーソンのトレーニング指導をおこなっている。
Illustration=NORIO