ゴルフギアは進化がめざましく、同時にゴルフファッションの多様化がここに来て一気に進んでいる。ギアやレッスンプロに精通するゴルフライター出島正登氏と、ゴルフのファッションとビジネスに注目しているゲーテ前編集長の二本柳陵介が新作を解剖。第6回目の今回は、Fujikura(フジクラ)の「VENTUS TR」をご紹介! ゴルフギア連載はこちら
1984年に日本国内外でリシャフトブームに火をつけたフジクラのシャフト。今年で創業121年を迎える藤倉コンポジット株式会社が1973年から続けるシャフト開発事業だが、当時の会長である松本重男がアメリカから持ち帰ったカーボンシャフトを研究し、試行錯誤を繰り返し始まった。今回紹介するのはフジクラが世界中のトッププロ、様々なツアーからのフィードバックをもとに完成させた「VENTUS TR」だ。
PGAツアーで人気の日本製シャフト
出島 二本柳さんはリシャフトの経験は?
二本柳 正直なところ、まったく知識がないんですよ。
出島 今やリシャフトは当たり前のように行われることで、クラブの性能はリシャフトありきで性能が高められていると言ってもいいほどです。
二本柳 なるほど。でも、シャフトで性能ってそんなに変わるんですか?
出島 各社ヘッドの性能は均衡している感じがあるので、クラブとしての完成度をさらに高めるという意味で、シャフトメーカーのシャフトは重要な存在と言えると思います。
そこで今回推したいのが、フジクラさんの新製品「VENTUS TR」です。フジクラさんは文字通り日本のメーカーですが、このシャフトはいわゆる逆輸入品なんです。
僕の記憶では、日本メーカーのシャフトの逆輸入の流れを作ったのは三菱ケミカルさんの「TENSEI」。もともとは米国市場用に作られたものがPGAツアーで絶賛されて、日本でも発売するようになった。フジクラさんの「VENTUS」も同じような火のつき方でブレイクして、今回の「VENTUS TR」はさらに進化させたモデルで、すでに米国では高い評価を得ています。向こうで人気になったシャフトが日本で売れるという流れができあがっている感じですね。
二本柳 そんな流れがあったんだ。
出島 昔のシャフトってただの棒っきれのような感じで、特に海外メーカーのものはハード過ぎて日本人には使えない代物が多かった。パワーのある米国人だから使えるシャフトって感じが多かったんですが、日本的な繊細な部分が米国でも受け入れられるようになってきたってことですかね。日本製って海外ではなにかと信頼感が高いですしね。
二本柳 やっぱり逆輸入だと、値段はちょっと高いのかな?
出島 そこはあまり変わらないですね。逆輸入だからというよりは商品によってという感じ。
二本柳 アメリカで売っているものはどこで作っているんですか?
出島 フクジラさんのシャフトは基本的には国内生産ですが、「VENTUS」などUSモデルやメーカー純正品は海外の工場で生産していますね。
二本柳 日本の技術がアメリカで認められているってことだね。
出島 それは言えますね。シャフトを契約しているプロって意外と少ないので、要は新しいものが出ると試しやすいんですよね。契約と関係ないから自由に試して、よかったら使うことができる。契約外ということを考えると、本当にいいんだなと思っちゃいますよね。
シャフトフィッティングほど、ゴルフが変わるものはない
出島 リシャフトは当たり前の時代になりましたけど、まだまだ上級者がやるものっていうイメージがあると思うんですよね。
二本柳 あるある(笑)。
出島 でも、アベレージアマこそやってみる価値があると思いますよ。シャフト選びって結構難しいですが、だからこそシャフトメーカーなどの専任のフィッターさんに診断して選んでもらうといいんです。シャフトだけでこんなにかわるの!って驚くレベルですよ。特に今のシャフトは素材もよくなって本当に進化していますから。
二本柳 ドライバーみたいに、長いものほど替えるべきなのかな?
出島 効果は感じやすいでしょうね。どんなにデータが揃っていても、最後は打ち手の感覚が大事ですから、打ってみないとわからない部分はありますね。シャフトには先調子とか中調子とかありますけど、それも人によって感じ方が変わってしまうものなので、一概に言い切れないところもあるんです。だからシャフトフィッティングは必要です。
二本柳 出島さんの、今のベストシャフトは何?
出島 こんなに推しておいてなんなんですが、今使っているドライバーは純正シャフトなんです(笑)。
その前はフジクラさんの「スピーダー」のシリーズを入れていたんですけど、だんだんと年齢と共に振れなくなってきた感じがあって。それでタイミングが合い安かったものを使っています。もちろん仕事柄、いろんなシャフトを試させてもらっているんですが、「VENTUS」はちょっとハードに感じたんですよね。それで今回の「VENTUS TR」を試したら、かなりよかったんです。自分でもしなりを感じられて、タイミングが合わせやすかった。本格的にリシャフト考えています。
二本柳 やっぱりしなるっていうのは大事なの?
出島 大事ですよ。しなりを感じられるとゴルフが変わりますよ(笑)。今回の「VENTUS TR」の性能的なことを説明しておくと、最外層に開繊クロス材というものを採用することで、中間部の剛性を高めて、安定性を追求しているんです。だからしなりも感じるけれど、インパクトでヘッドが戻りやすい感覚もある。結果、叩きにいってもシャフトに変な挙動が起きないんです。二本柳さんにも体感してもらいたいなぁ。
Masato Ideshima(右)
研修生を経てゴルフ出版社に勤務。現在はフリーライターとして、ゴルフメディアを中心に活動。国内男子のAbemaツアーのライターも担当。ゴルフ歴30年。ベストスコア70。研修生時代に工房をしていたこともあり、自身のクラブは自分で調整。年齢と共に効率良く飛ばせて、スコアが出せるギアを探し続けている。
Ryosuke Nihonyanagi(左)
ゲーテ前編集長。長谷部誠『心を整える。』などベストセラー多数担当。長年、アコーディアの会員誌を製作。ゴルフ歴は6年。ギアは見た目派。ウエアは白が好み。スイングを綺麗するのが目標。ベストスコアは81。