今、チェックしておきたい音楽をゲーテ編集部が紹介。今回は、フィービー・ブリジャーズの新作『Lost Weekend』。

喪失の向こう側を優美に歌う
フィービー・ブリジャーズは、今、USの音楽シーンで最も高い評価を集めるシンガー・ソングライターと言っても過言ではないだろう。
『Punisher』(2020年)の深遠な世界観で脚光を浴びた彼女。それぞれソロとしても活動する同世代のルーシー・ダカス、ジュリアン・ベイカーと結成したスーパーグループ、ボーイジーニアスのデビュー作『the record』はグラミー賞3部門を受賞。インディシーンの注目株からメインストリームを担うスターへとスケールアップを果たしてきた。
6年ぶりとなる新作『Lost Weekend』は全米2位、全英1位を記録。テイラー・スウィフトも称賛を送るなど各方面で絶賛を集め、アリーナツアーが即日完売するなど、大きな現象を巻き起こしている。
ジャック・アントノフやアレックス・Gなど敏腕プロデューサーが集った本作。特徴はカントリーからアンビエント〜エレクトロニカまで多彩なサウンドを駆使した曲調と、繊細な内面を掘り下げる歌の描写にある。スターダムの渦中で感じた解離の感覚、死去した父への思い、恋人との幸福な日常。パーソナルな喪失と、その先にある新たな出会いを、優美なメロディで歌う。胸に深く響く傑作だ。
柴那典/Tomonori Shiba
音楽評論家。ジャーナリスト。音楽を中心にカルチャーや社会批評の分野にて幅広く発信する。著書に『ヒットの復権』『平成のヒット曲』などがある。

