「エンタテインメントをとおして人の感情を豊かにする」
「まず原作を読んで、先の見えない展開にワクワクして、この作品に対するモチベーションが高まりました。観客の方にラスト20分のドンデン返しを楽しんでもらうためには、伏線部分でラストを悟られては台無しになってしまう。僕が演じたキダはストーリーテラーでもあるので、現場で『この映り方で大丈夫ですかね?』と客観視しながら、ひとつひとつのシーンを成立させていきました」
主演映画『名も無き世界のエンドロール』についてこう語る岩田剛典の言葉から、彼のクリエイター的な資質がにじみでる。そんな彼が、映画製作に興味が出てきたと言うのは当然だろう。
「2000年代頭の『殺人の追憶』や『チェイサー』のような、ハードで救いようのないストーリーの韓国映画が好きです。韓国映画はシンプルに脚本が面白く、表現が自由で、プロフェッショナル。最近、『日本でもこういう映画をつくりたい』という思いが強くなり、自分なりに考えて、作り手もやってみたいなと思っています」
その作品に自分が出演することへのこだわりは「ないです」と笑う。彼はすでにアーティストとして、次のフェーズに進んでいる。
「そもそもは『自分がやりたいことをやる』という、自分の欲望や野望を満たすために仕事をしていました。でも今は、突き詰めると『世のため人のため』に仕事をしているんだと思います。コロナ禍で改めて実感しましたが、エンタテインメントは世の中に絶対に必要なもの。娯楽がないと人は病んでしまう。そのエンタテインメントをとおして人の感情を豊かにすることが、自分の生業(なりわい)。そこで自分たちにしかできないことをやって、価値を追求していくことが、自分の人生だと思っています」
現在はふたつのグループ活動の合間に、個人活動をギチギチにはめこんでいる。
「やりたいことがありすぎて、楽しみしかないですし、休みたいとは全然思いません。ひとりでは何もできないので、自分のやりたいことを会社にプレゼンして、周りを動かして、形にしていく。人は自分に得があると動くと思っているので、すごく打算的なんですけど、僕と関わると得になると思ってもらえるように活動しています」
ビジネスマインドを併せ持つエンターテイナー。彼の動向から目が離せない。
『名も無き世界のエンドロール』
監督:佐藤祐市
原作:行成 薫
出演:岩田剛典、新田真剣佑、山田杏奈、中村アンほか
1月29日より全国公開
行成 薫の同名小説を、『ストロベリーナイト』の佐藤祐市監督で実写映画化。それぞれの社会でのし上がった、幼馴染のキダ(岩田剛典)とマコト(新田真剣佑)が、10年の歳月をかけてある壮大な計画を実行する。
Takanori Iwata
1989年愛知県生まれ。三代目 J SOUL BROTHERSのパフォーマーとして2010年にデビュー。’14年EXILEに加入。俳優としても活動。近年の出演作は『空に住む』『新解釈・三國志』『AI崩壊』『町田くんの世界』等。