役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
20年経っても変わってねー! 最高にカッコいいぜ!!
アカデミー賞が発表されて1カ月、話題の受賞作が数々日本公開を控えるなか、滝藤もババーンとノミネート作品を紹介しようと思っていたんです。しかし、どうしてもこれを選ばざるを得なかった......。出てくるあいつらは相変わらずダメ男で、どうしようもない人生を送っている。でも、20年前に作られた『トレインスポッティング』には僕が"カッコいい"と感じるものすべてが詰まっている、いわばバイブル的存在。だから今回はその続編『T2 トレインスポッティング』を語らずにはいられないのです!
前作が公開された1996年は、アートシネマの全盛期。今はなき、渋谷のシネマライズが光り輝いていた時代。そこで買った『トレスポ』のド派手な銀色のパンフレットは今でも大事にとってあります。劇中での彼らのファッションは、とことん真似しました。ある日はスリムなジーンズにコンバース、チビTを着てレントン風。またある日には、髪を刈り上げて襟の大きなキラッキラの開襟シャツにクリスチャン・ディオールの赤い眼鏡をオーバーサイズでスパッド風。ある日は、アーガイルのセーターに口髭を蓄え、ビールジョッキ片手にベグビー風。彼は今作でも着ていましたよ、アーガイルのセーター(笑)。名古屋から上京したばかりの頃、東京にどっぷり溺れていた僕に、この映画がファッションと音楽のカッコよさを教えてくれた。お金もないのに映画館で2回観たのは、後にも先にもこの作品だけ。
文化不毛のスコットランドで、若者たちが馬鹿みたいに遊びに興じている。音楽とサッカーさえあればとりあえず幸せ。でも、この底なし沼から抜け出したい。あの躍動感に満ちた前作に比べて今回の『T2』。相変わらずまともじゃないし、尖っている。だけどみんな年をとっているぶん、観ていてなんだか痛い......。彼らより、まっとうな人生を送ってきたことにホッとしながらも、普通のオトナになってしまったことが少し寂しくもありました。20年前の自分に会ってみたくなる、まさに同窓会のような映画です。
『T2 トレインスポッティング』
2017年/イギリス
監督:ダニー・ボイル
出演:ユアン・マクレガー、ユエン・ブレムナー、ジョニー・リー・ミラー ほか
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
4月8日より丸の内ピカデリーほかにて公開