役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者のそして映画のプロたちの仕事はある! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!!
またまたやってくれました『セッション』の衝撃再び!
この連載が始まって3度目のアカデミー賞がやってきました。実は短期連載4回限定で始まったこの企画もすでに26回目。感無量です(涙)。さて、今回は最高に粋なミュージカル作品をご紹介。昨年、『セッション』で全世界を大いに沸かせた、デイミアン・チャゼル監督の最新作『ラ・ラ・ランド』です。
冒頭、ロサンジェルスの高速道路を貸し切っての撮影。大渋滞、動かないクルマから降りたドライバーたちが、次々とダンスを披露。カット割りなしのワンショット。一瞬で心を鷲摑みにされているなか、エマ・ストーン登場。長い長いワンショットの最後に登場することほどスリリングなことはない。観ているこちらが緊張する。女優になることを夢見て、カフェで働くヒロインのミア。「LAやニューヨークのカフェやバーで働いているウェイター、ウェイトレスは、ほとんどが俳優で、彼らは働きながらダンスや歌のレッスンを受け、腕を磨き、ステージに立つチャンスをWaitしているんだ」とかつて仲代達矢さんがおっしゃっていました。うまいこと言うなぁ、と当時は仲代さんのネタだと思っていましたが......本当だったんだなぁ。
そして、主人公のジャズピアニストを演じるライアン・ゴズリング。髪の毛を後ろになでつけ、開襟の長袖シャツをロールアップしている。まるで昔のイタリア映画に出てくる伊達男。ジャケットの持ち方も美しい。僕も彼の影響を受け買ってしまいました、開襟シャツ。3枚も。
このふたり、とにかく切ない。売れるとすれ違い、久しぶりに会うと会話がかみ合わない。あのチグハグ感、なんだろう......懐かしいなあ、僕だってそんな過去、ありましたよ。
それにしても『セッション』のマイルズ・テラー同様、ライアン・ゴズリングもわずか数カ月の特訓で見事なジャズピアノを披露しています。しかも、手元のクローズアップも本人がやっているというから、同じ俳優としてぐうの音も出ません......。『セッション』の鬼教師役J・K・シモンズもわずかなシーンで強烈なインパクト。今回も彼はノリノリでした(笑)。
『ラ・ラ・ランド』
2016年/アメリカ
監督:デイミアン・チャゼル
出演:ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、J・K・シモンズ ほか
配給:ギャガ、ポニーキャニオン
TOHOシネマズ みゆき座ほか全国公開中