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2016.08.23

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』滝藤賢一の映画独り語り座19

連載「滝藤賢一の映画独り語り座」。今回は『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』を取り上げる。

hollywood

才能に見放されず家族にも愛される。最高の人生の物語

絵になる男だなぁ。参りました、いちいちカッコいいんです。鳥を肩に乗せ執筆している姿。バスタブの中で脚本を書く姿。黒縁眼鏡に煙草。素敵だ。

主人公の名前は、ダルトン・トランボ。『ローマの休日』の脚本を手がけた男。これでアカデミー賞の原案賞も獲りましたが、授賞式の瞬間、壇上にいないどころか、書いた事実は長い間、隠されていた。映画人の労働者問題に肩入れしていた彼は共産主義者として、1940年代後半にアメリカで吹き荒れたマッカーシズム(反共主義運動)の際、糾弾され、ブラックリストに載り、ハリウッドから追放されてしまいます。

ある日突然、国から悪だと決めつけられ、刑務所に放り込まれる。こんなことがまかり通ってしまう時代が恐ろしい。これでもか、とトランボを追い込むゴシップコラムニスト役に、オスカー女優のヘレン・ミレン。はらわたが煮えくり返るほどムカつく。......抜群です。愛国心を振りかざし、世論を操作し、トランボを社会的に抹殺する。共産主義者を叩き潰すことが使命だと信じ切って正義に酔う、狂信的な怖さを嬉々として演じています。帽子の被り方までいちいち癇(かん)に障るほど。

ん? このままでは暗く、悲惨な物語だと思われるかもしれませんが、潰されても心折れることなく書き続けるトランボは、ポジティブすぎて気持ちがいい! なにせ、偽名で二度もアカデミー賞を獲ってしまう男の話ですから、すこぶる痛快な映画です。

さらに見どころは、トランボと家族の距離感。取り憑かれたように脚本を書き続けるトランボが、家庭内で独裁者とならなかったのは、自分の意思をしっかりぶつけてくる娘と、多くを語らない妻の存在が大きいでしょう。僕も、これからは毎日が当たり前だと思わずに、家族の声にちゃんと耳を傾け、感謝の言葉を口にしていく! 場面によって、それぞれのキャラクターに共感できるとても稀有な作品です。

hollywood

『トランボ ハリウッドに最も嫌われた男』
2015年/アメリカ
監督:ジェイ・ローチ
出演:ブライアン・クランストン、ダイアン・レイン、ヘレン・ミレン ほか
配給:東北新社 STAR CHANNEL MOUIES
TOHO シネマズ シャンテほかにて全国公開中
Photo:

滝藤賢一/Kenichi Takitoh
俳優。1976年愛知県生まれ。金曜ナイトドラマ『グ・ラ・メ!~総理の料理番~』(テレビ朝日系)に出演中。公開待機作に映画『SCOOP!』(大根仁監督)など多数。

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役者・滝藤賢一が毎月、心震えた映画を紹介。超メジャー大作から知られざる名作まで、見逃してしまいそうなシーンにも、役者の、そして、映画のプロたちの魂が詰まっている! 役者の目線で観れば、映画はもっと楽しい!

COMPOSITION=金原由佳

PHOTOGRAPH=Hilary Bronwyn Gayle

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