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2024.11.24

安東弘樹アナ、世界の耐久レースでグッドイヤータイヤの魅力を目撃

2024年シーズンが終了したWEC(世界耐久選手権)。富士6時間レースを、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員でフリーアナウンサーの安東弘樹が観戦。今シーズンから新設された「LMGT3クラス」にタイヤを供給しているグッドイヤー ヨーロッパのキーパーソンにインタビューを敢行した。

安東弘樹/Hiroki Ando
1967年神奈川県生まれ。フリーアナウンサーとして活動する傍ら、2017年から日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。愛車遍歴は48台という正真正銘の自動車愛好家。現在はBMW X5  PHEVとプジョーe-208、ロータス・エリーゼを愛でる。モータースポーツ好きでもあり、自動車ジャーナリスト。

1種類のタイヤで、最高のパフォーマンスを発揮

グッドイヤーは2023年までのWECのLMP2クラスへタイヤの独占供給を行ってきた。2024年シーズンからはルマンをのぞいてLMP2クラスが廃止されることをうけ、新設されたLMGT3クラスへの供給を開始している。LMGT3クラスは多種多様なマニュアファクチャラーが参戦するだけに、各車にとって公平なスペックのタイヤを供給するLMP2クラス以上の難しさがあるのだ。

WEC LMPクラスと新たに新設されたLMGT3クラスの混走にて行われるWEC。LMGT3クラスではポルシェやフェラーリ、アストンマーティンなどのハイブランドが鎬を削る市販車ベースの主戦場だ。2024年度のラウンドでは9つのマニュファクチャラーが参戦。

安東弘樹(以下安東) まずマイクさんは耐久レースプログラムマネジャーということですが、どのような仕事をされているのでしょうか。

マイク・マクレガー(以下マイク)、私は耐久レースに関するすべてのオペレーション、セールスを担当しています。そして、耐久レースに関わる多くのスタッフとともにWECに帯同し、世界を飛び回っています。今回、富士には2000本のタイヤを持ち込みました。

安東 今シーズンはLMGT3クラスへのタイヤ供給がメインとなったわけですが、これまでとはどう違うのでしょうか。

マイク GT3カーは9つのマニュファクチャラーが、それぞれ違ったマシンをつくっています。重量も重心も、空力もすべて異なります。1種類のタイヤでそれに合わせていくことは非常に大変なことではありますね。

安東 GT3カーはLMP2に比べれば市販車両に近いレースカーといえると思いますが、タイヤとしても市販に近いものなのでしょうか。

マイク GT3用はエンドユーザーに限りなく近い製品と考えていただいていいと思います。われわれは“Race to Road ”と呼んでいますが、いまレーシングで使われているテクノロジーやコンパウンドがのちの市販タイヤへと活かされていくのです。

モータースポーツ部門を統括するグッドイヤー レース・プログラム・マネージャーのマイク・マクレガー(右)とフリーアナウンサー 安東弘樹(左)。モータースポーツ歴は長く、各パドックには知人がたくさん。これまでの愛車にポルシェ911からスバルのレガシー、メルセデスなどがある。愛車遍歴48台を誇る安東氏とともに“カーガイ”だ。

安東 WECは中東やヨーロッパ、アメリカ、そして日本などさまざまな国でレースを行うわけですが、コンパウンドは1種類なのでしょうか?

マイク はい。すべてのイベントにおいて、1種類のタイヤでまかなっています。難しいのは、例えば、最近レースのあったオースティン、テキサスは気温が50度でした。一方でベルギーは6度しかなく、またル・マンでも、50年ぶりと言われる非常に寒い環境でした。この富士はかなり暑いうえに湿気がある。それらを1種類のタイヤでカバーしなければいけない。かつチームごとにマシンも違うしドライバーも違う、そういう意味では本当に大変です。

安東 たしかに、WECの場合は、ブロンズドライバー、いわゆるアマチュアのドライバーもいて、世界のトップドライバーもいます。タイヤを使いこなす技量も異なりますよね。

LMGT3クラスではフェラーリやアストンマーティンなど、特性の異なるマシンでの勝利を目指す9つのマニュファクチャラーが参戦。グッドイヤーは極寒から砂漠までの全ラウンドを1スペックで支える。

マイク おっしゃるとおり、ブロンズドライバーがいて、プラチナドライバー、いわゆるファクトリードライバーがいる。プロフェッショナルは、やはりマシンの実力を最大限発揮するため、それに合わせたドライバビリティが必要ですし、同じタイヤでブロンズドライバーのパフォーマンスも引き出さなくてはいけない。そこをどうやってバランスさせていくのかが腕の見せどころというわけです。

安東 だからこそ、このGT3へ供給するタイヤの技術は、市販車にフィードバックされる割合が高いということですね。

マイク まさにそうです。私たちは柔軟な対応力のある、いろんな条件に適応できる、そういった商品をいち早く消費者に提供するということを目指しています。それはスポーツカー用だけでなく、すべてのタイヤにおいてです。特に一般車用のタイヤは、天候が変わるたびに交換するというわけにはいきません。全天候型ということになりますので、このWECの場で培った新しい技術、そして新しいコンパウンドを使って、エンドユーザーの方々に、よりいいものを提供したいというのが私たちの狙いです。

WEC富士6時間には2000本ものタイヤが持ち込まれた。エネルギー節減のため、2023 年よりタイヤウォーマーの使用が禁止されたが、グッドイヤーは見事にその課題をクリア。幅広い温度域に対応し、組み上げれば即スタートできるタイヤをつくりあげた。

安東 ちなみに私、自分のSUVにグッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター」を装着しているのですが、オンロードから雪まですべてこのタイヤでこなしています。軽井沢で雪道を運転する機会もあったのですが、なんの問題もなくスタッドレスじゃなくても安心して走ることができるまさにオールラウンドなタイヤでした。

マイク 特にWECにおいては、ルール上F1のようにタイヤウォーマーを使えないので、タイヤが冷えた状態でスタートすることになります。ですから広い温度域でしっかりとグリップする必要があります。レースではドライ用とは別にウェットタイヤがあるのですが、これも雨がやんで路面が乾いた状況でもそのまま走り続けなければいけないシーンがあり、ウェットタイヤでドライ路面を走行すると大変な負荷がかかります。そういった非常に厳しい条件の中でも、パフォーマンスを発揮できるよう開発しています。

パドックを見学。モータースポーツ好きのふたりの会話が止まらない。実はいま世界的にモータースポーツの人気が高まっており、今シーズンのWECではオースティンでの3日間の観客動員数を6万5089人、富士でも前年比+20%の6万5800人と大幅な増加となった。

素晴らしいと思った市販車用のイーグル F1 アシメトリック6

安東 そして今回ハイパフォーマンスタイヤの、イーグル F1 アシメトリック6を装着したGRスープラに試乗させてもらったのですが、首都高の段差をいなす乗り心地のよさとハンドリング性能を両立した素晴らしいタイヤでした。実は私、いまあるEVに乗っているんですけど、次はこれに替えようと本気で思いました。

マイク アシメトリック6は非常に多様性に富んだ、さまざま車両、また条件にオールラウンドで対応できるタイヤとなっています。今おっしゃっていただいたように、非常にハンドリングもいいですし、乗り心地もいい。EVに装着する場合は車両重量の問題があるので確認が必要にはなります。いずれにせよ当社の研究開発チームは素晴らしい仕事をしてくれていますし、皆様にこうした製品が提供できることを誇りに思います。

LMGT3クラスの連取走行では、グッドイヤー専属のエンジニアが参戦マシンのタイヤコンディションをチェックしていた。

安東 やはりイーグル F1というブランドは、グッドイヤーにとって特別だということなんですね。

マイク もちろんです。ちなみにWECのセーフティーカーはポルシェ911ですが、こちらもイーグルF1スーパースポーツを履いています。以前は、他社のタイヤが使われていて、今シーズンから当社のタイヤへと切り替えたのですが、セーフティーカーのドライバーがわざわざ私のところにやって来てフィードバックをくれたんです。グリップもいい、ドライバビリティも非常にいい、素晴らしいパフォーマンスだと“べた褒め”でした。この話を聞けば、イーグルF1スーパースポーツがいかに優れたタイヤであるかをおわかりいただけるのではないでしょうか。

グッドイヤーの名声はレースの世界において勝ち取ってきた歴史がある。1965年にF1で初勝利。そして、1980年、グッドイヤーはレース用タイヤとハイパフォーマンスタイヤを「EAGLE」ブランドに統一し現在に至る。EAGLE F1はポルシェ認証タイヤとしても採用されている。

安東 たしかにセーフティーカーのドライバーが言うなら間違いないですね。

マイク はい。私が言うことよりも彼らが言うことの方が、はるかに真実に近いと思います(笑)

安東 最後に、これからグッドイヤーがモータースポーツを通して目指していくものとは、どういうものなのでしょうか?

マイク すでに始まっているのですが、このWECにおいては、私たちはサステイナブルな材料を使うということを主眼においています。GT3においては、すでに33%がサステイナブルな材料になっていますし、数年後にはこの2倍の66%にするという目標を設定しております。またグッドイヤーは、タイヤメーカーとして初めて、公道走行が承認された90%サステイナブルな材料を使ったタイヤを発表しています。そして、ヨーロッパ中近東、アフリカ、またアメリカなどでトラック向けに70%のサステナブル材料を使ったものを発売しています。われわれは、モータースポーツをはじめモビリティのより良い未来を築くためのイノベーションとコミットメントを引き続き提示していきます。

今季は中東カタールを皮切りに4大陸、8ヵ国を転戦し、熱戦を繰り広げたWEC。LMGT3クラスでは、重量や重心、空力など特性の異なる参戦マシンのそれぞれのパフォーマンスを最大限発揮すべく、グッドイヤーがタイヤを供給している。

安東 いまやモータースポーツもサステイナブルであることが求められる時代になりました。GT3はより市販車に近いマシンだけに、レース用タイヤの開発で培った技術を、市販車用タイヤへとフィードバックしていく“Race to Road”を実地検証していくのにWECは最適な場といえるでしょう。グッドイヤーの今後の活躍に、期待したいと思います。

1898年創業のグッドイヤー。1901年のカーレースにフォードが参戦した際にレース用タイヤを供給したことでも知られている。F1レースに至っては通算368勝という偉業を打ち立て、F1撤退後20年を過ぎた今でも、その記録は未だ破られていない。

問い合わせ
グッドイヤー https://www.goodyear.co.jp/

TEXT=藤野太一

PHOTOGRAPH=隈田一郎(K.Graphics)、Zmedia

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