これまでにカスタムしたハーレーダビッドソンは500台以上。カスタムビルダーとして業界を席巻してきたクワイ華氏がアーティストとして活動を開始。彼にしかできない工業向けの特殊な専門技術で、アート界に旋風を巻き起こす。
探求を重ねた独自技術と湧き出るアイデアにより、比類なき作品を生みだす
キャンバスに描かれた平面作品でありながら、立体的に塗り重ねられた塗料の陰影が生みだす光と影。鈍い光沢感や力強い色使い、そして、エネルギッシュな渦巻き模様によって、こちらに迫りくるような作品を制作するのは、アーティストのクワイ華氏だ。
アートブランド「UNDULATION(アンデュレーション)」として活動を行うクワイ氏は、佇まいからしていかにもアーティスト然としているが、その経歴は異色だ。高校卒業後、救急病院に看護師として勤務。退職後、トラック運転手を経て、1998年にハーレーダビッドソン(以下ハーレー)専門のカスタムショップ「BAD LAND」を起業した。
きっかけは趣味で乗っていたハーレーに携わる仕事をしたいと思ったこと。当時日本ではほとんど知られていなかったヨーロッパのハーレーカルチャーを紹介した。パーツの輸入やオリジナルパーツの制作を行ったり、著名なドイツ人カスタムビルダーのトーマス・ハバーマンに教えをこうため、10年もの間、年に2~3回のペースで彼の元に通うなど、そのこだわりの強さが功を奏し、瞬く間に人気カスタムショップへと成長を遂げた。
そして、3年ほど前からアート作品の制作を開始。ハーレーのカスタムで培った板金加工や金属造形の技術に加えて、ショップ経営で発揮したクワイ氏独自の着眼点や職人気質なこだわりは、アーティストとしての彼をも支え、唯一無二の作品を生みだす原動力になっている。
クワイ氏の作品を象徴するのは龍のモチーフだ。その原点は幼少期にまで遡る。
「子供の頃、桜吹雪が舞う神社の境内で、曇り空に龍のような姿を見たことをきっかけに、龍が人生の道標となりました」
そして、もうひとつ。クワイ氏の作品によく描かれる渦巻き模様は、彼にたびたび幸運をもたらしてきた、近所にある神社の狛犬の巻き毛をモチーフにしているという。
クワイ氏がキャンバスに描く龍が鑑賞者に強烈な印象を残し、心を動かすのは、彼独自の表現方法とも関係がある。さまざまな色が絡み合いながら龍を描きだす有機的な表現手法は、ハーレーのカスタムを通じて、特殊な技術を修得してきたクワイ氏だからこそできることだ。
「さまざまな色の塗料を35回以上塗り重ねてから、工業用の機械を使って表面を削りだしています。削る深さの微妙な違いで色が変わるので、頭の中のイメージどおりに仕上げるためには、特に集中力や細心の注意が必要な作業になります」
工業系の塗料は中途半端に乾いた状態で塗り重ねていくと、途中で全部ボロっと剥がれてしまうこともあり、1回ごとに完全乾燥させてから次の塗料を塗っていく。すべて塗り終わるまでには平均4週間ほどの時間を要するという。
また、ナノサイズの極小粒子からできた銀色の塗料は、温度や湿度が一定の条件下でしか使うことができず、通常は大手メーカーの工場でロボットによって吹きつけているもの。
「実は人間の手でも吹けるとの噂を聞いて、自分で試してみたんです。試行錯誤を繰り返しながら、8年かかって塗り方を確立することができました」
他の人には扱いが難しい金属系の塗料による作品作りは、UNDULATIONが持つ強烈な個性のひとつになっている。
「自分の人生は龍に見守られているような感覚があります。龍を描いた作品を身近に置くことで、同様の感覚を感じていただけたら嬉しいです」
2024年12月のフィリップスのオークションに作品が初出品されるクワイ氏。彼の描く龍が、世界へと飛び立つ日はもうすぐだ。
「フィリップス」でのオークション&展示が決定!
フィリップス東京展示会
場所:東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル4F
開場時間:2024年12月13日(金)17時~20時、14日(土)~16日(月)12時~19時
※展示会への出入りは自由
問い合わせ
hiro stage TEL:03-6627-3577