ビジネスパーソンの教養に「アート」は欠かせないものとなりました。2022年に開催される必見の美術展やアート情報を紹介していきます。今回は2月2日に開館した大阪中之島美術館をはじめ、新しい美術館に注目します。
大阪・中之島の新しいアート発信拠点
堂島川と土佐堀川に囲まれた大阪・中之島エリア。国立国際美術館や大阪市立東洋陶磁美術館、中之島香雪美術館といった名門美術館が集まり、関西有数の文化・芸術発信エリアとして知られています。
この中之島エリアに、2022年2月2日、大阪中之島美術館がオープンしました。まずその建物に驚かされます。青空を背景に浮かび上がるブラックキューブの強烈な存在感。でも、宙に浮かんだように見える設計デザインと、建物の周りにふんだんに配した緑地・植栽によって、意外に軽やかに見えます。周囲の街並みに、ナチュラルに溶け込んでいる印象です。
大阪中之島美術館の前に建つと、「本当にできたんだ」という感動が湧き上がってきました。というのも、開館に費やした時間は約40年。1983年に大阪市が近代美術館建設の基本理念を制作し、'90年には建設準備室を開設。しかし、バブル崩壊後の財政状況の悪化により、建設計画は度々延期になってしまいます。40年という年月は、「美術館の完成を見ることは一生ないのでは」と思わせるのに十分な時間です。
その40年の間に、建設準備室が何をやっていたかというと、コツコツと作品収集に励みました。大阪のコレクターから寄贈を受けたり、オークションに参加し作品を購入したり。寄贈作品を代表するのが、山本發次郎コレクションです。發次郎は大阪の実業家で、美術コレクターとしても知られた人物。美術ファンには、日本を代表する洋画家・佐伯祐三を発掘した人物としても知られています。發次郎の死後、彼の遺族が寄贈した作品群には佐伯祐三の代表作『郵便配達夫』が含まれています。
この寄贈劇は、ほかのコレクターの心に火を点けました。日新製鋼(現・日本製鉄)会長を務めた田中徳松の遺族が「田中徳松コレクション」を寄贈。画廊・アートサロンを経営する高畠良朋もまた、發次郎コレクションの寄贈に触発され、「高畠アートコレクション」を大阪市へ贈りました。さすがは画廊界を代表する経営者。寄贈品にはジュール・パスキンやマリー・ローランサンなど、エコール・ド・パリを代表する名品が目白押しです。
19億3000万円のモディリアーニの裸婦画は、今や10倍の評価額に!
建設準備室が購入した作品では、モディリアーニ『髪をほどいた横たわる裸婦』が有名。1989年に大阪市が19億3000万円で購入し、当時は「税金の無駄遣いだ」と散々叩かれました。でも、30年以上寝かせていた間に価値はどんどん高まり、現在の評価額は10倍以上。「大阪市は先見の明があった」のようにいわれているのが何とも微笑ましい。人間は現金なものです。
このモディリアーニ『髪をほどいた横たわる裸婦』は、3月21日まで開催されている「Hello! Super Collection 超コレクション展 ―99のものがたり―」、4月9日~7月18日に行われる「モディリアーニ ―愛と創作に捧げた35年―」で鑑賞できます。ぜひ、お見逃しなく。
大阪中之島美術館は、地元ゆかりの展示も豊富です。中之島は1954年に結成された前衛美術グループ「具体美術協会(具体)」が活動の拠点にした場所の一つ。彼らは中之島に私設展示施設「グタイピナコテカ」を設けました。展示室が黒壁で覆われていたことから、大阪中之島美術館でも “黒壁の展示室”を設け、具体の作品や資料、活動記録を紹介しています。
さらに、大阪出身の現代アーティスト、ヤノベケンジの作品にも出会えます。建物前の芝生広場には、『シップス・キャット(ミューズ)』を設置。美術館の守り神としてつくられ、スーツの色は厳島神社の朱をイメージしたそうです。館内の『ジャイアント・トらやん』は、高さ7.2mのロボット人形。SNS映えする写真、確実に撮れます。
ベネッセアートサイト直島には2つの新ギャラリーが誕生
大阪中之島美術館のほかにも、2022年は新しい美術館やギャラリーのオープンが続きます。同じ大阪では藤田美術館が全面改修し、4月にリニューアルオープン。3月12日にはベネッセアートサイト直島に、2つの新ギャラリー「ヴァレーギャラリー」「杉本博司ギャラリー 時の回廊」が登場。東京では10月に東京・丸の内に静嘉堂文庫美術館が移転・オープンする予定です。今から楽しみに待ちたいですね。
大阪中之島美術館
住所:大阪府大阪市北区中之島4-3-1
TEL:06-6479-0550
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