アート界に一石を投じる美術商集団
丸の内仲通りに面し、ザ・ペニンシュラ東京のはす向かいという東京を代表する一等地にスペースを構える。およそ3週間に一度入れ替わる展示は、ガラス越しでもよく人の目を惹く。その「CADAN 有楽町」を運営するのは、個別のギャラリーではない。現代美術を扱うギャラリーが集まり組織する団体、日本現代美術商協会(通称CADAN)だ。
「CADANは2015年に設立された一般社団法人です。新興から老舗にいたるまで、国内47軒のギャラリーが加盟しており、現代美術の普及を目的に、展覧会といったイベントの実施や会員向けの勉強会などを行っています」
そう話すのは、代表理事を務める小山登美夫氏。普段は六本木で自身のギャラリーを営んでいる小山氏は、このCADANの存在に大きな可能性を感じているという。
「今年の7月、有楽町にリアルスペースをオープンさせましたが、これほどの一等地に出店できるなんて、単独のギャラリーではありえないこと。それは、国内の主要ギャラリーで組織されるCADANだからこそ、実現できたことだと思います。また、ここで作品を展示していて感じるのは、アートに興味のあるビジネスパーソンの方々が、意外に多いということでした」
しかし、興味があることと実際に購入することの間には、大きな乖離(かいり)がある。有楽町での活動も含め、CADANが推進したいのは、「アートを買う」という行動様式の浸透だ。
「特に最近は、若い起業家や経営者のアートに対する熱はますます高まってきていると感じますし、オークションでの売買も含めて、高額の作品を購入する人たちは間違いなく増えています。ただ、じゃあ一般の人たちはどうかというと、関心はあったとしても、作品を“買う”というところまではなかなかいっていないんです」
その壁を越えるには、アート作品に直接触れ合い、モノとしての質感・美しさを体感してもらうのが一番。有楽町での展示はその一環であり、今年は寺田倉庫や新宿伊勢丹ともコラボレーションしてイベントも行った。日本を代表するギャラリーがキュレーションした展示会は、現代アートの最先端をみせる絶好の機会であり、来場者からも好評の声が多かったという。
また、それと同時にCADANが取り組んでいるのが、日本のアート業界を取り巻く問題の解決であり、行政機関との情報交換ならびに提言だ。CADANは、文化庁をはじめとするさまざまな機関にも意見ができる集団として、アート界でも稀有な存在になっている。
「日本でもっとアートが普及していくためには、税制をはじめ、行政とも協力して解決していかなければならない問題が山積みです。CADANにしか発信できないことは間違いなくあると思いますし、活発に国や行政とも協力していろんな活動をしていきたいですね」
Policy of CADAN
1.アート業界の課題解決のため、国や行政に提言をする
2.ギャラリー間のネットワークを強化
3.展示会などを通じて、現代アートの最前線を発信する
Tomio Koyama
1963年東京都生まれ。西村画廊などでの勤務を経て、’96年に小山登美夫ギャラリーを開廊。これまでに、数多くの日本を代表する現代アーティストのプロデュースを務めてきた。
CADAN有楽町
住所:東京都千代田区有楽町1-10-1 有楽町ビル1F
TEL:070-6464-1438
営業時間:11:00~19:00(土曜・日曜・祝日~17:00)
休業日:月曜(祝日の場合は翌平日)
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