時代の変化に伴い、アートにまつわる仕事は実に多様化している。業界に一石を投じるベンチャー企業や話題の新興ギャラリー、管理倉庫の舞台裏まで、アートの仕事の最前線に迫った。大特集「アートのお仕事」が掲載されるゲーテ2月号のご購入はこちら!
新たな可能性を広げるアートディレクション
アートは一部の愛好家や投資家のためのもの。いまだ、そんな認識を持っている人もいるのではないだろうか。
「残念なことに、日本人のアートとの付き合い方は世界のなかでかなり遅れていると感じます。欧米はもちろん、近年ではアジアでも自国のアーティストをリスペクトし、国をあげて支援もしている。日本人にとってアートがもっと身近な存在になるよう、2019年にアートテクノロジーズを立ち上げました」と、代表の居松篤彦(すえまつ・あつひこ)氏は話す。
居松氏は、実家が名古屋で画廊を経営。大学卒業後に自身も画廊で働き、その後はギャラリーを立ち上げるなど、さまざまなアート作品に触れてきた。
「日本には、未発見の優れた作家が多いといわれています。でも、日本国内の企業がアートを活用するケースはまだまだ少ない。そんな状況を少しでも変えたいんです」
日本のアート市場を拡大するため、アートテクノロジーズでは変革に挑んでいる。その主軸となっているのが、法人向けの“買える”アートレンタルサービス「アートプレオプション」だ。アートテクノロジーズが扱うアート作品をレンタルし、オフィスや店舗に設置。同じ作品を一定期間レンタルすることにより、価格の残価を支払ってその作品を購入できるシステムを取り入れている。
「ECサイトではAR技術も導入しています。スマートフォンなどを通して、実寸大の作品を疑似的に飾る事が可能です。この機能は、オフィスコーディネートや個人向けコンサルティングでも活用しています」
アートプレオプションのサービスは、すでにIT企業や病院など約50社が導入。オフィスにアートを飾ることで、経営者と社員の接点になったり、来客との会話の糸口ができたりなど、クライアントからも好評なのだという。
また、同社は若手アーティストの支援にも積極的だ。作品を紹介するだけでなく、作家の人物像を伝える動画を制作し、自社ウェブサイトで公開している。
「アーティストの生き方・考え方に共感することが、現代においては作品の理解につながることが多くなっています。人間像も含めて、作家を身近に感じていただければ」
人とアートをよりシームレスにつなげる。アートテクノロジーズが生みだすその循環が、芸術という文化と経済を結びつけていく。
Policy of アートテクノロジーズ
1.アートの総合商社として人とアートをつなぐ
2.AR技術などのテクノロジーを活用する
3.作家の人間像も伝え、ファンを増やしていく
Atsuhiko Suematsu
1978年愛知県生まれ。大学卒業後、弥栄画廊に勤務。2015年「SHUMOKU GALLERY」を開廊。’19年にアートテクノロジーズを設立した。
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