“キング・オブ・ダイヤモンド”と称されるニューヨーク発祥のジュエラー、ハリー・ウィンストン。その美しくも複雑な時計の魅力に迫る。今回は、世界的に活躍する建築家・石上純也氏に「プロジェクト Z15」の魅力について聞いた。
複雑なダイヤル構造に、強固な都市システムを持つニューヨークの姿が重なる
ニューヨークのジュエラー、ハリー・ウィンストンが時計業界に参入したのは1989年から。一般的にジュエラーズウォッチは華やかな表現を取り入れることが多いが、「プロジェクト Z15」はかなり個性的だ。世界的にも活躍する建築家・石上純也氏はこう話す。
「ハリー・ウィンストンにとって腕時計は、まったく違う分野ではなく、ジュエラーとしての技術や美的表現をそのまま拡張させたものなのでしょう。この腕時計はスポーティですが、単に機能性だけを追求しているわけではないことは見てわかりますよね。
また、ニューヨークのビジネスパーソンには足元はスニーカーっていう人が多いですが、これはファッション目的というよりは街を快適に心地よく移動するため。実用性を好むニューヨーカーと『プロジェクトZ15』には、通じるものがある気がします。
建築家目線でも、ニューヨークは何でも受け入れてくれる街。街区がグリッドで分かれていて、ニューヨークという街自体が強烈な構造を持っている。この複雑なダイヤルを見ていると、ニューヨークの街を思いだします。立ち並ぶアールデコ建築の雰囲気もありますね」
ハリー・ウィンストンの創造性に注目する石上氏は、多様化する社会と建築の在り方に、腕時計の姿を重ね合わせる。
「自由に見える建築でも、そこには様式や型があります。型があるから建築らしさを感じるし、何かしらの安心を相手に感じさせることができる。それは腕時計にもいえることでしょう。時を刻むものであるという大前提のうえで、型や様式、スタイルといった変わらない部分をきちんと守って作られている。
しかし多様な価値観が広がる現代にあっては、建築はその領域をもっと広げていかなくてはなりません。量産とか画一性のような価値観から解放され、個々のスタイルや価値観にフィットした建築がより増えてくるでしょう。
もちろん、建築の役割自体はそんなに変わりませんが、世の中が多様な価値観を受け入れ始めているのと同様に、建築も社会的な約束事から少しずつ解放されてきているのかもしれません。『プロジェクト Z15』を見ていると、腕時計にも同じような変化を感じます」
もはや実用品というよりも嗜好品としての価値のほうが評価されつつある腕時計もまた、多様な表現を受け入れる状況になりつつある。
「『プロジェクト Z15』のダイヤル表現やケース素材は、これまでの高級時計の常識からすればかなり自由になっているように思えます。でも、すべてが自由に解放されるわけではない。むしろいろいろなものが解放された結果、最も重要な部分がより鮮明に見えてくる。だからこの時計は、フォーマルなファッションと合わせるといいかも。強い枠組みがあるからこそ、この個性のなかに隠れた本質が際立ってくるのです」
ハリー・ウィンストンは規律と自由という、相反する要素のなかで創造性を広げるのだ。
HW オーシャン|ダイナミックな構造美から生みだされる時を存分に楽しむ
左:HW オーシャン・バイレトログラード オートマティック 42㎜
秒針と曜日のダブルレトログラード針を配置。ケースとダイヤル、ストラップのバックルに計367個(約4.5ct)のダイヤモンドをセットしている。ダイヤル素材には、優しい光沢感があるマザーオブパールを使った。自動巻き、18KWGケース、径42.2㎜。¥11,066,000
中央:HW オーシャン・バイレトログラード パーペチュアルカレンダー オートマティック 42㎜
スポーティなデザインの永久カレンダー。日付と曜日は左右に配置したレトログラードで表現し、12時位置には月と閏年表示が収まる。複雑機構を独自のレイアウトで表現しており、芸術性の高いモデルになっている。自動巻き、18KWGケース、径42.2㎜。¥8,074,000
右:HW オーシャン・レトログラード オートマティック 42㎜
2本の針はそれぞれが9時位置を起点とするレトログラード機構になっており、上半分で時を下半分で分を表示する。センターのブリッジは鉄骨造の橋脚をイメージしており、大胆さと繊細さを巧みに融合させている。自動巻き、18KRGケース、径42.2㎜。¥6,083,000