2023年はすでに「LVMH Watch Week」が開催、3月末には新作時計の見本市「Watches and Wonders Geneva」が控えており、各ブランドの動向に愛好家たちは熱視線を注いでいる。そんななか、先日発表された「トンダ PF シィアリーカレンダー」は、世界初の中国暦のコンプリートカレンダー搭載モデルとして大きな話題を呼んでいる。
究極のマスターピース「トンダ PF シィアリーカレンダー」
高級時計界の新たなるリーディングブランド、パルミジャーニ・フルリエ。1996年に、"神の手を持つ天才時計師"とも呼ばれるミシェル・パルミジャーニ氏によって立ち上げられた同ブランドは、その卓越したウォッチメイキングが瞬く間に評判に。2000年からは名門サプライヤーを次々と傘下に収めることで、現在では世界有数の本格マニュファクチュールへと変貌を遂げている。
パルミジャーニ・フルリエの魅力は、圧倒的な技術力とオリジナリティにある。美しい外装デザイン、職人技の豊富なノウハウと先進技術が凝縮された精巧なムーブメント、革新的でありながらもシンプルな操作で使いやすい機構……。ラグジュアリーウォッチに必要なあらゆる要素が高い次元で融合したその時計は、愛好家たちの心を捉えて離さない。
「トゥールビヨン」「パーペチュアルカレンダー」「ミニッツリピーター」とは、時計好きならば誰もが憧れる世界三大複雑機構だ。常に最高峰の時計作りを目指し、数々の超複雑機構搭載モデルを手がけてきたパルミジャーニ・フルリエだが、なかでもカレンダー機構には圧倒的な熱量を注いでいる。
天体の動きや季節の移り変わりとともに生きる人類は、長い年月をかけて”時を計る術”を編み出し、時代、地域、宗教によってさまざまな暦を発明してきた。つまり、暦とはそれ自体が多様な文明を体現するものなのだ。多くの歴史的な時計の修復を通じて過去の慣習や文化に触れてきたパルミジャーニ氏もまた、そんな暦の神秘に強く魅力されたひとりである。
「暦は文明のレントゲン写真。人間と自然の観察から生まれるものであるため、神秘性を備えています。自然を見渡せば美しい規則に満ちており、創作活動を行う時は自然やそのリズムの中に身を置くと、創造力が刺激されます。自然を観察することで、人は歴史を旅し、文明の発展をたどることができます。暦は自然の季節を理解し、種まきや収穫の時期を計画し、冬の寒さや夏の暑さを予測し対応するために生まれました。暦が存在するのは、自然が育む現象を予測する必要があるからです」
創業者が抱く、暦に対する尽きることのない興味とリスペクト。だからこそ、パルミジャーニ・フルリエにとってカレンダー機構とは特別な意味を持つものなのである。
複雑カレンダー機構の第三作目
グレゴリオ暦のアニュアルカレンダーから始まり、'19年にはイスラム太陰暦のカレンダーを搭載した「トンダ ヒジュラ パーペチュアルカレンダー」を発表。この革命的な時計は業界に衝撃を与え、GPHG(ジュネーブ時計グランプリ)のイノベーション賞を受賞する快挙を成し遂げる。
そして2023年1月、パルミジャーニ・フルリエは世界初の中国暦のコンプリートカレンダー搭載モデル「トンダ PF シィアリーカレンダー」を発表した。
ひと目見ただけでその複雑さには驚かされるが、特に目を引くのは12時位置のサブダイヤルだろう。中国暦は、陰陽五行思想を根底とした「十干(じっかん)」と「十二支」の組み合わせで年号を考える。そのパターンは実に60通りにもおよび、このサブダイヤルは外側に年の名前、中央に十二支の動物、内側に五行説の元素と陰/陽(色で区別)を配置することで、そのすべてのパターンを表示可能としているのだ。ちなみにこの写真の針は2023年の今年、癸卯(みずのとう)の年、兎、陰の木を意味しており、干支の組み合わせの40番目を表示している。
3時位置のカウンターでは月の日数および月の大小、6時位置のカウンターはムーンフェイズ、9時位置のカウンターで月番号と小窓で閏年、外周のサブダイヤルは二十四節気をそれぞれ表示する。
ラグジュアリーなデイリーユースのスポーツウォッチとして、2019年に鮮烈なデビューを飾った「トンダ GT」。そのスポーティーなデザインを踏まえながら、楕円形の「PF」エンブレム、バーリーコーン(麦の穂)パターンのギヨシェを施したダイヤル、控えめなインデックスなど、よりシンプルかつモダンな雰囲気を添えたのが、’21年に誕生した「トンダ PF」である。
「トンダ PF シィアリーカレンダー」がこの「トンダ PF」のエレガントなスタイルはそのままに、中国暦を構成する複雑な要素を”完璧”に搭載し機能させているのは、まさに驚くべき偉業だと言ってもいいだろう。
「カレンダーは文明を映す鏡であるため、時計をつくる上でも非常に魅力的なコンプリケーションなのです」(ミシェル・パルミジャーニ氏)
暦という悠久の時を腕元で感じながら、人間の営みや文明に思いを馳せる。まさにロマンに満ちたマスターピースだ。
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パルミジャーニ・フルリエ pfd.japan@parmigiani.com