名門時計ブランド、オーデマ ピゲのアイコンである「ロイヤル オーク」が、今年50周年を迎えた。かなり入手困難なこの時計は、いかにして傑作となったのか? そこには革命的なアイデアと、理想を形にするための優れた技巧が隠れていた。
時に“想い”を巡らせ、触れる
どれだけヒットした商品でも、50年も続くことは、まれなことである。ましてや嗜好性の高い高級時計の世界で、そのスタイルを保ち続けるのは容易ではない。
オーデマ ピゲの「ロイヤル オーク」は、その稀有な一例だ。力強い八角形ベゼルや方向までデザインのひとつとしたビスなど、アイコニックなデザインはたくさんあり、しかも誕生から50年たった現在でも不変でまったく古臭さを感じない。薄型ケースでつけやすいだけでなく、高級感があってスポーティ。シーンを問わない普遍性は、まさに高級時計を代表する歴史的傑作だ。
しかしあまりにも、製作工程が難しくて量産が難しいというのが頭痛の種でもある。そもそも1970年代初頭にプロトタイプを作る時点で、当時の工作技術ではステンレススチールを使用して、理想の形に加工することが難しく、もっと柔らかなホワイトゴールドを使用したという。
もちろん現在の工作機械はもっと進化しているが、パーツの面にヘアラインやポリッシュの仕上げを行うことで立体感を表現し、メリハリのある輝きを作りだす仕上げは今も難度は変わらない。ケースとブレスレットは製造だけでも約5時間。さらに162の工程があるという仕上げ作業にも同等の時間がかかるので、ひとつの時計の外装を作るだけでも、最低でも10時間もの時間を要する。さらに「タペストリー」と呼ばれるダイヤル装飾もハイレベル。この模様は古いギヨシェマシンによって、ひと筋ずつ彫られているだけでなく、光を綺麗に反射させるために台形型に。とにかく手の込んだケースやブレスレット、ダイヤルを作っているため、ロイヤル オークを量産することは難しい。しかしオーデマ ピゲは、工程を簡略化することは選ばず、あくまでも理想を追い求める。そのため、常に品薄状態になるのだ。
この状況を鑑みるに、今後もロイヤル オークを手に入れることは変わらず難しいであろうし、残念ながら簡単には解消されないだろう。しかし、スタイルが変わらないということは、「今買わないとダメだ」と焦る必要はないのかもしれない。ロイヤル オークの世界を知り、価値を学び、憧れ、いつの日か手に入るその日を待つ……。それもまた、時計の楽しみ方のひとつではないだろうか。
天才デザイナーが手がけた革命的なスポーツウォッチ
ロイヤル オーク
1972年製の初代モデル。天才時計デザイナーであるジェラルド・ジェンタがデザインを担当し、幼少期に見た潜水士のヘルメットから着想を得た八角形のベゼルとそれを固定するビスが特徴。当時としては異例の39mmという大型ケースで、細部の仕上げも丁寧かつ精密であったため、ゴールドウォッチより高価だった。
50年の積み重ねのなかで不変の個性と進化する細部
ロイヤル オーク オートマティック
アイコニックなスタイルはそのままに、ロゴやブレスレットなどのディテールの熟成を進めた、50年目のロイヤル オーク。ケース径は前作同様37mmだが、ムーブメントは最新型のCal.5900を搭載。自動巻き、SSケース、径37mm。¥2,805,000
名門時計ブランド オーデマ ピゲの輝かしい軌跡
1875 技巧派の時計職人が小さな時計工房を開く
スイスのジュウ渓谷に位置するル・ブラッシュの街で、1875年に創業。創業者はジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲ。高度な時計技術が広く認められる。
1970 ロイヤル オークのプロジェクト、始動
イタリア市場の要請を受け、画期的なスティールウォッチの開発をスタート。デザインはジェラルド・ジェンタに依頼。モデル名は英国艦艇「ロイヤル・オーク」に由来する。
1972 「ロイヤル オーク」衝撃のデビューを果たす
1972年4月15日に発表。そのスタイルとデザイン、そして価格で衝撃を与えた。ちなみにケースのデザインや防水性などの特許は、申請から約2年を要してようやく受理された。
1976 女性のためのロイヤル オーク誕生
1973年にロイヤル オークのレディスモデルの開発がスタート。ジャクリーン・ディエミをデザイナーに迎え、武骨なデザインとフェミニンな雰囲気の融合を目指した。
1977 ゴールドケースでリッチな進化を果たす
当初の“ステンレススチールケース”というアイデンティティを敢えて打ち壊し、ゴールドケース&ブレスレットのラグジュアリーモデルを発売。これまた人気モデルとなった。
1993 スポーティな“オフショア”スタート
ロイヤル オーク20周年の節目に、大型ケース&防水のスポーティなコンセプトを掲げた「ロイヤル オーク オフショア」がスタート。デザイナーは、エマニュエル・ギュエだ。
2002 挑戦的なスタイルの超複雑時計を製作
誕生30年の節目に、得意とする超複雑機構の技術を生かした、未来的なデザインの「ロイヤル オーク コンセプト」がスタート。人気を集めるコレクションへと成長している。
2022 正常進化こそがブランドの信念
サイズ変更に留めた40周年に引き続き、50周年となった今年もスタイルは変えず、ディテールの熟成に力を注ぐ。マスターピースとして、さらに人気が高まることは間違いない。
入手困難の理由は緻密な製造工程にあり
オーデマ ピゲは創業以来一貫して、スイスのル・ブラッシュにある工房で時計を製造している。その多くは熟練職人による手作業である。だから生産本数を増やすことは難しい。それは隠しようもない事実なのだ。
歴史に触れる体感型エキシビション
時計は社会生活や文化、テクノロジーなど、さまざまな要素と密接に関係している。つまり時計を知るということは、教養を高めることでもある。このエキシビションは、ロイヤル オークの歩みを学び、その価値を知るという知的な経験となるだろう。
ロイヤル オーク 時を刻んだ50年50 Years of Royal Oak
誕生50周年を記念し、“見て、触れて、学ぶ”をテーマとしたエキシビションを開催。1972年発表当時のモデルなどの希少なヴィンテージモデルやデザイン画、技術的な資料なども展示。「ロイヤル オーク クイズ」や記念撮影のフォトコーナーなど、楽しく学べるような趣向を凝らしている。
会期:~2022年6月5日(日)
会場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー3(東京ミッドタウン ミッドタウン・ガーデン)
休館日:会期中無休
開館時間:11:00〜19:30(19:00最終受付)
入場料:無料(事前予約推奨)
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問い合わせ
オーデマ ピゲ ジャパン TEL:03-6830-0789
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