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2021.11.09

機能美、資産価値、所有する快楽…リシャール・ミルはまさに、アートだ。

素材とメカニズムを組み合わせ、工業的な美しさを極めた作品。それが「リシャール・ミル」の時計である。この時計は、所有する人たちに喜びを与えてくれる存在であり、それゆえ「アート」と称される。その魅力を紐解いていきたい。

リシャール・ミルはまさに、アートだ。

膨大な時間を費やして作るリシャール・ミルの時計は最高の芸術品です

どの世界にも、カリスマ的な魅力を持つ人物は存在する。時計界において、リシャール・ミル氏ほど周囲を魅了する人物はいないだろう。多忙な展示会期間であっても、笑顔を絶やさず、友人を見つければ必ずハグ。取材陣に対しては、ジョークを交えながら、熱心に自分のビジョンを語り続ける。クラシックカーやレーシングカーのコレクターでもある趣味人の彼は、時計業界や宝飾業界でキャリアを積んだのち、2001年に自身の名を冠した時計ブランド「リシャール・ミル」を立ち上げることになる。

「私は大学でマーケティングを学び、時計の世界に入りました。なぜなら、時計という小さな世界とその技術は、私にとってチャレンジングだと思ったから。時計作りは、自身を常に高めてくれるのです。私は技術者ではありませんが、精巧な技術や形状の美しさ、あるいはつけ心地といったことを追求することが好きでした。リシャール・ミルのコンセプトは、“手首につけるレーシングマシン”。航空、自動車、時計に対する私自身の情熱を、すべて注ぎこんだブランドなのです」

アートイベント「Desert X 2021」

リシャール・ミルは現代アートやアーティストのサポートも積極的に行っている。こちらは南カリフォルニアの砂漠地帯で開催されたアートイベント「Desert X 2021」の会場。

’01年にファーストモデルの「RM 001 トゥールビヨン」を発表したが、必ずしもいい反応ではなかった。スポーツウォッチに繊細なトゥールビヨンを組みこむこと自体が突飛であり、しかも当時の時計市場にあったトゥールビヨンウォッチよりもかなり高価であったからだ。

「最初の時計は、思いのままにデザインしました。世間がどう反応するかは考えてもいませんでした。私が実現したかったのは、“自分だけのための時計を作る”ことだったのかもしれません。私の頭にあったすべてのビジョンを詰めこんだ時計であり、世間の反応などまったく気にしませんでした。むしろゼロから始めたブランドですから、『正統性』を証明する必要があった。そこにはさまざまな基準で完璧でなければならず、特に技術面が重要でしたね」

クラシックカーイベント「ル・マン クラシック」

ブルース・マクラーレンがドライブしたF1マシンなどを所有するミル氏。リシャール・ミルでは、世界最高峰のクラシックカーイベント「ル・マン クラシック」のタイトルスポンサーも務めている。

遊び心こそが真のラグジュアリー

ミル氏は「リシャール・ミル」に正統性を与えるには、信頼できる技術が必要だと考え、多くの複雑機構を開発してきた時計業界の超名門時計工房「オーデマ ピゲ ルノー・エ・パピ(現オーデマ ピゲ ル・ロックル)」に協力を仰いだ。そして、“既成概念を破壊したい”とリクエストし、ケース、ダイヤル、ムーブメントが美しく調和する時計というコンセプトを伝えた。

しかも繊細なトゥールビヨン機構でありながら、床に落としても故障せず動き続けるというタフネスさを要求。開発には2年を要し、さらにプロトタイプが完成してからも、1年かけて改良を重ねた。現在まで、ミル氏は時計作りにいっさいの妥協を許していない。彼は完璧主義者なのだ。

レースに参戦

ミル氏自身がハンドルを握り、レースに参戦することもある。

「人間工学に基づき、最高の技術を用い、快適に着用できる。その完璧さを追求することが最も大事なことです。細かな所も最後までやり遂げる。それはとても重要です。しかしそんな真面目さの一方で、リシャール・ミルは、遊び心に溢れたブランドでもある。それこそが“ラグジュアリー”なのです。ラグジュアリーは難解であってはいけないし、無駄が多すぎてもいけません。リシャール・ミルは、時計の理想像でしょう。なぜなら私たちは、時計に対するあらゆる要求や欲求、願望に応えているから。例えばクルマのブランドにも、レーシングカー、クーペ、SUVなど目的によってさまざまな形があるように、私たちの時計にも多様なモデルがあります。アスリートのように薄さや軽さを求める人がいたら、それにも応えます。ひと目見て、その構造や外形からリシャール・ミルとわかるアイコニックな一貫性を持っていながら、さまざまな要求にも応えている。だから人々は、私たちの時計に幸福を見いだすのです」

現代美術館「パレ・ド・ト-キョー」

リシャール・ミルでは、パリにある現代美術館「パレ・ド・ト-キョー」のパートナーにも。

時計愛好家は、複数の時計をシーンに合わせて使い分けて楽しむ。しかしリシャール・ミルを所有すると、こればかりになってしまうという話をよく聞く。それは身につけること自体が特別な体験になるからだ。

「時間を見るだけなら、携帯電話でも十分です。しかし人々は時計を選ぶ。それは、時計が喜びを与えてくれるものであるからでしょう。しかも私たちは、ひとつひとつのパーツを作るのに、膨大な時間を費やしています。リシャール・ミルは究極の技術や芸術性、そして正確性などの要求に応えた時計です。つまり、作り手の哲学や情熱が形になったものであり、いうなればアート作品なのです」

フリーズ・アートフェア

ロンドンやニューヨークで開催されている「フリーズ・アートフェア」ともパートナーシップを結び、出展も行う。時計自体がアート作品だとメッセージを発信している。

ミル氏は、このブランドがピカソの作品のようになってほしいと思っている。彼の作品のように愛され、そして喜びを与える存在になりたい。そのためには今まで以上に、妥協なき時計作りに邁進するしかない。その情熱がリシャール・ミルをさらに魅力的にするのだ。

 

Richard Mille

CEO
Richard Mille
1951年フランス生まれ。時計ブランドや高級宝飾ブランドを経て、2001年に時計ブランド「リシャール・ミル」を設立。自らを“ウォッチコンセプター”と称し、複雑で美しく機能的な時計を作り続ける。自動車愛好家でもあり、多くのクラシックカーを所有する趣味人。

リシャールミルジャパン TEL 03-5511-1155

TEXT=篠田哲生

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