ステイホームが基本になり、会食もパーティも、海外旅行もなくなった。新時代のルールではあるが、少々息苦しいと感じてしまうのは仕方がないもの。だからこそ2021年は、インパクトのある高級時計で腕元から運気を巡らそうじゃないか! 責任ある大人がさり気なく楽しむ、脱“自制”な遊び方になる。
時計ジャーナリスト篠田哲生が解説!
スイス時計協会が発表した2020年の時計輸出レポートには、惨憺(さんたん)たる数字が並んでいる。日本や欧州各国などの主要マーケットは、軒並み前年比マイナス20%以上。もちろんこれはCOVID-19の影響なのだが、だからといって暗黒時代がやってくると嘆くのは間違っている。いち早くコロナ禍を脱したとされている中国では、なんと前年比+20%という強烈な伸長率を見せている。つまり反動が時計消費に表れているのだ。
時勢が落ち着いたとしても、以前と同じように夜の街で豪遊したり海外旅行に行ったりするのは当面先になるだろう。しかしそれでも、自分のモチベーションを高めるための消費は必要だ。そのような消費者マインドが3ケタ万円以上の高級時計購入を後押ししているのである。
そういった雰囲気が、’21年の新作時計からも感じられる。この1年の鬱憤(うっぷん)を晴らすかのような、テンション高めのスペシャルモデルが目立つのだ。
節度ある行動が求められる現在、せめて時計くらいは脱“自制”で楽しみたい。個性的な時計を腕元にして気分とツキを盛り上げ、新しい時代を軽やかに切り拓こうではないか。
HUBLOT/クラシック・フュージョン タカシムラカミ オールブラック
“ウブロ×アート”驚愕の村上 隆 最新モデル
現代アートの世界的スター村上 隆とウブロがコラボ。彼の作品の代表的モチーフである“お花”をダイヤル前面に大胆にセットし、しかもボールベアリングによって勢いよく花びらを回転させる。
さらにブラックダイヤモンドをあしらい、オールブラックというウブロらしいスタイルが完成。ラグジュアリーさとモダンな感性が見事にフュージョンした、眺めているだけでワクワクする時計だ。
A. LANGE & SÖHNE/サクソニア・フラッハ(ブラックゴールドストーンダイヤル)
文字盤に封じこめた煌(きら)めく星空
薄型のエレガントウォッチは、極限までそぎ落とした端正さが魅力。さらにその端正な美のなかにも無限の広がりを演出している。
ダイヤルに用いられる「ゴールドスト-ン」とは、銅の成分を含んだガラスの一種で、深いブラックのなかに小さな金属結晶がキラキラと輝く素材。その姿はまるで夜空に輝く星のよう。残念ながら本作は発表と同時に即完売。発売中のブルーダイヤルでその魅力を味わいたい。
RICHARD MILLE/RM 65-01オートマティック スプリットセコンド クロノグラフ
これもまた新しい時計の“進化”である
5年の歳月をかけて開発したスプリットセコンドクロノグラフで、ムーブメントはスイスの実力派ヴォーシェ・マニュファクチュール・フルリエとの共同開発。毎時36000振動のハイビート仕様なので、1/10秒の計測も可能だ。
カーボンTPT®製のケースは軽くて頑強。時計の機能によって文字盤、プッシャーの色が統一されている。600を超えるパーツを使う複雑時計でありながら、日常使いができる。
H. MOSER & CIE./エンデバー・コンセプト ミニッツリピーター トゥールビヨン
“静と動”からなる表現を優雅に美しく仕上げる
時計機構の最高峰であるミニッツリピーターは、そのメカニズムをアピールしがちである。しかしそれはH.モーザーの美意識に反する行為。
極めて複雑な機構であっても、あくまでもさり気なくダイヤル側にハンマーとゴングのみが見える。そして6時位置には、踊るように回るフライングトゥールビヨン。静かで激しく、美しい時計である。
ROGER DUBUIS/エクスカリバー スケルトンダブルフライングトゥールビヨン
超複雑機構をダブル搭載したインパクトウォッチ
ひとつだけでもすごいのに、それをダブルで搭載してしまうダブルフライングトゥールビヨンは、ロジェ・デュブイが得意の超複雑機構。その技術と美的表現で独自の世界を作り上げてきた。
今年はこの機構がブラッシュアップ。トゥールビヨン部分のパーツを軽量なチタンなどに変更し、連続駆動時間を72時間に伸ばすなど進化を遂げた。
BVLGARI/オクト ローマ カリヨン トゥールビヨン
イタリアの芸術を時計機構で表現する
ラグジュアリーでエレガントな印象の強いブルガリだが、実はハイコンプリケーションも得意としている。
このモデルは、3つのハンマー&ゴングを使って、現在時刻を音で奏でる“カリヨン”タイプのミニッツリピーター。オペラの本場として名高いイタリアの音にまつわる文化を、マット仕上げのブラックケースでモダンに表現している。
BLANCPAIN/トラディショナル チャイニーズ カレンダー
不思議な暦の世界に工芸技術を加える
太陰太陽暦に準じた“中国の暦”を表示する、高度なパーペチュアルカレンダーウォッチ。
五行や十干といった独自の表示を加えるほか、ダイヤル外側のアラビア数字で通常のグレゴリオ暦のカレンダー表示も行うため、日常の使い勝手も損なわれない。ダイヤル素材は美しいグラン・フー エナメルなので、全体的にレトロな上品さがある。