放送作家、NSC(吉本総合芸能学院)10年連続人気1位であり、「令和ロマン」「エバース」「ヨネダ2000」をはじめ、多くの教え子を輩出した桝本壮志のコラム。

「私の職場には、フキハラ(不機嫌ハラスメント)の上司がいて困っています。いっぽう、部下にフキハラと言われる恐怖も感じています。桝本さんは、昨今のフキハラについてどう思っていますか?」という質問をいただきました。
また新たなハラスメントが生まれましたね。チャッピーによると、以下のような人が「不機嫌ハラスメント」に該当するのだそうです。
- 挨拶を無視する、話しかけても返事をしない
- 何度も大きいため息をつく、舌打ちをする
- ドアを強く閉める、キーボードを強く叩く
- 周囲が気を使って機嫌を取るような状況をつくる
なるほど、これをされると部下はたまったもんじゃない。企業に対策義務が課された、マタハラ(マタニティ・ハラスメント)、イクハラ(育児介護ハラスメント)のような流れが必要でしょう――と、言うのは簡単ですが、果たしてそれでいいのでしょうか。
仮にフキハラ社員にペナルティを与え、淘汰していくと、75%の人が「職場にフキハラをする人がいる」というデータもあるそうなので、ほとんどの人が「退場」となります。
風通しはよくなりそうだけど、業績はどうか? 会社そのものを弱体化させ、自分の居場所や給金を失う可能性はないか? 虫の目だけでなく鳥の目で見ることも必要です。
そこで今回は、何かと注目されている「フキハラ」について、一緒に思考を深めてみたいと思います。
僕はフキハラ講師でした
「みなさんが静かになるまで、2分かかりました」――しかめっ面の学校の先生にそう言われた経験はありませんか?
フキハラは良いことではありません。しかし、多くの日本人は、にわかに黙り込み、ため息をつく先生の気配を感じて姿勢を正すといったお決まりの教育を受けてきました。
この先生の行為は、前述の定義によるとフキハラに該当します。僕も似たようなことをしたことがあるのでフキハラ講師です。
義務教育期の先生、部活の監督、親族の怖い伯父さん、目上の人の「不機嫌な振る舞いを察して気づく、気づかされる」が沁み込み、育ってきた私たちの社会では、職場の一個人を指して「フキハラだ!人として間違っているぞ!」と完全悪にはできないのではないか?
もしフキハラを撲滅するのなら、100年くらいの国家計画で教育から考えないといけないのではないか? 日本人の美徳の一つ「察する力」に影響はでないか? など一人一人が思考を深めてみる機会ではないかと考えています。
また、相談者さんのように「いつか部下にフキハラと言われる怖さ」を考えていくことも大切な視点です。
肩こりを知らなかった欧米人が、「肩こり」という言葉を知ったら肩がこりはじめた、なんて話を聞きますが、言語化された事象はパワーを持ちます。
いまはフキハラ上司を指さす立場でも、いつかは自分が指されるポジションになる。しかも、いまを生きる私たちが声を上げれば上げるほど将来はもっと厳しくなる。そういった視座をもって議論に参加していかなければいけませんよね。
不機嫌は有給休暇と同じ
では、会社や私たちはフキハラにどのように対処していけばいいのでしょう?
30年以上、さまざまな職場で働いてきた僕の経験では、フキハラは「されるもので、するもの」だという感覚です。
若手のときはされたし、後輩ができるとやってしまっていた。これを書きながら謝りたい人の顔も浮かびます。
この「される・する」は働いているかぎり続きます。すでに述べたように、芸人学校の講師業では「不機嫌を装い、察してもらう」こともありました。
また、ネタの講評(いわゆる「ダメ出し」)をしているとき、仏頂面をして不機嫌になり、こちらの話をまともに聞いてくれない生徒もそれなりにいました。
そうした知見から考えるフキハラへの向き合いかたは、2つのステップを踏む思考です。
ステップ①――ポジションや年齢に関係なく「誰にだって不機嫌になることはある」を前提にして、職場の成員が「有給休暇のような持ち回り」の感覚で、「誰かの不機嫌」を捉えていくこと。
ステップ②――有休はいいけど、過度に休む人は迷惑になるように「過度に不機嫌な人は迷惑」であること。

1975年広島県生まれ。放送作家として多数の番組を担当。タレント養成所・吉本総合芸能学院(NSC)講師。「令和ロマン」をはじめ、教え子は1万人以上。新著『時間と自信を奪う人とは距離を置く』が絶賛発売中! 桝本壮志へのお悩み相談はコチラまで。
ここで大切なのは、あくまで持ち回りなので、誰であっても数回の不機嫌は「お互い様のバッファ」を取り入れること。
その上で、上限を超える不機嫌を発動する人には、しかるべきペナルティを課していくことが必要だと考えています。
では、また来週、別のテーマでお逢いしましょう。

