PERSON

2026.10.12

法律婚をしたドリアン・ロロブリジーダ×トランスジェンダー男性、結婚・夫婦・家族という奇跡…

Netflixの恋愛リアリティショー『ボーイフレンド』のMCでも話題のドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダ。元営業マンであり、メディアでは素顔も披露する。この男は一体何者なのか。全4回のインタビューで、その半生と素顔に迫る。最終回は、結婚と家族のカタチを聞く。#その他の記事

法律婚をしたドリアン・ロロブリジーダ×トランスジェンダー男性、結婚・夫婦の秘訣・家族という奇跡…

結婚とは何か。法律婚を選んだふたり

ドラァグクイーン、ドリアン・ロロブリジーダこと、大竹正輝41歳は既婚者である。

ゲイでありながら、法律に認められた「法律婚」をしているという状態は非常に稀であろう。相手は14歳年下のトランスジェンダー男性だ。

「彼の性自認は男性で、且つ“同性”である男性が好き。ただ、戸籍上は女性です。私の性自認も男性で、男性が好き。戸籍上も男性です。私は彼のことを男性として愛していますが、戸籍上は彼が女性、私が男性なので、法律婚ができたんです」

何をしている時が一番幸せか、という問いにドリアン氏は迷いなく「彼の笑顔を見た時」と答える。出会ってから6年目。幸せな生活を送っているが、それでも時々複雑な気持ちになる。

「30年、40年と連れ添っている同性のカップルが結婚できないのに、私たちは結婚できる。その状況は、やっぱりフェアじゃないと思うんです」

結婚とは何か。なぜ結婚するのか。結婚によって、何が変わるのか。ドリアン氏にとって、それは身近で、考え続けてきた問いでもある。

「結婚に伴うさまざまな権利や保障について、異性カップルよりも意識する機会は多いかもしれませんね。結婚ってなんだろう、結婚すると何が起きるんだろう、ということを、私たちはすごく考えざるを得ない立場にいるので」

では、結婚したふたりが、日々の関係を大切にするために必要なことは何だろうか。

「『お互い様』ということと、『他人だぞ』と思うことですね。自分が相手に思うこともあるでしょうけれど、相手だって私にいろいろと思うことがあって、お互い様。それも含めてもともと他人だった人が家族として一緒にいてくれる。そこに感謝していかなければなりません」

大竹正輝
大竹正輝/Masaki Otake
1984年東京都生まれ。2006年にドラァグクイーンとしてデビュー。会社員との両立を経て、2020年に独立。Netflixの恋愛リアリティショー『ボーイフレンド』のMCを務めるほか、映画『エゴイスト』(2023年)に出演するなど、歌手・俳優としても活躍。2026年10月には札幌・大阪・東京で活動20周年記念公演「The Entertainment!! 20th Anniversary Special」を開催。12月25日公開の映画『BYE BYE LOVE 探偵はBARにいる』にも出演する。年末にかけて初のソロミニアルバムをリリースし、2027年には同作を携えた全国ツアーを予定している。

あくまで他人であり、そんなふたりが家族になれた奇跡。

結婚生活が長くなれば、お互いを思いやることもおざなりになりがちだ。それでも、もともとは他人だったからこそ、言葉を尽くすことを大切にしている。

「『わかって』じゃなくて、ちゃんと言葉にして、言葉を尽くしてコミュニケーションを取り続けないといけないんだと思います。それは、一緒にいる間はずっと必要なんでしょうね。『わかって』というのは、いろいろなものが壊れていく第一歩のような気がするんです」

伝えるのは、不満や要望だけではない。「大切に思っているよ」「今、幸せだよ」という気持ちも、言葉にする。

「もちろん、心がけているだけで、できていないこともいくらでもあると思うんです。でも、そうありたいとは常に思っていますね」 

疲れている時には、話したくない、もう少し寝たい。そんな気持ちを、何も言わなくても相手に察してほしい。そんなふうに思うことはないのだろうか。

「なら『今日はもう、スイッチをオフにするね』というひと言があれば、『ああ、オフにしているのね』と思えるでしょう。でも、突然無視されたら『何だよ』となってしまう。そのひと言を、お互いに言えればいいですよね」

大竹正輝

相手がおじいちゃんになっていく、その様子が見られる喜び

ふたりのこれからのことは、ぼんやりとだが思い描いている。

「異性愛者の方は結婚して子どもを産んで、家を建ててとか、子どもがいくつになってとか、人生のマイルストーンがあると思うんですけど、我々はそんなにない。いつかどこかに家でも建てられたら嬉しいなってくらいかな。

あとはドラァグクイーンとしての需要がなくなったら、どっかでふたり、ちっちゃい喫茶店でもやって、ひっそりと暮らしていけたらいいな。で、自分のほうが先に死にたい。彼は14歳年下だから、その日までなんとか若く健康でいて、彼の気を引き留めておかないと(笑)。

結婚生活の秘訣なんて偉そうなことを語りましたが、結局彼の顔がタイプっていうのが一番なんです。どんな顔もカッコいいし、おじいちゃんになっていく様子が見られるのも最高!」

ドリアン・ロロブリジーダ

家族に訪れた、もうひとつの衝撃

一方で、生まれ育った家庭では、自身がゲイであること、ドラァグクイーンであることは、ついぞ自分からは言い出せなかった。

「母には言えないまま、亡くなってしまいました。でもちゃんとコミュニケーションをとっていたし気がついていたと思います。父とふたりの兄には……2016年頃、ネットに上がっている自分の写真を見られてバレました(笑)」

父親も兄も相当に驚いたそうだが、その驚きが収まらないうちに、家族にはもうひとつ、大きな出来事があった。

父の再婚である。

「相手は私のひとつ年上の、外国の方なんです。さらに子どももできて。私はずっと三男坊の末っ子だったんですけれど、お兄ちゃんになったんですよ。33歳下のきょうだいがいるんです。親父、やるなぁって(笑)。

私のことでいろいろ話している時に、『それはそうと、親父はなんだ』となって。自分と親父が『まぁまぁ、いろんなことがあるわな』という側になって、多少、共闘したんですよね。驚きが重なって、お互いのインパクトが薄れるかなと(笑)。兄貴たちがとにかく一番驚いたでしょうね」

ドリアン・ロロブリジーダ

病気の母を支え、最期を見送った父の姿をドリアン氏は知っている。だからこそ、今はそれぞれが幸せであってほしいと願っている。

「自分の性格は基本的に母から受け継いだものだと思っているんですけれど、やる時は思いっきりやる、そこは親父に似ていたのかなぁ」

家族でいられる、その時間が奇跡であることを、ドリアン氏はよく知っている。その喜びを重ねながら、ドリアン氏は自分たちなりの家族のかたちを育んでいく。

TEXT=安井桃子

PHOTOGRAPH=干田哲平

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