『北極星 僕たちはどう働くか』が、2026年上半期の売上ランキング入り。エンタメやビジネスの世界において数々の挑戦を仕掛けては新しい世界を見せてくれる人物の筆頭として、常に注目されている西野さん。本連載で、ここ2回ほどジャングリア沖縄における「マーケター」の仕事に疑問を呈してきたが、今回、「経営者」と比較することで、その違和感の根本を明解にする。数字を「作る」or「背負う」? 数字の「発表者」or「当事者」? いずれも前者がマーケターで、後者が経営者だ。今回も、音声メディア「voicy」で配信中の「#西野さんの朝礼」から編集してお届けする。(※今回の記事を音声で楽しみたい方はコチラ)
今回は【マーケターと経営者の違い】というテーマでお話ししたいと思います。
第268回
「売上が伸びた」「来場者が増えた」「満足度が上がった」「ブランド価値が向上した」「営業利益が黒字になった」――経営者にとっては、この一つひとつは「最終回答」じゃない! むしろ、そこからが本番!
「売上が伸びた」「来場者が増えた」「満足度が上がった」「ブランド価値が向上した」「営業利益が黒字になった」――経営者にとっては、この一つひとつは「最終回答」じゃない! むしろ、そこからが本番!

「数字を作る人」と「数字を背負う人」
「マーケター」と「経営者」は、どちらも数字を扱う仕事です。
売上、来場者数、顧客満足度、広告効果、認知度……。
マーケター(コンサルタント)は、数字を見ながら「何を改善すれば成果が出るのか」を考えます。
もちろん、経営者も数字を見ます。
ただ、この両者には大きな違いがあります。
その違いというのは、「数字を作る人」と「数字を背負う人」です。
たとえば、ある施設が「営業利益で初の黒字化に成功しました」と発表したとします。
これだけ聞くと、「黒字化したんだ。すごい」と受け取る人は少なくありません。
ところが、その数字が「減価償却前営業利益」だった場合、話は少し変わってきます。
たとえば、100億円を投じて施設をつくり、それを10年間で償却するとします。
単純化すれば、年間10億円の減価償却費が発生します。
そこで、営業活動によって8億円の利益が出たとしても、「償却前営業利益」では+8億円。
しかし、そこから減価償却費10億円を差し引けば、「営業利益」はマイナス2億円です。
つまり、「償却前では黒字」だけれど、「償却後では赤字」ということは、普通に起こり得ます。
もちろん、償却前営業利益にも意味があります。
減価償却は、その年に現金が10億円出ていくという意味ではありません。
すでに行った設備投資を、会計上、耐用年数に応じて費用として配分しているものだからです。
だから、償却前の数字を見ることで、「現在の営業活動そのものが、どれくらいの収益力を持っているのか」を見ることはできる。
問題は、その数字だけを見て、「事業が黒字化した」と理解してしまうことです。
経営者は、そこでは終われません。
100億円を投じたのであれば、「その100億円は、最終的にいくらの利益を生むのか?」まで考えなければならない。
さらに、金利はどうするのか。
税金はどうするのか。
設備の修繕費はどうするのか。
数年後の追加投資はどうするのか。
借入金はどう返すのか。
手元のキャッシュは足りるのか。
そして、投じた資本に対して、十分なリターンを生んでいるのか。
経営者は、こうした数字から逃げることができない。
都合の悪い数字まで見る覚悟
僕は、マーケターやコンサルタントが数字を「盛る」と言いたいわけではありません。
むしろ、優秀なマーケターやコンサルタントほど、数字を正確に扱います。
ただし、仕事の構造が違う。
マーケターやコンサルタントは、「この施策によって、この数字を改善しました」と成果を提示することができます。
一方、経営者は、「その結果、会社全体としてどうなったのか」まで問われます。
たとえば、
「来場者数が増えました」は成果です。
「顧客満足度が上がりました」も成果です。
「SNSのエンゲージメントが上がりました」も成果でしょう。
「売上が過去最高になりました」も、もちろん成果です。
ただし、それらを積み上げた結果、会社が儲かっていないのであれば、経営者はそこで立ち止まらなければいけない。
逆に、顧客満足度を上げるために人員を大量投入し、その結果として満足度が上がったとしても、その運営コストによって会社が持続できなくなれば、経営としては別の問題が発生します。
つまり、経営者にとっては、「どの数字が良くなったか」ではなく、「すべての数字を合わせた結果、事業が持続可能なのか」が重要になる。
PLだけではありません。
BSもある。
キャッシュフローもある。
借入もある。
人件費もある。
契約もある。
将来の設備投資もある。
社員の離脱もある。
経営者は、これらを全部引き受けなきゃいけない。
マーケターは「このKPIを改善しました」と言える。
コンサルタントは「この課題を解決しました」と言える。
でも経営者は、「それで会社はどうなったの?」という問いからは逃げられない。
売上が伸びた。
来場者が増えた。
満足度が上がった。
ブランド価値が向上した。
営業利益が黒字になった。
……それらはすべて大切です。
でも、経営者にとっては、それら一つひとつが「最終回答」じゃありません。
むしろ、そこからが本番です。
「その数字をつくるために、いくら使ったのか」
「その数字は、来年も維持できるのか」
「投じた資本に対して、十分なリターンがあるのか」
「会社に現金はいくら残っているのか」
「この事業は、5年後、10年後も続けられるのか」
そこまで見て、初めて経営です。
なので、経営者に必要なのは、「都合のいい数字を見つける能力ではなく、都合の悪い数字まで見る覚悟」です。
経営者という仕事の厳しさは、そこにあります。
数字は、いくらでも切り取れる。
でも、会社の現実は切り取れません。
最終的には、売上も、利益も、キャッシュも、借入も、人件費も、投資も、顧客も、従業員も、全部つながっている。
その全部を引き受けて、会社を守るのが経営者です。
経営者は、数字の発表者ではありません。
数字の当事者です。
そして、その数字の先にいる人たちの生活まで背負っている。
そこが、マーケターやコンサルタントと経営者の、大きな違いなのだと思います。
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下記の都道府県で開催が決まっています。
- 10月15日(木)に広島
- 10月28日(水)に大阪
- 10月29日(木)に青森
- 11月18日(水)に長野
- 11月19日(木)に大阪
- 11月24日(火)に宮崎
- 11月26日(木)に東京
- 11月30日(月)に栃木
- 12月3日(木)に山形
- 12月21日(月)に沖縄
- 2027年1月13日(水)に長崎
私、西野亮廣がマイク一本で1時間半ほど喋る変なイベントです。チケットをお求めの方は、『西野亮廣全国講演会』で検索してみてください。サロンメンバーさんが作ってくださったイイ感じのホームページに飛びますので、そちらから。会場によっては、まだ、チケットを発売してなかったりしますが、そのへんはご容赦ください。

