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2022.11.17

大ブレイクしたプロ2年目のオリックス・宇田川優希の学生時代とは

プロ野球ファンを唸らせるほどの大接戦となった2022年日本シリーズ。オリックス・バファローズが26年ぶりの日本一を決めるカギのひとつとなったのが、シリーズ中大ブレイクを果たしたプロ2年目の宇田川優希だ。今回は、そんな宇田川優希がスターとなる前夜に迫る。連載「スターたちの夜明け前」とは……

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天性の、打ちづらいモーション

パ・リーグ連覇、そして26年ぶりの日本一に輝いたオリックス・バファローズ。エースの山本由伸、主砲の吉田正尚など生え抜き選手の活躍が目立ったが、そんなチームにあってシーズン後半に大ブレイクしたのがプロ入り2年目の宇田川優希だ。

育成3位でのプロ入りながら、2022年7月28日に支配下登録を勝ち取ると、9月以降はセットアッパーに定着。19試合に登板して2勝、3ホールド、防御率0.81という見事な成績を残して見せた。

そして多くの野球ファンにその存在をアピールしたのが日本シリーズだ。7試合中4試合に登板すると、5回2/3を投げて10奪三振、無失点の快投で1勝、2ホールドをマークしたのである。シリーズ終了後には宇田川の個人表彰がなかったことに対する疑問の声も非常に多かった。

そんな宇田川だが、高校時代は全国的には無名の存在で、3年夏も埼玉大会の3回戦で敗れている。所属していた八潮南高校も決して強豪というわけではない。そこから仙台大へ進むことになったのは、東京でも屈指の強豪である帝京高校との練習試合がきっかけだったという。

当時コーチだった金田優哉監督が宇田川のピッチングを目に留め、以前から親交のあった仙台大の森本吉謙監督にその存在を伝えたとのことだった。もし八潮南が帝京と練習試合をしていなかったら、現在の宇田川の姿はなかった可能性もあっただろう。ちなみに帝京の1学年上でエースだった稲毛田渉(現・NTT東日本)も仙台大に進み、宇田川とともに活躍している。

仙台大に進んだ宇田川は1年春からリーグ戦に登板し、2年春にはリリーフで3勝をマークするなど順調に成長。この頃から大学球界では徐々に名前を知られる存在となっていく。そして初めてそのピッチングを見たのは’19年3月16日に行われた筑波大とのオープン戦だった。

この試合で宇田川は同じく2022年にブレイクした大関友久(ソフトバンク)の後を受けて5点リードの9回から登板。ワンアウトをとった後にツーベースを打たれて走者を背負ったものの、その後の打者2人から連続三振を奪い、しっかりと試合を締めて見せたのだ。まだ肌寒い季節だったにもかかわらずストレートの最速は147キロをマーク。当時のノートにも以下のようなメモが残っている。

「稲毛田、大関と比べても体格は全く引けを取らず、マウンド上で大きく見える。ゆったりとしたモーションで投げることができ、上半身全体の柔軟性が光る。肩の可動域が広く、少し腕が遅れて出てくるため打者はタイミングが取りづらい。肘の位置も高く、真上から腕が振れ、ボールの角度も抜群。(中略)ストレートはコンスタントに140キロ台中盤で、腕を振って投げられるスライダー、フォークも打者の手元で鋭く変化。リーグ戦で三振を多く奪っているのも頷ける」

このオープン戦が行われた後の3年春のリーグ戦では5試合に登板し、防御率0.64をマーク。チームは惜しくも優勝を逃したものの敢闘賞も受賞している。3年秋のリーグ戦が終わった後には大学日本代表候補合宿にも選出され、この頃には2020年のドラフト候補として高い注目を集める存在となっていた。

2023年シーズン新人王となれる素質

しかし、その後の宇田川は決して順風満帆だったわけではない。4年春のシーズンは新型コロナウイルス感染拡大の影響でリーグ戦は中止。秋のリーグ戦でもシーズン序盤は好投していたものの、終盤は調子を落としてアピールすることができず、育成3位という低い評価でのプロ入りとなったのだ。

最後に大学時代の宇田川の投球を見たのは’20年10月13日に行われた東北工大との試合だったが、5回途中まで投げて2失点と大きく崩れたわけではないものの、ストレートの最速は145キロにとどまり、4四球を与えるなど3年時に比べるとかなり物足りない内容だった。プロ入り1年目も二軍でわずかに1試合の登板にとどまっている。

大学時代と比べてフォームの点で大きく変わったのがステップだ。以前は一塁側に大きくずれていたのが、今はホームベースに向かって真っすぐ踏み出せるようになり、そのことで球威も制球もアップしたように見える。もちろん形だけを変えて上手くいくわけではなく、そのフォームでもしっかり腕が振れるように、フィジカル面も強化してきたことは間違いないだろう。

日本シリーズでの大活躍ですっかり主力選手となった印象を受けるが、シーズン中の登板回数は22回1/3であり、来年も新人王の資格を有している。この調子を来年も維持することができれば、2023年の新人王の最有力候補となることは間違いないだろう。

Norifumi Nishio
1979年愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

■連載「スターたちの夜明け前」とは……
どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てる!

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TEXT=西尾典文

PHOTOGRAPH=西尾典文

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