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2022.07.28

控えから記録的投手へ! 200セーブ達成のオリックス・平野佳寿の分岐点

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てる連載【スターたちの夜明け前】。今回は、オリックスの守護神、平野佳寿がスターとなる前夜に迫りたい。【過去の連載記事】

大学時代の平野選手

写真:日刊スポーツ/アフロ

決して目立つ存在ではなかった高校時代

入れ替わりの多いプロ野球の世界で、特に過酷なポジションと言えるのがリリーフ投手である。華々しくデビューしながらも、故障などによって短命に終わる選手が少なくないが、そんななかで長く第一線で活躍している投手の一人がオリックスの守護神、平野佳寿だ。プロ入り5年目の2010年に中継ぎとして台頭すると翌年の'11年には最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。'13年からは抑えに転向して'14年に最多セーブに輝くと、'18年から3年間はメジャーリーグでもプレーしている。'21年オリックスに復帰すると再び抑えに定着。38歳となった’22年のシーズンもここまでリーグトップとなる25セーブをマークし、防御率も1.03と抜群の安定感を見せ、'22年6月2日には史上7人目となる通算200セーブを達成するなど、衰え知らずの活躍を見せているのだ。

しかし、そんな平野は高校時代から有名な選手だったわけではない。京都府立鳥羽高校では1学年上に近澤昌志(元近鉄・楽天)がいたこともあって、2年春から3季連続で甲子園に出場しているが、平野が登板したのは2年春の準決勝、対東海大相模戦だけで、リリーフとして登板して打ちこまれており、チームも敗れている。ちなみに当時のプロフィールは178㎝、62㎏となっており、まだまだ身体が細かったことがよく分かるだろう。2年夏の甲子園は故障でベンチから外れ、最終学年となってもチームのエースは同じ学年の古田大将(元明治安田生命)が務めており、3年春の選抜高校野球では登板することなく甲子園を去っている。

控え投手から、記録的投手へ

ようやく平野の才能が開花したのは京都産業大に進学してからだ。2年から主戦となると、3年時には関西の大学球界を代表する投手と言われるまでに成長したのだ。平野のピッチングを初めて見たのは3年秋のシーズン、'04年9月12日に行われた対大阪商業大戦だった。先発のマウンドに上がった平野は立ち上がりにいきなりスリーベースとシングルヒットを浴びて1点を先制されたものの、その後は尻上がりに調子を上げ、完投勝利をマークしたのだ。とにかく目立ったのがフォームの安定感とボールの回転の良さである。当時のノートにも「真上から腕が振れ、球持ちも長い。上背はあるが、身のこなしが軽く、躍動感も十分。少しクロス気味にステップし、そこから鋭く上半身を回転して投げるためボールの出所も見づらい。(中略)ストレートはアベレージで140キロ前後だがきれいな回転のボールで、コーナーいっぱいに決まるコントロールは見事」などと称賛の言葉が並んでいる。
 
そして全国の舞台で圧倒的な力を見せたのが、翌年春の全日本大学野球選手権だ。'05年6月7日に神宮球場で行われた愛知学院大との試合に登場すると、この試合でも平野は3回にソロホームランで失った1失点のみで完投し、チームを勝利に導いている。この試合を記録したノートにも「左右のコントロールは全くぶれない。真上から腕を振り下ろして投げるストレートは角度、威力ともに文句なし。スピードもコンスタントに140キロ台中盤をマークし、内角へ狙って投げられるのも素晴らしい」と書かれており、前年秋に見た時よりもスピード、コントロールともにレベルアップしていたことをよく覚えている。

結局平野は京都産業大在学中の4年間でリーグ戦通算36勝、404奪三振をマーク。これは関西六大学野球連盟のリーグ記録であり、'22年現在も破られていない。特に大学4年時に見せていたピッチングはエースと呼ぶにふさわしいものだった。高校時代に控え投手だった選手が、大学でここまで成長し、更にプロの世界でも長きにわたって第一線で活躍することができているのは、高校野球で結果を残すことができなかった多くの選手に希望を与えていることは間違いない。そんな補欠を経験した選手の希望の星として、1年でも長く素晴らしいピッチングを見せ続けてくれることを期待したい。

【連載 スターたちの夜明け前はこちら】

Norifumi Nishio
1979年、愛知県生まれ。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。在学中から野球専門誌への寄稿を開始し、大学院修了後もアマチュア野球を中心に年間約300試合を取材。2017年からはスカイAのドラフト中継で解説も務め、noteでの「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも多くの選手やデータを発信している。

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スターたちの夜明け前

どんなスーパースターでも最初からそうだったわけではない。誰にでも雌伏の時期は存在しており、一つの試合やプレーがきっかけとなって才能が花開くというのもスポーツの世界ではよくあることである。そんな選手にとって大きなターニングポイントとなった瞬間にスポットを当てながら、スターとなる前夜とともに紹介していきたいと思う。

TEXT=西尾典文

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