PERSON

2022.04.28

【鳥羽周作】僕は料理の世界でビートルズやサザンオールスターズみたいな「キングオブポップ」になりたい──新刊『本日も、満席御礼。』

TV、書籍、YouTube、SNSなどでレシピを公開し、レストランの枠を超えて「おいしい」を届けている、鳥羽周作シェフの書籍『本日も、満席御礼。』が発売となった。プロサッカー選手になることを諦め先生になり、その後、料理の世界へとギアを変更。31歳で料理の世界へ。数多くの苦境や挫折を乗り越え、一つ星を獲得するスターシェフへ登りつめた、最注目シェフ兼実業家による人生哲学。今回、特別に『本日も、満席御礼。』を抜粋・編集して一部公開!

本日も、満席御礼。

プロと一流の差は「愛」

プロと一流の差は、やっぱり「愛」だと思います。

お客さんへの愛、クライアントへの愛、やっていることに対する愛があるかどうか。

愛があれば、想像力が生まれます。最強の想像力と相手への想いを持ちつつ、最高の技術で仕事をする。それが人を熱狂させるし、喜ばせることができる。もう、そこの差しかないと思うんです。

僕がやりたいのは「究極のクライアントワーク」です。プロとしてすごい人はたくさんいますが、相手を想像して、真の「クライアントワーク」ができる人はあまりいません。クライアントワークと言うと、御用聞きみたいなイメージを抱く人もいます。でも結局「たくさんの人に愛されること」で、長い目で見て起こせる波も返ってくる波も最大になると思うのです。

僕はアーティストになりたいわけではありません。アーティストは一部の人にはものすごく熱狂されます。でも大衆には理解されなかったりします。そうなると分母は広がりません。僕はたくさんの人に愛を配りたいんです。少人数の人に熱狂されるアーティストではなく、最大の愛を持って究極の「クライアントワーク」をしたいんです。

やりたいのは、お金儲けではありません。あくまでも「たくさんの人を幸せにしたい」というのがゴールです。たくさんの人を幸せにするために、手段として50億円なければいけないのなら、50億円を集めるために何かをやる、という順番です。そもそも「50億円を集めること」を目的に仕事をしているわけではないんです。「このビジネスで50億円の売り上げを目指す」ではなく「みんながハッピーになるためには50億円が必要だから50億円集めよう」という話です。

コロナで学んだのは「お金を気にしないことが大切だ」ということでした。

お金よりもお客さんやクライアントを見ているほうが、うまくいくと気づいたんです。sioはこれまでもお金のことを気にせずやってきました。だからありがたいことにたくさんの方に応援していただいています。お客さんのことを考えて突き詰めていったからファンがついた。お金は後からついてくればいいんです。

僕らが目指すのはビートルズです。

最強のポップスを目指す。そのためには愛がないと、おそらく無理です。ビートルズ、日本で言えばサザンオールスターズ。そこを目指しているんです。

ビートルズやサザンが完全に「アーティスト」になったら、ものすごい音楽ができるかもしれません。でも、今みたいに売れていなかった可能性もあります。あのレベルのヒットメーカーはみんな「自分がやりたい音楽」だけではなくて「売れる曲」もつくれるんだと思います。僕がやりたいのもそっちです。僕らは、やっぱり現実で売れたいんです。世の中の人をたくさんハッピーにしたい。だから「クライアントワーク」なんです。

最強のポップスは、満足させなきゃいけないお客さんが多くなります。だから難しいんです。守備範囲が広くなければいけない。アーティストは一点突破でもいいのですが、クライアントワークになるとそうはいきません。フレンチもできて、チャーハンもつくれないといけない。僕はテクニックがすごい「フランス料理界の鬼才」よりも、なんでもおいしくできる料理人でありたいなと思うんです。

ビートルズ、サザンオールスターズはすごく大衆的です。大衆的でありつつも、それぞれ実力や実績がきちんとあって、その世界で頭ひとつ抜けている。そういう人にめっちゃ惹かれるんです。みんなが好きな料理もつくれるし、より上のレベルの料理もできる。僕はそんな料理の世界での「キングオブポップ」になりたいんです。

──鳥羽周作シェフの人生哲学が詰まった『本日も、満席御礼。』のご購入はこちら

 

「本日も、満席御礼。」

『本日も、満席御礼。』
幻冬舎 刊/¥1,500+税
なぜ、鳥羽の店は常に満席なのか? 鳥羽は言う。「ぼくは(食の世界に)選ばれた人間だと思う。待遇があまり良くないと言われる食の世界を変えていきたい。食を通じて、愛を配り続けます。プロと一流の違いは愛の濃さだと思うんです。お客さんへの愛、クライアントへの愛、愛があれば、最高の想像力が生まれるし、プラス最高の技術で仕事をすれば、それが人に幸福をもたらす。もう、そこの差しかない」。2022年4⽉27⽇発売

PHOTOGRAPH=正田真弘(M+W)

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