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2022.03.31

【森重航】「スケート、頑張れ」五輪銅メダルに導いた母の最後の言葉──連載「コロナ禍のアスリート」Vol.48

まだまだ先行きが見えない日々のなかでアスリートはどんな思考を抱き、行動しているのだろうか。本連載「コロナ禍のアスリート」では、スポーツ界に暮らす人物の挑戦や舞台裏の姿を追う。

写真:松尾/アフロスポーツ

自らの想像を超えた充実の一年

望外の結果を得た飛躍のシーズンが幕を閉じた。スピードスケートの森重航(21=専大)は2021-22年シーズンの開幕前までシニアの舞台では無名。昨年10月の全日本距離別選手権で優勝して一躍、注目を浴びた。2月の北京五輪では男子500mで銅メダルを獲得。自らの想像を超えた充実の一年だった。

「一年前の自分からは想像できないシーズンになった。今季は全日本距離別で優勝してから、いい調子をキープできた。W杯で表彰台に立てたこと、33秒台を出せたことが印象に残っている。五輪の舞台で自分の力を出し切れたのは良かった」

2月12日、国家スピードスケート館で実施された北京五輪男子500m。森重は15組中14組に登場した。1回目のスタートはフライング。ミスを繰り返せば失格となる2回目は慎重に飛び出した。100m通過は全体5位の9秒63。得意の残り1周で加速した。34秒49でフィニッシュし、滑り終えた時点で3位。「もうちょっとタイムがほしかった」と微妙な心境だったが、最終組で滑り4位になったカナダ選手を0秒03上回った。

スピードスケート日本男子の五輪メダルは’10年バンクーバー大会で長島圭一郎が銀、加藤条治が銅を獲得して以来、3大会ぶりの快挙だった。18日の男子1000mは課題のラスト1周で失速し、1分9秒47で16位。順位だけ見れば完敗だが、銅メダルとの差はわずか0秒99だった。閉会式ではチームメートに肩車をされて入場。「スピードスケートはあまり注目されていないので、皆に見てほしい気持ちでさせてもらった」と競技発展を願うがゆえのパフォーマンスだったが「そんなに反響はなかった」と苦笑いで振り返る。

スケートに懸ける思いが大きくなった

天に捧げるメダルだった。’19年7月、がんを患っていた母・俊恵さん(享年57)が他界した。幼少時代からサポートを受け、体調の悪い時もレースの応援に駆け付けてくれた存在。同年5月、地元を離れていた森重は母の入院する釧路市内の病院を見舞い「スケートを一番に考えて、最期は来なくていいからね」と伝えられた。7月17日の19歳の誕生日。スマートフォンが鳴った。「スケート、頑張れ」。4日後にこの世を去る母からの最後の言葉だった。

北京五輪のレース当日はホテル出発前にスマホに保存する母の写真に「行ってきます」と語りかけた。

「あの時(母から最後の言葉を贈られた時)からスケートに懸ける思いが大きくなった。成長できた1つの要因かなと思う。五輪で銅メダルという結果を届けられて喜んでいるんじゃないかな」

好成績を収めたのは五輪だけではない。W杯の500mでは10レース中5回表彰台(1位1回、2位2回、3位2回)に上がり、年間の総合ポイントで争う種目別総合で3位に入った。昨年12月のソルトレークシティ大会では高地の高速リンクで33秒99の自己ベストを記録。新浜立也(25=高崎健康福祉大職)、村上右磨(29=高堂建設)に次ぐ日本人3人目の33秒台に突入した。

3月の世界選手権では500mと1000mを2本ずつ滑って争うスプリント部門で総合9位。500mは1回目が5位、2回目は1位、1000mは1回目が20位で2回目が6位だった。1000mは世界との差を見せつけられたが、500mは安定した滑りを披露。急カーブの連続であるショートトラックやローラースケートを練習に取り入れて磨いたコーナーの技術は世界屈指で「自分の強みは100mを過ぎてからのラップ。そこは世界と戦えると感じた」と手応えを得た。

来季の目標は新浜の持つ33秒79の日本記録更新。「500mも1000mも戦えるのがスプリンターだと思っている」と世界と差がある1000mにも力を入れる方針だ。実家は北海道で酪農を営み、森重は8人きょうだいの末っ子。兄5人、姉2人がおり、21歳にして14人の甥姪がいる。オフには家族で温泉旅行を予定しており「まずはゆっくり休みたい」。大家族で過ごす充電期間を経て、’26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への再スタートを切る。

TEXT=木本新也

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