世界中で新型コロナウィルスが猛威を振るう最中、心打たれる数々のドラマが生まれた東京五輪が閉幕。アスリートたちにとって、この大会とはどんな意味を持ったのだろうか。編集部では、大会期間中、“男子競泳界の世界的スター”チャド・レクロー(南アフリカ)にインタビューする機会に恵まれた。
次世代にレガシーを残すためのアスリートとしての姿勢
レクローは、12年ロンドン五輪でマイケル・フェルプスの4連覇を阻止する金メダルに輝き、続く16年リオデジャネイロ五輪でも2つの銀メダルを獲得。29歳で迎えた今大会も優勝候補の一角として期待されたが、残念ながら本来の力を発揮できないままメダルなしに終わった。
「東京オリンピックが開催されるまでの期間、アスリートの誰もが苦しい経験をしたと思うのですが、私もまるでローラーコースターのようなアップダウンの激しい時間を過ごしました…。今回は残念な結果に終わりましたが、3年後のパリ大会に向けて準備をはじめていこうと思います」
結果は出なかった。それでも、たとえ本調子でなくても過酷な世界で戦い続けた意味はあるという。日々のモチベーションについて氏はこう述べる。
「われわれ選手が記録を更新し続けることで大会や競技のレガシーが生まれていく。過去に素晴らしい結果を出せたとしても、そこで満足した時点で選手としての成長は終わってしまうし、競技の進化も止まってしまいます。だからこそ、慢心せずにハングリー精神を持って試合に臨むように心がけなければならないのです」
彼がこれほどまでに記録にこだわるのは、オリンピックのオフィシャルタイムキーパーを務めるオメガと契約しているからなのかもしれない。3度のオリンピックを戦い抜いた両者の間には、家族のような信頼関係が生まれている。
「10年頃前、オメガからオファーをもらった時はとても興奮しました。祖父がオメガの時計を愛用していたことからも繋がりが感じられたし、家族は私がアンバサダーを努めていることを誇りに思ってくれています。多くの期待に応えられる選手であるためにも、これからもっとメダルを増やしていきたい。そしてもうひとつ、南アフリカを代表するアスリートへと成長して、子供たちに夢や希望が与えられるロールモデルになりたい。それは、私が掲げている目の前の目標です」
コロナ禍での強行開催によって、国内では大会の検証は今後も議論され続けていくが、アスリートにとっては大切な時間を刻む場であったことは間違いない。東京での敗北という経験を、3年後のパリでどう生かすのか。競泳界のスターが歩む時間軸を通して、アスリートの視点を垣間見た気がした。
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