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2021.07.18

海洋冒険家・白石康次郎はなぜ、過酷な海上で常に絶好調なのか?

出場者の半数が途中でリタイアし、時には命を落とす者さえ出る世界一過酷なヨットレース「ヴァンデ・グローブ」に参戦。アジア人で初めて完走を成し遂げた白石康次郎の体調管理術を探った。

白石康次郎はなぜ、過酷な海上で常に絶好調なのか?

「どんな過酷な状況でも、地球に感謝し、自然と一体化する気持ちでいたい」と白石。

3ヵ月間無寄港無補給で、世界一周!

世界で最も過酷といわれる外洋ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」。全長60フィートのヨットに単独で乗りこみ、フランスのレ・サーブル・ドロンヌ港を出港。2万6000マイル以上にも及ぶ航程を約3ヵ月かけて帆走し、地球を一周して再びスタート地点へと戻る。出港後の寄港・補給はいっさい認められていないため、どんなトラブルや困難に見舞われても、すべて自分ひとりの力で乗り越えなくてはならない。

9回目を迎えたヴァンデ・グローブ2020に、海洋冒険家・白石康次郎が出場。初出場となった前回大会は途中リタイアに終わったが、今回はアジア人初となる完走を成し遂げた。

「完走が最大の目標でしたので、ゴールの瞬間は心底嬉しかったですね。ああ、やっと夢がかなったな、と。記録は94日21時間32分56秒、参加者33名中16位という成績。スタート直後にメインセールが破損し、修理に1週間かかるというトラブルがありましたが、なんとかひとりで乗り切ることができました。レース後半に追い上げ、ひとつずつ順位を上げていきました」

白石康次郎氏

海上では誰の助けも借りられない。栄養管理や傷の手当て、時には簡単な手術も自分の手で行う。

そう話す白石は、1967年生まれの54歳。決して若いとはいえない年齢に加え、海の上の環境は無慈悲と言いたくなるほどの厳しさ。赤道直下では気温40℃を優に超え、南極付近では寒さに身も心も凍りつく。だが、白石はレース中の3ヵ月間、常に絶好調といえるコンディションを保ち続けた。

「ヴァンデ・グローブは4年に一度の開催。ですから、それまでにどれだけ準備できるかが重要になります。トレーニングは“体幹を鍛える”をテーマに、ほぼ毎日。100キロのベンチプレス、ラットプルダウン、アームカール、バランスボールなどのほか、相撲の四股踏(しこみ)も取り入れています。僕はトレーニングよりも、休むことが苦手。トレーナーから“もっと休め”と怒られます(笑)」

レース中は、食事と睡眠がコンディション維持のカギになる。

「ヨットは積載量が限られているうえ、軽いほど有利になるので、荷物の量を抑える必要があります。食事は水を注いで食べるアルファ米、レトルトカレー、缶詰など。野菜が摂れないため、ビタミンはサプリで補います。それらを1日分ごと袋に小分けして、ヨットに搭載。そもそも僕は小食なので、食料が足りなくなることはありません」

食料は1日ごとに袋詰め

食料は1日ごとに袋詰め。出港直後は船酔いするため、流動食を摂取。

白石いわく、「現代人は食べすぎ」。第一次産業が中心だった昭和の頃とは異なり、「現代の生活で1日3食は多すぎる」とも。

「僕は普段から身体が重いと感じたら、2〜3日食事を抜く。飢餓状態になり脂肪が燃焼し、理想体型に近づいていく。日頃からストイックに生きることで、海上でも日常と同じ感覚で過ごせます」

レース中は、1時間程度の睡眠を数時間おきに繰り返す。天候の急変への備えや進路の確認などのため、長く寝続けられないという事情もあるが、実は短時間睡眠の繰り返しにはメリットもあるという。

「長く寝てしまうと、脳が元の状態に戻るまで時間がかかります。レース中は頭が冴えた状態をキープしたいので、短時間睡眠法が適していますね。意外に思われるかもしれませんが、疲れはすっきりと抜ける。それはビジネスパーソンに通ずると僕は思っていて、長時間働いて一気に休むよりも、数時間動いたら少し休むを繰り返したほうが、疲れは溜まりにくくお薦めです」

体幹中心のトレーニング

レース期間外は体幹中心のトレーニングに励む。

次回のヴァンデ・グローブは’24-’25年の開催。57歳になる白石は、すでに参戦を表明している。

「今回16位でしたので、次の目標はベスト8。絶好調のままレースを迎えられるよう、日々精進していくだけですね」

 

KOJIRO SHIRAISHI
1967年東京都生まれ。26歳で単独無寄港無補給世界一周の史上最年少記録を樹立。2018年、DMG森精機が立ち上げたヨットチーム「DMG MORI SAILING TEAM」に参加。詳しくはこちら

TEXT=川岸 徹

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