師匠か、恩師か、はたまた一生のライバルか。相思相愛ならぬ「相師相愛」ともいえるふたりの姿をご紹介。第59回は、コレクターと作詞家。
ブリキのおもちゃ博物館 館長 北原照久が語る、売野雅勇
ラジオ番組のゲストに来る人から、やたら売野雅勇という名前を聞くことがあったんです。 そんな時、弟みたいに大事にしてる友人が病気になってしまって。たまたまライヴのゲストで来てくれた麻倉未稀さんが歌った「ヒーロー」 が素晴らしかったので、その友人に音源を送ったら奇跡的に病気がよくなっていったんです。
その歌詞を書いた人。これはラジオのゲストに、と思って呼んだら、初めて会った気がしない。昔から知っている不思議な感じなんですよ。 それで、あっという間に、ウリ坊、アニキと呼び合う関係になって。前世は絶対につながって いたんだと思う。夫婦か恋人か親子か愛人か(笑)。
これはウリ坊も同じだったようで、自分のラジオ番組で僕のことを音楽のようだと言ってくれて。ラジオ少年だった頃の憧れであり大好きだったナット・キング・コール、プラターズ、レイ・チャールズに並ぶとまで。生放送で聴いていましたけど、これは本当に嬉しかった。今後も付き合いは続きますよ、ずっと。
好きなものがとにかくよく似ているんです。音楽も、場所も、映画も、クルマも。共通項があり過ぎて。大好きなスメタナの「モルダウ」はウリ坊の毎朝の入浴のお供だったというし、これまた大好きなチェ・ゲバラはウリ坊が芝居を書いていて。こんなことってあるのか、と思う。だいたい、会えないと寂しくなるんですよ。男同士なのにおかしいじゃないですか(笑)。女房としゃべっている時にも、しょっちゅう話題に出てくる。女房もびっくりしてます。
僕が兄のように慕う、50年来の付き合いがある、作曲家の浜圭介さんともつながったようで、一緒に仕事をするんです。この先が楽しみです。
作詞家 売野雅勇が語る、北原照久
大人になったら、友達をつくるのは難しい、とよく言われます。だから、まさか60歳を過ぎてから、こんなことが起こるなんて思いも寄りませんでした。初めて会った時、なんだか懐かしい感じがして。びっくりするくらい、あっという間に仲良くなってしまったんです。こんなことは僕も初めて。しかも、いっぺんに大好きになってしまって(笑)。
カッコよくて明るくて優しくて人間が大きくて。こんな人、見たことがない。人をひと言で気持ちよくしてくれる。それって、できるのは家族くらいじゃないですか。だから本当に肉親みたいなんです。
ブリキのおもちゃの博物館館長を名乗ってますけど、実はあらゆるモノのコレクターなんです。ブリキのおもちゃはわかりやすいだけで、世界的な大コレクターですよ。しかも、儲けるためにやってるんじゃない。後世に残すためにやっている。とんでもない人なんです。
世界の果て、空の果てまでご一緒しましょう。
僕は若い頃、歌謡曲はほとんど聴かなかったんです。アイドルにも関心がなかった。例外的に2曲だけ強く惹かれて。そのひとつが「そして神戸」。作曲したのは、浜圭介さん。なんとアニキとは50年来の付き合いだったんです。これまた、びっくりしてしまって。作詞家として歌謡曲に関わる源になったひとりは、間違いなく浜さんなんです。こんなところでもつながったんです。
実は浜さんとは一緒に仕事をすることにもなりました。僕が作詞で、浜さんが作曲。この夏に発売予定です。アニキとの出会いの物語に、さらなる奥行きがついちゃいましたね(笑)。
Teruhisa Kitahara(右)
1948年生まれ。世界的なコレクターとして知られ、横浜、河口湖、羽田空港第1ターミナルビル、宮城・松島町、東京・京橋にミュージアムとギャラリーを展開。
Masao Urino(左)
1951年生まれ。「涙のリクエスト」 (チェッカーズ)、「2億4千万の瞳」(郷ひろみ)。「め組のひと」(ラッツ&スター)など数々の大ヒット曲を作詞。