1972年の設立以来、一貫して日本(福井県・鯖江)製の高品質なアイウエアを生み出し続ける「EYEVAN」。その眼鏡をかけた熱き男たちを写真家・操上和美が撮り下ろす連載「男を起動させる眼鏡#32」。
PERSON 32
『カンテサンス』オーナーシェフ/岸田周三
「常にプレイヤーとして全力で臨みたい」
「実は眼鏡を選ぶのは初めてなんです。この企画に呼んでいただいて大丈夫でしたか?」
誰もが知るフレンチの名店『カンテサンス』。ミシュラン三つ星を14年にわたって維持するオーナーシェフの岸田周三氏は不安気にそう尋ねた。
「少し乱視があるんですが、視力がすごく悪いわけではないので眼鏡なしでも仕事は問題がなかったんです。でもさすがにそろそろ必要かな、と思っていたところでした」
今回岸田氏が選んだのは、クラシカルなデザインながらチタン製で軽く弾力に富んだ、機能美あふれる逸品。つけ心地のよさは折り紙つきだ。
「印象が大きく変わりにくい、フレームの細いものを選びました。でも、かけてみるといい意味で雰囲気が変わりますね。自分としては意外と似合うな、と思っています(笑)。すごく軽くて、かけていて違和感がありません。今後使っていくのが楽しみです」
日常の中でモノを選ぶ基準は「機能性が高いもの」だという。
「機能性を追求すれば、必然的にシンプルで美しくなるんじゃないか。そう考えています。これは僕の料理にも通じていると思います。フランス料理にしては装飾がとても少ないタイプの料理を作っている人間なので。そういう点で、この眼鏡と相通ずる部分があるんでしょうね」
一朝一夕でそのスタイルにたどり着いたわけではない。作っては考える、手を動かしては思考する、その反復が岸田氏を現在のポジションに押し上げた。
「若い料理人にありがちなんですが、昔はあれこれ構成要素を盛りこみたがる悪癖がありました。そのほうが見た目が美しく感じられるし、"料理を作っている”感覚になれますから。でもひとつ作るたびに『これは本当に正解なのかな』『もっとよくすることはできないのか』と考えていると、いろいろ載っているのが嫌になってきました。そこからどんどん装飾を省いていくうちに、そのほうが自分が伝えたいメッセージがお客さんに伝わりやすくなると気づいたんです」
自身のことを「合理的な人間」と評するその言葉通り、理にかなった道筋から揺るぎない美しさを湛えたひと皿が生みだされている。
「目標を明確に持って、どうやったら実現できるか、いつも考えています。料理を作っていない時でも、何かしら学べることはある。この仕事が好きで、楽しくてやっていることです。常にプレイヤーとして全力で臨むことが、一番正しい姿勢なのかなと思っています」
Shuzo Kishida
1974年愛知県生まれ。高校を卒業後、志摩観光ホテル『ラ・メール』、『カーエム』を経てフランスへ。三つ星店『アストランス』でパスカル・バルボ氏に師事し、スーシェフも務める。2006年に帰国し、『カンテサンス』を開店。’07年以来、現在に至るまで『ミシュランガイド東京』で14年連続三つ星を獲得し続けている。
問い合わせ
EYEVAN Tokyo Gallery TEL:03-3409-1972
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