負債20億から、年商280億へと成長
タンドドン、タンドドンと心と身体を震わせるリズムは驚くほど力強い。鮮やかなスティックさばきでドラムを叩くのは、国内外で飲食店や多業態のレジャー施設を展開するカトープレジャーグループ代表の加藤友康氏だ。
「これまでの人生には、多くのターニングポイントや勝負所がありました。そこでの決断は必ず自分でするし、責任はすべて自分がとる。それはある種、楽しいことなんです」
プロドラマーとしての将来を嘱望(しょくぼう)されていた時期もあるという加藤氏に転機が訪れたのは、22歳の頃。洋装店やレコードレーベルを手がけていた父が亡くなったのを機に、事業を継ぐことになった。
「5人兄弟の3男坊でしたが、家を継ぐのはお前しかいないと病床の父に言われ、それならばと決心しました」
しかし、いざ継いでみると、父の事業は20億円もの負債を抱えていた。「これは命をかけて取り組まなければ、先はない」と腹をくくった。
24歳で開業したおうどん専門店「麺匠の心つくし つるとんたん」が大成功を収めると、その後は破竹の勢いで事業を拡大。宿泊施設の再生と運営、リゾート施設や高級旅館「ふふ」の展開など、すべてのプロジェクトに一貫して責任を持つ「トータルプロデュースシステム」で成功を続け、30年の間に、年商280億円、従業員数約3500名の大企業へと成長させた。
「仕事をするならば、絶対に勝つ。でも、リスクを取らないような楽な勝負はしたくないと思ったんです。成功できなければ、負債も自分が負う。そう決めて、突き進んできました」
責任を負う覚悟があるかどうか。それが勝負の命運を握っているというのだ。
KATO’S TURNING POINT
22歳 20億円の負債とともに、父の事業を継承し、社長に就任する。
24歳 おうどん専門店「つるとんたん」の1号店を大阪宗右衛門町に創業。
30歳 年商30億円達成。さらに多角的に事業を展開していく。
55歳 NPO法人を立ち上げるなど、社会貢献活動を始める。