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2020.05.26

音楽プロデューサー亀田誠治が考えるGood Musicとは?~アニソン編【連載】

新型コロナウイルスの蔓延で休止しているエンタテインメント。やがて再開するときに、どんな音楽が求められるのか。多くの人が楽しめるGood Musicとは――。あらゆるアーティストのサウンドプロデュースに携わり、椎名林檎、平井 堅、いきものがかりなどの音楽を手掛けてきた亀田誠治だが、実はJ-Popだけではなく、歌謡曲のレジェンドやアニメの音楽もプロデュースしている。そんな亀田に演歌やアニソンの魅力を聞いた。

世界で一番ヘヴィメタルなサウンドはアニソン

「2019年に僕は、由紀さおりさんの『BEGINNING ~あなたにとって~』というアルバムをプロデュースさせていただきました。『BEGINNING』はコンポーザーとして、アンジェラ・アキさん、いきものがかりの水野良樹君、ハナレグミなどのさまざまなアーティストに参加してもらっています」

世代を超え、ジャンルの垣根を超えたコラボレーションになった。

「由紀さん自身、ジャンルを超えて音楽を続けてこられました。誰もが知るヒット曲に『夜明けのスキャット』がありますけれど、ポップスの路線のほかにお姉さまの安田祥子さんと活躍されている童謡歌手の路線もある。童謡と聞くと、NHK教育テレビの子ども向けの番組のイメージを持つ方もいるかもしれません。ところが、力のあるお二人が40年近く歌ってきた童謡は、子どもだけではなく、大人にも響きます」

リスナーの世代も超えているのだ。

「僕が10代だったころ、作詞家の阿久悠先生は石川さゆりさんの『津軽海峡・冬景色』から、ピンク・レディー全盛期の『UFO』や『渚のシンドバッド』、Charさんの『気絶するほど悩ましい』、アニメの『宇宙戦艦ヤマト』や『デビルマン』のテーマまで手掛けています。なかにし礼先生は、北島三郎さんの『まつり』、由紀さおりさんの『手紙』をはじめ、美空ひばりさんや矢沢永吉さんの作品を手掛けています。どんなアーティストでもジャンルを問わず手掛けていたわけです。人生の悲哀こもごもを歌った歌は、多くのリスナーの共感を得ていました。ポップスも演歌もヒット曲としては同列だった。そんな日本のポップスの豊潤な時代を僕は通ってきたと思っています。でも、その後、状況はちょっと変わってきちゃっている気がするんですよ。ヘッドフォンで音楽を一人で聴く『孤聴化』が進み、家族みんなで歌番組を観て、そこでさまざまなジャンルの音楽に出合うという習慣がなくなってしまった。そんなジャンルを分断する溝を僕は埋めたい」

亀田もポップスだけではなくアニメーション、劇場版ポケットモンスターの音楽も手掛けている。2013年に『劇場版ポケットモンスター ベストウイッシュ 神速のゲノセクト ミュウツー覚醒』の主題歌「笑顔」をいきものがかりと、”14年に『ポケモン・ザ・ムービーXY 破壊の繭とディアンシー』の主題歌「夜明けの流星群」をSCANDALと、’19年に『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』の主題歌「風といっしょに」を小林幸子と中川翔子のボーカルでプロデュースしている。

「アニメの音楽はポケモンで大きく変わったと思っています。”ビフォア・ポケモン”と”アフター・ポケモン”ではまったく違う。ビフォア・ポケモンはアニメ作品と直結した主題歌が主流でした。リスナーの多くは子どもで、思春期を迎えるとアニメマニアでない限り、自然に卒業する音楽でした。そんななか、元任天堂の田中宏和さんがポケモンで新しいアニソンを育てました。転調を使うなど、それまでのアニソンを進化させ、音楽単体でも成立する作品をつくった。アニソンは、子供たちが思春期を迎え、やがて社会人になっても楽しめるボーダーレスの音楽になったわけです。ポケモンの初期、僕は一人のリスナーとして、ドライブするクルマの中で、子供といっしょに家族みんなで聴いて歌っていました」

アニソンは、亀田のいう世代を超えたボーダーレスの音楽の象徴といえる。

「音楽の魅力は、作品そのものを聴いて楽しめるだけではありません。音楽は、それを聴いていたときの自分の記憶とともに脳に格納されているので、かつての思い出を連れてきてくれます。とくにアニソンは、家族や親子共通の思い出を運んでくる。’19年公開の『ミュウツーの逆襲 EVOLUTION』は1998年に公開された映画のリメイクです。 僕がプロデュースして小林幸子さんとしょこたんに歌ってもらった主題歌『風といっしょに』もリメイク。前作を僕は息子と一緒に劇場で観ているんですよ。そのプロデュースをできたことは幸せな出来事でした。息子にもちょっと自慢できました。個人的には、グラミー賞をもらったくらいの達成感です」

ゲームとも連動するアニソンは、最先端の音楽になった。

「今、世界で一番ヘヴィメタルなサウンドはアニソンといっていいんじゃないでしょうか。ヘヴィメタの最高レベルの演奏技術を持つミュージシャンたちが、アニソンでスーパーテクを披露しています。このようにどの世代にも響くようになったアニソンを通じて、家族で会話が生まれます。それは、音楽のあるべき姿だと感じています」

Seiji Kameda
1964年生まれ。音楽プロデューサー・ベーシスト。これまでに数多くのミュージシャンのプロデュース、アレンジを手がける。2004年に椎名林檎らと東京事変を結成し、ベーシストとして参加(”12 年に解散、’20年に再生を発表)。 “09年、自身初の主催イベント“亀の恩返し”を日本武道館にて開催。’07年の第49回、’15年の第57回日本レコード大賞にて編曲賞を受賞。近年はJ-POPの魅力を解説する音楽教養番組『亀田音楽専門学校(Eテレ)』シリーズが人気を集めた。’19年5月、自身が実行委員長を務めるフリーイベント「日比谷音楽祭」が開催され、2日間で10万人を動員。

TEXT=神舘和典

PHOTOGRAPH=大森直

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