幾多の試練を乗り越えながら、着実にスーパースターへの階段を上り続けるメジャーリーガー・大谷翔平。現在は、新型コロナウイルスの影響でシーズンの開幕が不透明となっているなか、アメリカで準備を整えている。今だからこそビジネスパーソンが見習うべき、大谷の実践的行動学とは? 日本ハム時代から"大谷番"として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。
今オフに年俸調停の権利をゲット
先日、大リーグ選手の今季年俸がAP通信の調査で明らかになった。メジャー3年目のエンゼルス・大谷翔平の年俸は70万ドル(約7,500万円)。すると筆者の元に記事を見た知人からすぐに質問が届いた。「なんで大谷選手は年俸があまり高くないの?」。疑問に思うのも無理はないだろう。投打でメジャートップクラスの才能を持ち、一昨年には新人王にも輝いているにも関わらずだからだ。
理由がある。大谷は2018年に23歳でエンゼルスに移籍。25歳未満の海外選手獲得規定により、契約金は上限の231万5,000ドル(約2億4,500万円)に制限され、年俸10万ドル(約1,060万円)以下のマイナー契約だった。その後、開幕に合わせてメジャー契約を結んだが、年俸は最低保障の54万5,000ドル(約5,700万円)。新人王獲得後の翌'19年も10万5,000ドル(約1,113万円)増の年俸65万ドル(約6,900万円)にとどまった。
日本ハム最終年の'17年は推定年俸2億7,000万円だったことを考えると、現状は"正当な評価"とは呼べないが、これが今のメジャーの契約システムで、大谷が選んだ道。25歳以降のポスティング移籍やFA移籍であれば総年俸は「100億円以上」だったと当時は話題になり、譲渡金2,000万ドル(約21億2,000万円)を日本ハムに払っても「格安」との見方が広がった。
大谷はメジャー3季目の今季で規定を満たし、オフに年俸調停の権利を手にし、長期契約を提示されるとみられている。一体、どれくらいの大型契約になるのだろうか。筆者の私見だが、大谷は契約期間や金額の大小にさほど興味はないと感じている。そもそも、散財するタイプでも、普段から高級品を身につけるタイプでもない。'16年オフの契約更改時には「WBCのボールでも買おうかな。まだ2ダース(24球)しか持っていない。ネットスロー、ティーバッティングできるくらい買いたい」と笑いながら話していたが、本気にも思えた。
昨季、自身3度目のア・リーグMVPに輝いたトラウトは大谷に「翔平と一緒に長くやっていきたい」と声を掛けているという。そのトラウトは'19年開幕直前に12年総額4億2,650万ドル(約452億900万円)で'30年までの契約延長に合意している。「大谷&トラウトの生涯エンゼルスコンビで悲願の世界一へ」。担当記者としては、そんな夢が現実になる瞬間を見てみたい。