幾多の試練を乗り越えながら、着実にスーパースターへの階段を上り続けているメジャーリーガー・大谷翔平。彼がアメリカ全土でも絶大なる人気を誇る理由は、その実力だけが要因ではない。ビジネスパーソンが見習うべき、大谷の実践的行動学とは? 日本ハム時代から"大谷番"として現場で取材するスポーツニッポン柳原直之記者が解き明かす。
リスク承知で、チャレンジを選択する
米アリゾナ州テンピ。2年ぶりの二刀流復活を目指すエンゼルス・大谷が新しい打撃フォームに取り組んでいる。厳密に言えば、大谷は打席ごとにフォームの微修正を繰り返すのだが、昨季までのノーステップ打法ではなく、右足を少し上げる新しいフォームは目に見えて分かる大きな変化だ。
進化のためなら、変化を恐れない。大谷は「同じ打ち方で3年、5年、10年と打ち続けることはない。変な話、1カ月とかもない」と言う。昨季も数打席、右足を少し上げる打ち方を試したことがあった。メジャー1年目から取り入れるノーステップ打法より反動がつく分、芯で捉えた時の破壊力が増す。
ただ、フォームの変化は時にタイミングのズレを引き起こす要因となり、打撃を大きく崩すリスクもある。だが、大谷の考えは違う。「本当にトップの選手でも、もっともっと良くなるために毎日、毎日練習している。(打撃フォームが)目に見えて変わっているのでそう言われることもあると思うけど、毎日、毎日そうやって工夫していければ」と言い切る。
2月25日(日本時間26日)に行われたエンゼルス―レッズのオープン戦。「4番・DH」で今オープン戦初出場を果たした大谷は1、3打席目は右足を上げる新フォーム、2打席目は昨季までのノーステップ気味の打ち方を試した。「さすがにシーズン中はそんなにコロコロは変えない」と前置きした上で、「どちらが良いのかではなくて、どっちもやっていく中でいろいろ気付くこともあるんじゃないかなと思う。(右)足を上げながら打ちにいって違う感覚の時もありますし、それはいろいろやっていい」と語った。大谷は自分自身の実体験こそが本当の価値、感覚だという考えを持つ。打撃に限らず、とにかく試すことで自らを磨き上げることに集中していると言える。
迷い、悩む姿は進化の過程だ。5月中旬の投手復帰が注目されるが、打撃の進化も大いに注目して見ていきたい。