ホテル海外旅行が制限されている今日本のよさを見直す旅への注目が高まりつつある。ひっそりとプライベート感に溢れ唯一無二の体験ができる滞在のスタイル。自分の時間を取り戻せる空間でゆったりと過ごす、そんなホテル&宿を紹介。
24時間こんこんと注がれる源泉かけ流しの湯を堪能
さらさらとした白砂が気持ちいい弓ヶ浜の海岸線と、その向こうに雄々しくそびえる山陰最高峰の大山(だいせん)。海と山が織り成す美しい風景は、日本人のみならず外国人にも愛され、皆生(かいけ)温泉は日本を代表する温泉地のひとつとして発展した。そんな「山陰の熱海」といわれる歓楽的な雰囲気も魅力だが、宿では街の喧騒から離れて、心静かに上質な時間を過ごしたい。
今年3月にオープンしたばかりの「やど紫苑亭」に一歩足を踏み入れると、そこは温泉街の賑わいとは無縁の別世界。エントランスロビーは、客室10室のみの宿とは思えぬほど広々とした設え。木の香りに囲まれ、心地いい。天井には和風な趣のシャンデリアが連なり、その奥には綺麗に手入れされた日本庭園が見える。
中庭をぐるりと囲んで回廊状に設えられた客室は2タイプ。8室ある100㎡の部屋には半露天風呂がつき、2室ある150㎡の「貴賓室」には内風呂と露天風呂の両方が備えられている。さらに大きな湯船を所望するなら、貸し切りの露天風呂がついた「スパラウンジ」も利用可能だ。これらの風呂はすべて、贅沢にも源泉かけ流し。24時間こんこんと注がれる湯に、湯量豊富な皆生温泉の底力が感じられる。
各客室に配された家具にも心が躍る。日本の伝統的な風情を漂わせながら、現代的なシンプルで研ぎ澄まされた表情を持つこれらの家具はマルニ木工、モリシゲ、天童木工など、日本が誇る〝世界のスタンダード〞によるものだ。
宿泊客のためにつくられたギャラリーも、コンパクトながら見応えは十分。白磁の人間国宝に認定されている前田昭博氏の作品、日本画の巨匠・横山大観の名画。今後、季節ごとに展示替えを行っていく予定だという。
すべてにおいて隙がない、やど紫苑亭。料理もまた、期待値をはるかに上回るバリエーションだ。
例えば、全国和牛能力共進会で肉質日本一に輝いた実績を持つ鳥取県産の黒毛和牛。ステーキのほか、すき焼きやローストビーフのサラダなど、多彩なアレンジで楽しむことができる。大山の契約農家が育てた地野菜や山陰の鮮魚も、味わいが濃く、口の中に後味のいい余韻を長く残す。
そして、鳥取県が誇る銘酒「千代むすび」の限定酒「一双(いっそう)」。華やかな香りと澄んだ口あたりに、この贅を極めた一夜が永遠に続いてほしいと願うばかりだ。
鳥取 米子
やど紫苑亭
住所:鳥取県米子市皆生温泉4-6-12
TEL:0859-21-7277
客室:10室
料金:¥84,700~(1室あたり、夕朝食つき、税サ別、入湯税別)
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