エグゼクティブが行きつくのは、一国一“島”の主!? 無人島に魅せられ、自らの夢を実現するために熱狂する男たちの三者三様の無人島ライフを徹底取材。無人島には、無限の可能性とロマンがある!
鹿児島・神造島の購入者のX氏「やりたいことが多すぎて毎日忙しい」
鹿児島空港からクルマで約20分。県本土中央部、錦江(きんこう)湾の湾奥部に位置する霧島市・隼人港が神造島(かみつくりしま)への入口だ。
隼人地区の沖合い約0.6㎞に位置する神造島は、3つの小島から構成される。そのうち、X氏が所有する辺田小島(へたこじま)と弁天島は本土に近い。船が停泊できる弁天島までは、小型船に乗って15分ほどで到着する。
穏やかで青々とした錦江湾。「霧島錦江湾国立公園」に指定されるこの一帯には、自然のままの雄大な景観が広がっており、島に降り立てば、静かな浜辺に響き渡る鳥の声と生命感溢れる緑の森が迎えてくれる。
都内で生活していたX氏が神造島で暮らし始めたのは、昨年の12月末。セカンドライフを自由に過ごすために無人島を購入し、ゴールデンレトリバーのKくんとの気ままな“ふたり暮らし”を満喫中だ。
「ここでは何をするのも自由。誰に何を言われることもありません。明るくなったら起きて、暗くなったら眠る。まったく贅沢な暮らしですよ(笑)」
人工物のほとんどない無人島。X氏が神造島に来てまず最初に取り組んだのは、桟橋造りだった。役所や漁業組合と交渉を重ね、地元の人たちの力も借りて、船が停泊できるように特注の浮桟橋を設けた。
それからようやく島の開発作業に移れるが、工事のための重機や道具は本土から運びこむしかない。X氏は中古のパワーショベルを購入し、島まで船で運搬。野山を芝刈り機で除草し、道を造った。作業に必要な機械は屋外の倉庫に収納。大きな岩場のような凹凸がある山道を走行するには、オフロード用のバギーが大活躍する。もちろんこれも本土から持ちこんだもの。
スケルトンのドームからは穏やかな錦江湾と雄大な桜島を望む絶景
生活拠点にしているスケルトンのドームも、同じように自ら搬入。フランスから輸入したポリカーボネート製のパーツは、ハンマーで叩いてもびくともしないほど頑丈だがとても重たく、1枚ずつ丁寧に運んで組み上げていった。南を望めば、穏やかな錦江湾と雄大な桜島。このドームの中からは、そんな贅沢な景観がまるで1枚の絵画のように広がっている。
また、発電機と貯水タンクを設置しているので、室内では常時電気と水の使用が可能。屋外にはテントやテーブルセットがあり、友人たちとBBQやキャンプファイアを楽しむこともあるという。住む場所をゼロから自分の好きなように開発できるのは、無人島を所有する大きな醍醐味だ。
昔から海が好きだったというX氏。東京に住んでいた頃は葉山に別荘を持ち、頻繁に通っていたが、その別荘も息子夫婦に譲った。
「若い頃は、もうめちゃくちゃに働いていました。ストレスからか、血尿が出たりすることもしょっちゅうで(笑)。セカンドライフでは何にも縛られず、この島で日々を送れたらいい」
秋が過ぎ、冬を迎えれば、この地で暮らし始めて1年になる。その頃には悠々自適な島生活を謳歌できるかと思いきや、どうやら簡単にはいかない様子のX氏。自身の目指す生活をカタチにするために、まだまだやるべきことがあるようだ。日々のタスクはリスト化してスマホで管理し、進捗と達成度を毎日必ずチェックしている。
「この島でやりたいことがたくさんあるんですよ。いずれはビーチや港、友人のためにヘリポートも造りたいと思っています。あと、潜水艦と飛行機も欲しくて(笑)。インスタで見て、既に目星をつけている機体もありますよ」
世界中から情報を収集する研究家かつ、水上スキーやドローン操作も嗜(たしな)むアクティブ志向。仕事にも遊びにも全力を尽くしてきたX氏は、自身の夢のために新たな人生をスタートしたばかりだ。
X氏
60代男性。某銀行でディーラーとして長年勤務。土地開発会社役員やコンサル会社代表などを経て、2020年に神造島を購入。
Kamitsukurishima
錦江湾に浮かぶ「辺田小島」「弁天島」「沖小島(おきこじま)」(北から順)と呼ばれる3つの島の総称。通称「隼人三島」。『続日本紀』に由緒を持つことから「神造島」と名付けられた。いずれも火山活動でできたとされ、霧島錦江湾国立公園内に含まれる。干潮時は辺田小島と弁天島の間を歩いて渡れる。
面積:45,489坪
アクセス:鹿児島空港から隼人港までクルマで約20分、そこから船で約15分