2022年3月、ミクシィはDAZN(ダゾーン)と共同で手がけるサービス「DAZN MOMENTS」の提供を開始した。「DAZN MOMENTS」とは、スポーツ選手のスーパープレイやメモリアルシーンなどをプレミアムな動画NFTコンテンツとして提供する、スポーツ特化型NFTマーケットプレイス。スポーツを通して感じた興奮の記憶を自らの資産として所有でき、将来的には他のユーザーとも共有できる仕組みを構築していくという。この新たな取り組みにチャレンジする、ミクシィ代表取締役社長の木村弘毅氏が描くビジョンとは?連載「キーパーソンを直撃! 暗号資産は世界をどう変えるか?」とは……
ミクシィ社長が描く、スポーツ×NFTが生む新たなコミュニケーション
ミクシィとはいったい、何を目指している会社なのか。それは、世の中のコミュニケーションをより豊かにしていくことであり、それを実現するために事業を展開しています。
弊社のサービスとして特に知られているのは、SNSのmixiと対面コミュニケーションゲームアプリの「モンスト(モンスターストライク)」でしょう。振り返ってみれば、mixiが流行った2000年代というのは、PCやガラケーを持つ人が増え、インターネットが人々の間に急速に受け入れられていった時期。そして友達とのコミュニケーションがインターネット上でも行われるようになった。そんなコミュニケーションのあり方を示したのがmixiでした。また、モンストが成長していった背景には、スマホの普及がありました。
新しいデバイスが出てくると、そのデバイスにオプティマイズしたサービスが生まれる。ミクシィはその時代の流れを読み、環境に適したコミュニケーションを創出するためのサービスを提供してきました。しかし当面、スマホに代わるデバイスは出てきそうにない。そんななかで私たちが注目したのが、NFTだったんです。
「DAZN MOMENTS」で提供するスポーツコンテンツは、すべて動画。NFTなので唯一性も担保されているし、静止画のコンテンツと比べてもかなりバリューアップしている。今後はユーザー同士でコンテンツを売買できる機能なども順次追加していくので、コレクションを世界中の人に公開して自慢し合ったり、交換したりできるようになります。そういったコミュニケーションを生むという意味でも、スポーツ×NFTには大きな可能性があると考えています。
また、スポーツ産業が潤っていくような装置をつくりたいという思いも、「DAZN MOMENTS」を始めた理由のひとつ。NFTコンテンツによってスポーツの持つ価値・魅力をきちんとマネタイズしていけば、ビジネスとして大きな収益になるし、スポーツ界への還元にもなるはずです。
このサービスは将来的にリアルな試合とも連携したい。まだ先のことにはなると思いますが、例えばリアルタイムでNFTを発行し、ユーザーがそれを購入できるようになれば、さっき目の前で見たスーパープレイの興奮をNFTで持ち帰ることもできるようになります。いわば、興奮のお土産ですね。そういう体験ができれば「また観に行こう!」というモチベーションにつながると考えています。
新しいカルチャーは若者の熱狂から生まれる
私自身、コロナ禍によって対面でのコミュニケーションの価値というものを、改めて強く実感しました。スポーツ観戦はもちろん、他にも、美味しいご飯を食べながらみんなでワイワイと盛り上がる瞬間って、本当に人間にとって重要だったんだなって。だからこそ、ミクシィはテクノロジーを通じてリアルな体験にもつながるようなコミュニケーションを創出していきたいと思っています。
日本国内におけるNFTの今後の発展については、よりポップで若い人たちの間でしか受容されないようなカルチャー・ムーブメントが起こるんじゃないでしょうか。僕の世代でいえば、エア マックス95をはじめとするスニーカーブームやGショックブームがそうでした。大きな社会現象になりましたけど、それと同じようなことが、例えばアートとかゲームの世界で起こるかもしれません。そしてたぶん、他の世代の方はその価値を理解できない(笑)。でも、それでいいんです。新しいカルチャーは、若い人たちの熱狂から生まれるものですから。
ミクシィ代表取締役社長 上級執行役員
木村弘毅
1975年東京都生まれ。携帯コンテンツ会社などを経て、2008年にミクシィに入社。スマホゲームアプリ、モンスターストライクを大ヒットに導く。’18年より現職。
連載「キーパーソンを直撃! 暗号資産は世界をどう変えるか?」とは……
暗号資産やブロックチェーンが持つ世界を変える大きな可能性について、各界のキーパーソンに取材していく連載。今こそ知っておくべき、暗号資産の知識とビジネスへの活用例とは?