「会計」と聞くと、数字が羅列された無味乾燥な世界を思い浮かべる人も多いのではないだろうか? そんな地味で堅苦しいイメージを覆す良書が登場した。
「会計と経営の歴史」の裏には、逆境に立ち向かう者たちのドラマがあった!
本書は会計と経営の歴史を、「簿記」「株式会社」「証券取引所」「利益計算」「情報公開」という5つのキーワードに整理。その発展の裏にあった人間ドラマを中心に、熱く解説してくれる。ルネサンスの時代、商人たちの活動範囲拡大に伴って発展したのが簿記の技術であり、また、大航海時代の最も効率のいい資金調達法として生みだされたのが株式会社だったなど、会計や経営は当時を生きる人たちの思想や活動と密接に絡み合って発展してきた。その起源の一端を知ることは、現代を生きる私たちのビジネスにも新しい視点をもたらしてくれるだろう。さらに、700年前のイタリアから始まり、スペインやイギリス、アメリカなど、その時々の経済大国が歩んできた歴史をめぐっていくので、世界史の知識を振り返るのにも役に立つ。
一般的な会計の本と異なり数字はあまり出てこず、脱線や冗談も織り交ぜながら軽やかに話が進んでいくため、会計知識に苦手意識を持つ人にもお薦めしたい1冊だ。
『会計と経営の七〇〇年史─五つの発明による興奮と狂乱』
田中靖浩 著 ちくま新書 ¥924
Text=三宅香帆
1994年高知県生まれ。書評家、作家。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。著書に『文芸オタクの私が教える バズる文章教室』『女の子の謎を解く』等がある。