35歳・英語力ゼロなのに、会社を辞めていきなり渡英した元編集者。「その英語力でよく来たね(笑)」と笑われて2年後、英語力未だ0.5であえなく帰国。だけど日本にいたって、きっともっと英語は覚えられる! 下手でもいいじゃない、やろうと決めたんだもの。英語力ゼロレッスン「人のEnglishを笑うな」第107回!
「連絡して」を今っぽく言ってみよう!
ヨーロッパではコロナウィルスの規制が徐々に緩和され、ロンドンに住んでいたときから入ってるグループチャットもにわかに活気が戻ってきました。自分の国に帰っていた友人たちも少しずつロンドンに戻っており、「戻ってきたなら、会おう」というメッセージが飛び交っています。
そんなメッセージを横目で見ていたら、こんな文字が目に飛び込んできました。
Ping me when you finish your quarantine.
「自粛期間が終わったら、ピングして。」とはなんだろう、と思ったのですが、どうやらこのメッセージの数日後、彼らは久しぶりに店を開けたパブで、飲み交わしたそうです。
Ping me=連絡して
ということのようでした。もともとIT用語から生まれた言葉のようで、シグナルを送ったり、短い間通信するようなことを言い表していたとのこと。それが「連絡する」という意味になったようです。スラングを載せる「アーバンディクショナリー」には、このような例文がありました。
Can we go to the movie tomorrow?
I don't know. Ping me around eight and we'll see how things are going.
「今晩映画に行かない?」「うーん、どうだろう。8時頃連絡してくれないかな。それで状況を確認しよう」
スペインからロンドンに戻った友人が送ってくれました。ロックダウンが終わりバーも再開しているようです。「金曜日の気分をとりもどそう!――毎日ね」という通りここからまた、友人は飲んだくれのロンドンライフが始まるようです。
「君はセカンドジャブをもうしたか?」
ってなんだろう?
Ping meってなんだか現代っぽい言葉だなと思ったのですが、「今っぽい」といえば、最近よく聞かれるのがこのフレーズ。
Have you got a second jab?
「セカンドジャブ?」とものすごいカタカナ英語で聞き返してしまいました。ジャブっていったらボクシングのアレかな? しかしなぜ私がジャブを受けなければ? しかもセカンドって? と「?」が止まりませんでした。
jab=注射
を言うスラングだそうです。
まぁコカインとかでもこういうふうにいったりするそうですが、今の世の中で「2回目の注射」といったらもうワクチンでしょう。
スラングではありますが、BBCでもよく使われている表現です。もともとはスコットランド英語のjobからきていて、「鳥が木の実などをつつく」動作を説明する、オノマトペのように使われていた言葉だそうです。確かに、注射されるのは「くちばしでつつかれる」感じに似ていますね。
これは実はイギリス英語のみで言うそうです。ただ最近はアメリカでも言われるようになり、アメリカの雑誌「ウォールストリートジャーナル」では「注射のことをjabなんて、アメリカ人なら言うな!」と言っている人と「shotって私たちは言うけど、なんかjabの方が痛くなさそうでいい」と言っている人で分かれていると紹介していました。確かに「打つ(shot)」より「つつく(jab)」の方が痛くなさそうです。
これからも「そういえば日本人はワクチン終わってるんだよね?」と聞かれる局面が増えてくると思いますので、覚えておいて損はないフレーズです。
蛇足ですが、オリンピック期間中、さまざまな外国の方が、日本語を覚えようとされているSNSや記事をみかけます。先日は「ググレカス」を説明しているものを見つけてしまいました。ここにご紹介させてください。
"ググレカス" (gugurekasu) essentially means "go Google it yourself, scum." It might not be the best response when someone asks for directions to the nearest restaurant.
(ググレカスは、基本的に「自分でググれ、くずが」という意味です。誰かが「一番近いレストランは?」と聞いてきてこう答えるのは、よくないかもしれません)
scumが「くず」という意味なことに、この説明で気がつきました。
この記者はなぜ、この言葉に出会ったのかはわかりませんが、お互いに外国語のスラングを学んでいる姿勢が一緒で、親近感を覚えました。
Illustration=Norio