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2021.07.03

今おさえるべき新常識! アート界に革命を起こしているNFTとは?

暗号資産やブロックチェーンが持つ世界を変える大きな可能性について、さまざまなキーパーソンを取材していく新連載。今こそ知っておくべき、暗号資産の知識とビジネスへの活用例とは? 連載「キーパーソンを直撃! 暗号資産は世界をどう変えるか?」vol.3

暗号資産は世界をどう変えるか?

NFT化でデータに唯一性を与えることができる

ブロックチェーンを活用した新しいデジタル資産「NFT」。資産価値として認められにくかったデジタルデータに価値づけし、時には数億円もの値段で売買されるケースも出てきていることもあり、その注目度は急上昇している。NFTの普及はアートの世界にどのようなインパクトを与え、変化させていくのだろうか。アートの流通や評価を保証するためのブロックチェーンインフラを構築するスタートバーンの施井(しい)泰平氏に話を聞いた。

Twitter社の創業者でCEOジャック・ドーシー氏の初ツイートが、約3億円で落札。今年3月にはクリスティーズのオークションで、デジタルアーティスト・ビープル氏のアート作品(13年以上にわたって1日1枚ずつ撮影された5000枚の画像をコラージュしたもの)に75億円もの値がつくなど、今NFTがかなり大きな注目が集めています。NFTとはNon-Fungible Tokenの頭文字をとったもので、ビットコインなどとは違い、それぞれの固有の価値を持つ代替不可能なトークンのことを指します。デジタルデータはコピーや流用がされやすいため価値を担保するのが難しかったのですが、NFT化すればそのデータに唯一性を与えることができるんです。

NFTによって起きているアート界の地殻変動

一般的に、アート作品がオークションに出品されるのは、ギャラリーを介して作家からコレクターへ初めて販売された後の2次流通時です。なので、オークションに出される作品にはエスティメート(推定落札価格)が提示され、「大体このくらいで落札されるだろう」と予想ができる。しかし、最近のNFTアートはギャラリーを介さずいきなりオークションで売買されるケースが多いです。前述のビープル氏のアートは、エスティメート不明だったにもかかわらず75億円の価値がつき、世界に衝撃を与えました。今はまさにアート流通や価値づけのカタチが大きく変わる転換期を迎えていて、NFTによってアートの世界は有史以来の革命が起きていると言っても過言ではありません。

他にも印象的だったのは、エミリー・ラタコウスキーさんの作品です。事の発端は2015年。現代アーティストのリチャード・プリンス氏が他人のインスタ画像を無断でキャンバスに転写し、それをオークションに出した作品が約1000万円という高額で落札されて物議を醸しました。そして今年、画像を使われた被害者であるラタコウスキーさんが、そのプリンス氏の作品の前でポーズを取った画像を作りNFT化してクリスティーズに出品したところ、約1900万円で落札されたんです。プリンス氏自体は著名なアーティストなんですけど、ラタコウスキーさんは所属ギャラリーがあるわけでもなく、これまでにアートを専門的に勉強してきたわけでもありません。そんな人の作品が世界トップクラスのオークションハウスで高額落札されるなんてことは、今までのアート界の常識では考えられなかったことです。

ラグジュアリーブランドもNFTへ本格的に参入

また、グッチがNFTに基づいたデジタルアート作品を制作するなど、最近はいくつかのラグジュアリーブランドがNFT市場への参入に向けて準備を始めているといいます。NFTの技術自体は今後どんどんコモディティ化しますが、重要なのはそこにどう価値づけをしていくか。ラグジュアリーブランドは付加価値で勝負している世界なので、NFTはとても相性がいいですよね。

現在、NFTの市場規模は世界的にも大きな広がりを見せていて、有名なマーケットプレイスの取引だけでも年間で数百億円規模になっているのではないかと思います。それにNFTアートならば物理的な距離を問わず、世界中のコレクターたちに作品を販売することが可能で、2次流通時にもアーティストにしっかりと利益を還元できるなど、アーティストにとってもメリットが多い点も注目すべきですね。NFTによって生まれた新しい仕組みやカルチャーは、間違いなく既存のアートの産業にも影響を与えていきます。その相互作用がアートの世界をどのように変えていくのか、私自身とても楽しみです。

Illustration=細山田 曜

TEXT=武者良太

COOPERATION=あたらしい経済

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