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2020.10.20

「キャッシュフローを制するものはお金を制す」ABCash児玉隆洋

新型コロナウイルスにより、多くの人がお金について真剣に考えたはずだ。先行きが見えないなかで、今後どうお金と付き合い、増やしていけばいいのか。この連載では、お金のトレーニングスタジオ「ABCash」を運営する児玉隆洋氏が、コロナ後のお金と資産運用についてレクチャー。お金とは何か、投資とは何かを考える。アフターコロナのお金論10回。

アフターコロナのお金論

貯蓄こそ資産形成の一歩

10月17日は「貯蓄の日」です。戦後、1952年に日本銀行により制定された記念日ですが、毎年10月17日に伊勢神宮で執り行われる五穀豊穣の感謝祭である神嘗祭(かんなめさい)に由来するとも言われています。

「勤労の収穫物であるお金を大切にして、貯蓄に対する関心を高め、貯蓄増進を図る」という意図のもとに制定された記念日ですが、当初は国の財源の確保のためでもありました。

今回のコロナ渦により、日本全体の貯蓄率は向上しています。国より発表されているデータによると、貯蓄率は2019年10月~12月期は6.6%でしたが、2020年1月~3月期は8.1%、4~6月期は8.9%に達しており、これは実に約20年ぶりの高水準です。コロナによる将来不安の拡大が大きいと思われます。

「何人も貯金の門をくぐらずに、巨富には至り得ない」

これは、日本の「公園の父」とも言われる本多静六の言葉です。本多静六は月給4分の1天引き貯金を実行し、その元手で投資をして巨万の富を築いています。知識なくいきなり投資で増やそうという人もいますが、貯蓄こそ資産形成の大いなる一歩目なのです。

当社の金融教育プログラムでも、収入の1~2割を貯蓄できる習慣づくりを教えていますが、いくら収入があり、それをいくら貯蓄し、いくら消費し、いくら投資するか。個人でもそういうお金の流れを設計、把握する必要があります。それは、企業経営でお金の流れをキャッシュフローとして把握するのと同じことです。

それではお金のトレーニング。

企業のキャッシュフローと同じように、個人のキャッシュフローを見える化した仕組みのことをなんというでしょうか?

答えは、家計簿です。特に年始になると手書きの家計簿が書店の店頭にずらっと並びますが、コロナ渦でさらにキャッシュレス化が進んだことにより、スマートフォンで管理できる家計簿アプリを使い始めた方も多くいるのではないでしょうか。紙かアプリかはツールの選択の問題ですが、個人のキャッシュフローという概念はすでに一般化されていると言えます。

続けて、もう一つお金のトレーニング。

この家計簿という仕組み、発祥はどこの国でしょうか?

答えは、実は日本なのです。約1900年に日本人女性が考案したと言われています。企業のキャッシュフローの概念を個人の家計にもとりいれたことは、画期的なことだったのだと思います。

企業経営もそうですが、素晴らしい新規サービスアイデアが突然閃いたり、思いもよらぬタイミングで素晴らしい投資案件にめぐり合うことも少なくありません。そういうときに、経営の意思決定をする大事な基礎要素の一つとして、キャッシュフローがあるのです。

どれだけ素晴らしいサービスアイデアであっても、それに企業として挑戦することで、翌月すぐにキャッシュが底をついてしまうようでは元も子もありません。

それと同じことが家計にも言えるのです。自分の人生を自分で決断する。そういうこときに自分のお金の流れを把握していること、つまり自分のキャッシュフローを把握していることは基礎中の基礎となるのです。

投資で増やす、と考える前にまずは元手をつくるために着実に貯蓄すること。さらにその前に、自分のお金の流れを把握するために、自分のキャッシュフローを把握することが大事になります。

キャッシュフローを制するものはお金を制す。

ラクして儲かりそうな投資案件を探すことではなく、お金の基礎を疎かにしないことこそが、お金について自分で決断できるようになるための確かな道となるのです。


Takahiro Kodama

1983年宮崎県生まれ。大学卒業後、サイバーエージェントに入社。Amebaブログ事業部長、AbemaTV広告開発局長を歴任。2018年、海外に比べて遅れている日本の金融教育の必要性を強く感じ、株式会社ABCashTechnologiesを設立。代表取締役社長に就任。2019年、すごいベンチャー100受賞、スタートアップピッチファイナル金賞。趣味はサーフィン。

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