世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム155回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
効率的な体の回転方法
ゴルフスイング中の体の動きには、さまざまな表現の仕方がある。伝える側がそれぞれの感覚で語る場合、本来の体の機能とは違った表現になっていることがある。
スイング中の体の回転において、「体をねじる」という表現は少し誤解を生みやすい。バックスイングで上半身と下半身の捻転差をつくるために、下半身をがっちり固めて上半身をねじり上げる人がいるが、このような動作では胴体部分にストレスがかかり苦しい。この動きによって頑張っている感じが出て、飛距離が出そうだと感じるかもしれないが、効率的な動きとは言えない。
実際には苦しい思いをしてギリギリと体をねじり上げても、回転スピードは上がらないし、飛距離も出ない。むしろ、腰にストレスをかけて痛めてしまう可能性がある。ゴルフスイング研究の第一人者、ヤン・フー・クォン教授は、「人間はゴムではないので、ねじった体を解放しても速く体が回転するわけではない」と語っている。
スイング中に上半身と下半身に捻転差を作る必要はあるが、体を傷めるほど苦しく感じる必要はない。むしろ体が苦しくなるのは、スイング動作が適切ではないからだと考えたほうがいいだろう。
胴体は一体化して回す
バックスイングで無理に体をねじろうとしている人は、下半身を固定して上半身だけを回転させようとしていることが多い。しかし、腰椎というのは、そもそも回転するような構造にはなっておらず、せいぜい5度くらいしか回らない。胸椎は約35度回旋するが、胸を回転するだけでは十分な体の回転量は確保できない。
体に負担をかけることなく、効率的に体を回転させるためには下半身から上半身の順で回転動作を行うことが大事になる。バックスイングの場合、右足のかかとと左足のつまさきに体重を移動させることで腰を回転させ、それにつられるように胸や肩が回転していく。股関節の辺りを中心にして、上半身と下半身が一緒に回転していくイメージを持つといいだろう。
タイガー・ウッズの前コーチ、クリス・コモが「バックスイングでは腰にストレスをかけないために、体をねじらずに胸、おへそ、ヒップを全部ターンさせる」という表現をしていたが、胴体は一つの面として意識し、すべて回す意識でいい。タイガーのスイングは上半身がねじられているように見えるが、実際はコモの指導によって腰にストレスをかけないように胴体部分をねじらないようにしている。この動きを取り入れることでタイガーは腰の怪我から復帰し、マスターズでの復活優勝を遂げたのだ。
このように足から腰、胸、肩と順番に体が動いていくことを「運動連鎖」と言うが、体の動きが連鎖していくことで、下半身と上半身の動きに自然とそれぞれの関節の運動量に差が生まれる。この回旋の差こそが「上半身と下半身の捻転差」であり、体がねじれているように見える要因だ。つまり、スイングとは体を無理にねじり上げるものではなく、効率的な体の回転によって自然と体にとって無理のない捻転差ができるということなのだ。
スイングを下半身から始動することができれば、無理に体をねじって腰を傷めることはなくなるし、スイングスピードも上がって力強い球を打つことができる。是非、体への負担の少ないスイングを身に付けて、スコアアップを目指してほしい。