世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム145回目。多くのアマチュアゴルファーを指導する吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
スイング前に足踏みをする足ワッグル
緊張した場面で体が動かなくなるということは、プロ、アマチュア問わず、どんなゴルファーでもあるものだ。最終18番ホールで単独トップに立っていた選手が、突然スコアを落として優勝を逃すといったことは、プロの世界でもたびたび起こる。どんな状況でも落ち着いて普段通りのプレーができるということは、一流プロの条件だといえるだろう。
プロゴルファーはたいてい、普段通りのスイングをするためのルーティーンを持っているが、その打つ前の手順の中でもよく知られているのはワッグルだ。ワッグルとは英語で「揺れ動く」という意味で、スイングの前にクラブヘッドを左右に動かすことを言う。史上最高のボールストライカーとも言われるベン・ホーガンはヘッドを大きく動かすワッグルが特徴的だった。
朝イチのティーショットで緊張からアドレスで固まってしまい、スイングが行いづらく感じた経験はないだろうか。アドレスで固まってしまうことで、上半身に力が入ったり、手先で急激にクラブを振り上げるなど、スムーズにスイングを始めることができなくなる。このような「静から動」では力みが出てしまうため、ワッグルを行い「動から動」とすることで、アドレスで固まらずスムーズに始動を行うことができるようになる。
こうしたクラブヘッドを動かすワッグルとは別に「足ワッグル」と呼ばれる動きもある。アドレスの際に両足を交互に動かすもので、その場で足踏みしているように見える動作だ。PGAツアー選手のパトリック・キャントレーがこの足ワッグルを行っているが、アドレスをしてからボールを打つまでに実に30回ほどパタパタと足踏みをするような動きを繰り返す。
ゴルフを知らない人から見れば、緊張をほぐすためにやみくもに足を動かしているように見えるかもしれないが、決してそうではない。左右の足の裏を一定のリズムで動かすことで、下半身に意識が向き、上半身の力を抜くことができる。更に下半身を動かすことで、スイングを始動するタイミングがつかみやすくなり、スイング中も下半身が上半身の動きに先行する「運動連鎖」を行いやすくなるのだ。
踏み込みのリズムに合わせて体重移動
アマチュアゴルファーの中には、キャントレーの足ワッグルを見て「あんなに足を動かして、下半身がブレてしまうのではないか」と心配になる人もいるだろう。そのような人は下半身をガチガチに固めて、スイングの土台や軸を動かさないようにしたほうがいいと思っているかもしれない。
しかし、下半身をガチガチに固めてしまうと、上半身を不必要にねじったり、腕に頼った手打ちスイングになりやすい。下半身から始まる運動連鎖も行うことができなくなるので、全身に不必要な力が入ってしまい、滑らかなスイング動作を行うことが難しくなる。
足ワッグルによって下半身を動かす準備をすることで、タイミングよく足からスイングを始動できるだけではなく、スイング中のリズムや運動連鎖が良くなり、脱力したスイングを行うことができる。キャントレーはこの足の動きによって脱力したスイングを行っているため、緊張した場面でも力を発揮することができるのだ。キャントレーの足ワッグルのリズムは、始動の際の右足の踏み込みと、切り返しの左足の踏み込みのタイミングとほぼ一緒だ。足ワッグルを行うことで、スイング中の両足それぞれの踏み込みのリズムとタイミングを事前に確認している。
足ワッグルを行うポイントは、つま先とかかとの前後方向に体重を移動させながら、左右の足を動かすことだ。右側のかかとが地面についたときに、左足はかかとを浮かせてつま先に体重を移動させ、左側のかかとが着地したときには右足かかとを浮かせ、つま先に体重を移動させる。足裏の体重移動を意識しながら、その場で足踏みするようなイメージで行ってみよう。
決して体を大きく揺すったり、足踏みをしようとして膝や腰まで動かす必要はない。リズムを刻みながら、足裏の体重移動を意識してほしい。慣れないうちは「1、2、1、2」と一定のリズムになるように小さく声に出してもいいだろう。実際に、このリズムを口ずさみながら足を動かしてハーフスイングの練習を行ってもいい。この練習を行うことで、ワッグルとスイングのリズムを同じにすることができ、よりスムーズに下半身主体のスイングができるようになる。
足ワッグルができるようになったら、地面反力フォワードプレスも組み合わせ、下半身でスイングする意識を高めてみてもいいだろう。
足ワッグルをすれば、全身の力を抜くことができ、スイングリズムも良くなる。緊張で思うようなプレーができない人や、大事な場面でミスをしてしまう人は、スイングの前に足ワッグルを取り入れてみてほしい。
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