世界No.1のゴルフコーチ、デビッド・レッドベターの愛弟子・吉田洋一郎による、最新ゴルフレッスンコラム30回目。顧客の多くが国内外のエグゼクティブ、有名企業の経営者という吉田洋一郎コーチが、スコアも所作も洗練させるための技術と知識を伝授する。
痛みの正体は力みにあり
「ゴルフの翌日に身体がつらくて大変なんだよ」
「サプリを飲むと筋肉痛が出にくいよ」
ラウンド終わりの浴場や更衣室で、こんな話をよく耳にする。なかにはラウンド後に日常生活がままならないほど肘や腰に深刻な痛みが出るという話も聞いたことがある。多くのアマチュアはラウンド翌日の身体の不調が日ごろの運動不足や、加齢による筋力の低下のせいだと思っている。しかしそれは誤りだ。
問題はスイングにある。入らなくてもよい力が入っていたり、不適切な身体の使い方によって筋肉や関節に必要以上の負荷がかかり、それが翌日の筋肉痛や疲れにつながっているのだ。このような問題の原因は「力み」と「スイングメカニズム」によるものが多い。
切り返しとインパクト直前が力みを生みやすい
力みを生むのは速く振りたい、ボールに当てたいというプレーヤーの気持ちだ。トップからの切り返しでクラブを速く振り下ろそうとすると、クラブを持っている腕や手に力が入る。また、インパクト直前にちゃんとボールに当てたいと思えば、クラブを操作しようとしてこちらも腕や手に力が入る。これが力みだ。
クラブは一度動き出せば慣性の法則で、ある程度動く方向が決まる。切り返しやインパクト直前での力みは、その力の向きや大きさに抗おうとする動きだ。クラブが生み出す力はとても大きいため、手や腕によってクラブの動きを邪魔すると末端部分だけではなく全身に力が入ってしまうのだ。クラブの動きに任せていれば本来使わなくてもよい筋力を使ってしまうので、それが筋肉痛の要因などにもつながっている。
スイングは形よりも力の向き
もう1つの身体の不調やケガにつながる要因はスイングそのものにある場合が多い。特にポジションごとに形の確認をしているゴルファーは要注意だ。スイングをチェックする際、アドレス、トップ、インパクトなど各ポジションを切り取ってしまいがちだ。しかし、各ポジションで形を良くすることにはあまり意味がない。例えばトップでは上半身と下半身の捻転差が作られている必要があるが、捻転差を作ろうと思って上半身を大きく捻じろうとすると身体に無理なストレスがかかり腰や背中のケガにつながる。捻転差は下半身を止めて上半身をねじり上げるのではなく、テークバックで振り上げられたクラブの勢いと、切り返しの下半身リードの結果が捻転差を生むのだ。スイングの形をマネするのではなく、スイング中の力の向きや動きの順番などを適切にすることが重要なのだ。
そもそもゴルフスイングはプロのように専門のトレーニングをしてないからと言って、1ラウンドで身体が痛くなったり、日常生活にまで影響が及ぶようなハードな動きではない。もし、1ラウンドで身体に大きな負担がかかり疲れ果ててしまうような運動なら、練習ラウンドを含めて毎週5ラウンド以上を行うツアープロが一年間ツアーを転戦することは難しいだろう。プロゴルファーが野球のピッチャーのように登板の間に体を休める期間を設ける必要がないのは、クラブが作り出す遠心力や地面反力などの自分以外の力を活かし体への負荷が少ないスイングをしているからだ。
だから帰りの運転で疲れがひどかったり、翌日に身体の不調に悩まされるようなら、医者ではなくコーチに力みの原因をチェックしてもらうことをおすすめする。そのまま放置しておけば、プレーができなくなるようなケガにつながってしまうかもしれない。